バックナンバー

2023年 | Volume 20

  • 1月号

    多くのがん種で変異を起こしているKRASというタンパク質は「アンドラッガブル」、つまり薬剤の標的にすることができないと考えられてきた。タンパク質表面に凸凹が少ないことや、多様な変異が頻繁に発生することなどが原因だ。だが、ある化学生物学者の2013年の報告をきっかけに、KRASを標的とする新薬の開発が進み始めた。道のりは長いが、患者の命を救えるかもしれないという希望が見えてきた。

2022年 | Volume 19

  • 12月号

    研究資金配分機関や出版社は、性差が果たす役割を考慮して研究をデザインすることを研究者に求めるようになった。再現性と厳密性を向上させるだけでなく、1つの性を調べていただけでは発見できない解決策や疑問が見つかるという大きな利点があるものの、複数の性を正しいやり方で研究に組み込むのは簡単ではない。

  • 11月号

    新型コロナウイルス感染症は多くの場合、時間とともに症状が軽減していくが、疲労感や頭痛、動悸、筋肉痛などのつらい症状が続く人がいることが分かってきた。COVID-19罹患後症状、いわゆる後遺症だ。原因はまだ明らかではないが、微小な血栓が関わっている可能性が指摘され始めている。同時に、効果が証明されていない治療法に患者が飛びつくことが懸念されている。

  • 10月号

    患者自身の免疫系を解き放つがん免疫療法。強力な治療法だが、がんは抵抗性を獲得する。この抵抗性の打破に役立つと期待を集めているのが腸内細菌だ。免疫療法が奏効した人や健康な人の腸内マイクロバイオーム、つまり糞便を患者に移植したところ、一部の人では治療の効果が強化されたのだ。現在、がんとマイクロバイオームとの関係に照準を定めた複数の臨床試験で検証が進められている。

  • 9月号

    科学者たちは長い間、脳は免疫細胞集団から完全に遮断されていると考えてきた。しかし近年、脳の境界部には免疫細胞が豊富に存在していて、脳と免疫系は密接であることが分かってきた。ミクログリアをはじめ、さまざまな免疫細胞たちが脳を監視し、保護していることは、新たな常識となりつつある。

  • 8月号

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行は、史上最大の教育崩壊を引き起こし、世界の教育格差を露わにした。子どもたちが学習の遅れを取り戻すにはどうしたらいいのか? 過去20~30年にわたり世界中で蓄積されてきたエビデンスから、実はすでに、最も効果的な戦略が明らかになっている。

  • 7月号

    タンパク質のアミノ酸配列からタンパク質の立体構造を予測する、ディープマインド社の「AlphaFold(アルファフォールド)」。深層学習の手法でトレーニングしたニューラルネットワーク(脳回路を模した機構)を用いた、人工知能(AI)プログラムである。2021年7月に公開されてから1年足らずで、早くも生物学に大変革をもたらしている。

  • 6月号

    認知症全体の約3分の2を占めるアルツハイマー型認知症。その社会的な影響の大きさから治療薬の開発が強力に推し進められているが、明確な効果を示すものは得られていない。臨床試験が行われている薬の多くは脳のアミロイド斑を標的としているのだが、試験参加者の病が進行し過ぎていたために効果が得られなかった可能性があるという。そこで現在、発症前の人に薬を投与する試験が進められている。

  • 5月号

    頭はどのように生じたのか? ヒトと同じ哺乳類であるマウスで、頭部に分化する胚の細胞が、心臓に分化する細胞と同じ集団と分かったのは2010年のことだ。一方、脊椎動物に最も近い無脊椎動物は、手足もなければ頭もないホヤと明らかになり、生物学界に衝撃がもたらされたのは2006年。現在、ホヤをはじめとする尾索動物から脊椎動物のボディープランの進化に関する手掛かりが得られ始めている。

  • 4月号

    尿は、栄養素に富んだ「価値ある資源」だ。下水から尿を分離することで、難しい環境問題のいくつかが緩和され、持続可能な形で肥料を供給することも可能になる。そうした取り組みは何十年も前から行われてきたが、普及に至っていない。「排泄」は生活の基本的な側面であり、そのやり方を根本から変える必要があるからだ。この障壁を越えるにはまず、トイレや尿そのものに対する見方や考え方を変える必要がある。

  • 3月号

    栄養が十分に取れて地球環境の脅威にならないこと。私たちが目指さねばならない食生活だ。2019年、栄養学者や生態学者らが「EAT–Lancet食」を発表した。それは誰もが実践できる内容ではなかったが、持続可能な食が注目されるようになった。そして現在、地域ごとに「最適な食物」を見定めるための研究が、世界各国で行われている。

  • 2月号

    その構想から30余年、ハッブル宇宙望遠鏡の後継「ウェッブ」が2021年12月25日に打ち上げられた。2022年1月9日には主鏡の展開が完了し、1月25日には地球から150万km離れた観測場所に到達した。ウェッブが狙うのは、ハッブルが捉えた深宇宙の更なる深淵、つまり、宇宙が誕生したとされる138億年前だ。

  • 1月号

    「宇宙から地球を観察して、人間の会話を盗み聞きするようなもの」。そうたとえられる脳地図作りに、世界中の科学者たちが力を合わせて取り組んでいる。脳の細胞同士のつながりを把握することで脳が働く仕組みを理解し、医療につなげることが目的だ。各国の予算を合わせると約9000億円にもなるが、その取り組みは、脳神経科学に既に新たな視野をもたらしている。

2021年 | Volume 18

  • 12月号

    今世紀末、地球にどれだけの人間がいるか? 複数の研究グループが、さまざまな方法で推定を行っている。国連の研究チームの予想は110億人。一方、88億人とした論文が議論を呼んでいて、LANCETに掲載されたこの論文に、人口統計学者170人が署名付きで疑問を呈した。この数字が、なぜそれほど重要なのだろう。それは、何十年も先の「将来の」人口は、各国の「現在の」政策を左右するからだ。

  • 11月号

    新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミック下において、大きく飛躍したmRNAワクチン。この研究は、実は何十年も前から行われていて、数百人もの科学者によって一歩一歩積み重ねられてきた。というのも、RNAは著しく不安定で、ワクチンとして利用することは不可能だとされてきたからだ。

  • 10月号

    感染拡大に歯止めがかからない新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)。このウイルスは、なぜ、これほどの感染力を持つのか。その理由が明らかになってきた。このウイルスは、感染細胞から出ていく際に既に、インフルエンザウイルスなどの他のエンベロープウイルスよりも一歩進んだ状態にあるのだ。

  • 9月号

    数を表すことのできる動物はヒトだけだと考えられている。では、ヒトはそれをいつから始めたのか? 記数法の発展について、現在、考古学や認知心理学などに基づきさまざまな仮説が提案されている。もしかすると、ネアンデルタール人もそれを編み出していたかもしれない。

  • 8月号

    海洋動物や私たちの体内にも見つかる微小なプラスチック片。生態系や人体にどんな影響を及ぼすのか、実は、まだ分かっていない。プラスチックは毎年約4億t生産されるが、分解されるまでには何十年もかかる。蓄積する一方の「時限爆弾」は危険なのか、リスクはそれほどないのか、研究者たちは大急ぎで調査を行っている。

  • 7月号

    発生のペースが、マウスとヒトで異なるのはなぜか。そのカギを握ると見られるのが、分節時計と呼ばれる、細胞内のタイムキーパーだ。分節時計の遺伝子は1990年代にニワトリ胚で特定されたが、ヒト細胞で研究が進み出したのは2019年。驚いたことに、ヒトの分節時計は、他の動物よりも進みが遅かったのだ。

  • 6月号

    北極域の永久凍土の融解が進んでいる。永久凍土は、陸域最大の炭素シンクだ。炭素源は、植物や動物の死骸だけではない。凍土の下の泥炭には未知・未培養のものも含めてさまざまな微生物が眠っていて、凍土の融解とともに活動を再開し、炭素を含んだガスを大量に放出する可能性があるのだ。

  • 5月号

    腸脳軸や脳腸相関という言葉を耳にしたことがあるだろうか。腸内細菌が脳の神経系に影響を与え、疾患を引き起こしたり、その経過を変えたりすることが、この数年で急速に明らかになってきた。脳に作用を及ぼす細菌を突き止めるマッピング研究の功績が大きく、ここからパーキンソン病などの疾患で治療に使える可能性が浮かび上がってきた。

  • 4月号

    現代の科学的発見を支えるコンピューター。プログラムとプラットフォームの進歩は、FortranやBLASTなどを誕生させ、生物学、気候科学、物理学を新たな高みへと導いてきた。Nature は今回、過去数十年の間に研究を一変させた主要なコードについて、その開発経緯と共に科学に何をもたらしたかを探った。

  • 3月号

    水は生命にとって不可欠な物質だが、生命の基礎となるタンパク質や核酸などの高分子を分解してしまう。地球で最初に生まれた細胞は、危険だが不可欠なこの物質に、どのように対処したのだろう? 人類はこの問いの答えを見つけようと、地球の表面や海底のみならず他の惑星にも赴き、探査を始めている。

  • 2月号

    微生物と認知症の発症とを結び付ける考え方は、数十年前からあったが、主流から外れるとされてきた。しかし今、研究者たちはこの関係を探り始めている。アミロイド仮説と感染症仮説を結ぶ研究結果が報告され出したからだ。

  • 1月号

    スマートフォンのアプリに声を聞かせるだけで、声の主がCOVID-19や認知症、うつ病などに罹患しているかどうかを知ることはできないだろうか。音声に表れる疾患特有の「マーカー」を見つけ出し、それを幅広い疾患の特定に役立てようと、実用化に向けた研究が進められている。

2020年 | Volume 17

  • 12月号

    系図データベースGEDMatchを利用した捜査で凶悪犯罪が次々と解明されている。その後、プライバシーに関する懸念からDNAや系図情報を利用した捜査に議論が勃発。捜査利用には制限が課されるようになった。しかし、DNA情報から顔を再建するといった、個人を詳細に描き出す技術を開発する企業は次々と登場しており、こうした技術は今、大きな注目を集めている。

  • 11月号

    目や耳、鼻、そして皮膚から、脳に絶え間なくやってくる大量の情報。全ての情報は脳で処理され、最終的には、動物の運動や思考といった形で出力される。こうした行動を調整する感情や欲求などの心の状態は、脳でどのように生み出されるのだろう。ニューロンの活動を捉える技術の進歩に後押しされ、神経科学者たちはおびただしい数のデータを精査し、その仕組みに迫ろうとしている。精神疾患の理解、ひいては治療にもつながるはずだ。

  • 10月号

    細胞にエネルギーを供給するミトコンドリア。この細胞小器官に不具合があると、命に関わる疾患が生じる。ミトコンドリアの異常はそのゲノムに起因するが、細胞の核とは別に存在していることから、母親の卵のミトコンドリアを健康なドナーのものと置き換える方法が検討されてきた。2015年に英国で治療法実施が承認されたが、3人の遺伝的親を持つことなどの問題から、各国、慎重姿勢のままだ。その後、この治療で少量持ち込まれた異常ミトコンドリアが増えることや、稀だがミトコンドリアDNAが父親から伝わることも分かってきた。そうした中、塩基編集という手法でミトコンドリアゲノムの変異を修正する方法が今回報告された。

  • 9月号

    核融合で輝くその星は謎だらけだ。太陽圏を覆う、コロナから吹き出す太陽風。太陽表面の温度は6000度程度であるのに対し、コロナは100万度以上と推測されている。太陽観測衛星「ソーラー・オービター」が捉えた、太陽表面で躍動する多数のミニチュアのフレアは手掛かりになりそうだ(太陽に最も近い場所で撮影した太陽のクローズアップ写真)。一方、太陽でわずかしか起こっていない核融合過程で発生するニュートリノを検出することに成功したBorexino実験からは、太陽のエネルギー源に関する予想が裏付けられた(太陽のCNOサイクルからのニュートリノを初検出)。

  • 8月号

    新型コロナウイルスによるパンデミックは、最悪の状況が過ぎ去ったとしても、科学者の働き方や研究内容、研究資金の額を永久に変えてしまう可能性がある。8月号では3つの記事を通し、科学の行方を考える。
    変わる大学20ページ):一変した講義や学内の風景から、運営資金や研究資金への影響を読み解く。
    縮小する科学者の世界23ページ):移動制限により、影響を受ける研究がある一方で、科学はより環境に優しく、より平等になる可能性が見えてきた。
    変動する研究対象26ページ):これまで全く別の分野にいた研究者たちが、新型コロナウイルス研究に急遽参入している。彼らは元の分野に戻るのだろうか?

  • 7月号

    神経科学者であるノラ・ボルコフ(Nora Volkow)は、依存症と脳の関連を示す数々の発見と共に、依存症は心の弱さではなく脳の疾患であるという考え方を浸透させたことで知られる。ロシアの革命家トロツキーの孫でもある彼女を突き動かしているのは、依存症患者が差別を受ける社会を変えたいという思いだ。2003年から薬物依存研究に対する世界最大の研究資金配分機関、米国立薬物乱用研究所(NIDA)を率いている彼女は今、米国に蔓延するオピオイドと闘っている。

  • 6月号

    中性子星は、宇宙で最も謎めいた天体の1つだ。その核は超高密度で、直径20kmほどの球体の中に太陽2個分の質量が詰め込まれている。近年、さまざまな観測装置での研究が進み、多くの事実が明らかになろうとしている。中でも2017年に打ち上げられた中性子星内部組成観測装置NICERは、中性子星の質量と半径をこれまでで最も精密に測定し、2019年12月にその結果を発表した。

  • 5月号

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るう今、研究者たちはどんなことに取り組んでいるのか。今号には4本の記事(「各国の診断検査の実施状況と、パンデミックと闘うために開発中の検査法」「クルーズ船での集団発生からCOVID-19について分かったこと」「COVID-19で今年の学会年次大会はゼロ?」「中国の生物多様性への影響と保全への取り組みに世界が注目」)を掲載。

  • 4月号

    細胞が接触や圧力を感知する仕組みは長らく謎に包まれていた。しかし、2010年に圧力を感知するタンパク質Piezo2が発見され、この分野に火がついた。Piezo類に関する論文はこの3年間で300本以上発表されている。マラリア耐性との関連も報告されるなど、物理的な力を感知するタンパク質は、医薬の標的としても注目を集め始めている。

  • 3月号

    乾燥しきった三畳紀の最中に極めて湿潤な時期があったという説は、発表から30年を経た今、ようやく受け入れられつつある。世界各地の岩石で発見されている長雨の痕跡は、この事象が地球上の生命にとって大きな転換期となり、さらには恐竜類の隆盛にもつながったことを示唆している。

  • 2月号

    発表した研究成果の中に、捏造や改ざん、盗用が行われたデータや結果がある場合、不正行為に当たる。それが故意ではなく、不注意によるミスであってもだ。出版社では、論文中の画像に不適切な操作が行われていないか点検するようになったが、いくつかの研究機関は、研究不正を未然に防ぐため、所属研究者の論文原稿が投稿される前に独立の機関に点検を依頼しているという。

  • 1月号

    Nature は2019年11月に創刊150周年を迎えた。表紙(go.nature.com/n150int)は、Nature に掲載された1900年以降の論文について、共引用ネットワークを可視化したものである。分野ごとに色分けし、ある論文内で同時に引用された各論文をリンクさせている(ドットサイズは共引用リンクの数を反映)。論文間の関係を俯瞰できるだけでなく、多分野にわたる研究と発見のネットワークがNature において構築されてきたことが分かる。その他、「データで見るNature の150年」「産業界の科学は信用できるか?」「科学は時代と共に変わらねばならない」「新分野を拓いたNature 論文10選」、社説(Nature 創刊150周年:科学的根拠による真理の探究、Nature の新しい姿)も収録。

2019年 | Volume 16

  • 12月号

    2014年、日本は再生医療の規制緩和へと大きく舵を切った。再生医療が迅速に市場に出る筋道をつける2つの法律(再生医療等安全性確保法、医薬品医療機器等法)が成立したのだ。これにより、希望者は幹細胞を使った治療を受けられるようになり、この政策は国際的な広がりをも見せている。だが、迅速な認定や承認と引き換えに、患者が代償を払う羽目になる危険性もはらんでいる。

  • 11月号

    始まりは、谷口尚(たにぐち・たかし)が作製した結晶の副産物に、渡邊賢司(わたなべ・けんじ)が目を留め、拾い上げたことからだった。今や、グラフェンのエレクトロニクス研究に欠かせない、2人が生み出す「六方晶窒化ホウ素」の結晶。彼らの結晶の品質の高さは群を抜いているため、世界中の物理学者から求められ、共著者として名を連ねた論文は700本を超える。

  • 10月号

    深海底鉱物資源には世界各国が大いに期待を寄せていて、開発は間もなく本格的に始まる。だが、採掘作業で巻き上げられた堆積物が深海の生態系に及ぼす影響は、まだほとんど分かっていない。十分な調査が行われていないからだ。この手の調査で評価できる規模・内容とされるDISCOL実験では、海底を掘り起こした堆積物は、その場はおろか周囲海域の動物をも生き埋めにした。その上、実験は30年前にもかかわらず、生態系は今も元に戻っていない。

  • 9月号

    太陽電池市場の主流であるシリコンセルに対し、近年注目を集める新材料「ペロブスカイト」で被膜したセルは、安価な上に簡単に製造できるため、わずか10年で太陽光発電の未来を担う期待の新材料になった。その電力変換効率は、研究室レベルではすでにシリコン系に迫るものとなっており、現在、欧米、中国、韓国、そして日本の複数企業が、実用化を目指ししのぎを削っている。課題を克服し、既存のシリコン太陽電池を過去のものにできるだろうか。

  • 8月号

    北極海海底の熱水噴出孔で最近、驚くべきアーキア(古細菌)が見つかった。そのゲノムを解析すると、真核生物に固有とされてきた遺伝子が複数見つかったのだ。2015年に報告されたこのアーキアは、秩序を破り皆を振り回す北欧神話の神「ロキ」になぞらえロキアーキオータと名付けられた。その後、ロキ類に近縁なアーキアが複数見つかり、これらを総称した「アスガルド上門」は今、真核生物の起源を巡る議論を大いに沸かせている。

  • 7月号

    旧ソビエト連邦の構成共和国だったカザフスタンでは、1949年から40年にわたり核実験が行われた。地上でも110回以上実施され、近隣住民には体調不良を訴える人や死者も出ていた。だが、患者に説明がなされることはなかった。そして1991年、カザフスタンが独立したことで、破棄を免れた被爆者の資料が日の目を見ることとなった。研究者と住民は、その情報から放射線の体への影響を明らかにしようと格闘している。

  • 6月号

    タイプの異なる細胞小器官同士が結合していることが30年前に報告された時、誰もが「何かの間違い」だと思った。だが、ライブイメージング技術の進歩で、異なる細胞小器官同士が結合して物資を交換する様子が捉えられるようになると、風向きが変わった。さらに最近では、細胞小器官同士をつなぐ繋留因子がさまざまな疾患と関連することも分かってきた。

  • 5月号

    水も油もはじく有機フッ素化合物は、焦げ付かないフライパンからレインコート、消火剤まで、私たちの生活で大活躍だ。一方で、健康問題との関連が明らかになった一部は、国際的に使用が禁止されたり、曝露限界値が設けられたりした。その便利さ故、代替のフッ素化合物が続々と開発され、環境中に放出されているが、それらの構造は不明で、安全性評価は難航している。

  • 4月号

    2019年は、メンデレーエフが元素の周期律を提案して150周年に当たる。だが、周期表は1人の科学者が作ったものではない。同時期に同様の概念を提案した科学者は他にもいたのに、なぜメンデレーエフの提案が支持されるようになったのか。それに、周期表を形作る上で重要な役割を果たした女性科学者たちの功績はあまり知られていない。彼らの足跡をたどることで、周期表の発見と発展の全体像が見えてくる。

  • 3月号

    電波望遠鏡アルマが2014年、誕生から間もない恒星を観測した。天文学者たちは、初めて目にした高解像度の原始惑星系の写真に衝撃を受けた。まるでCG画像のようだったからだ。そして、恒星を囲む塵やガスのフワフワとした円盤には、赤ちゃん惑星の存在を示す溝も刻まれていた。だが、原始惑星系の画像が集まるにつれ、太陽系に基づく従来の惑星形成理論では惑星系の形成過程が説明できないことが分かってきた。

  • 2月号

    細胞をボトムアップ式に作り上げる過程で生命と非生命の境界が見えてくるに違いない――人工細胞、つまり外部と自身を区画化する膜を持ち、増殖し、進化する系を作ろうという試みは、20年以上前に始まった。この分野はマイクロ流体技術の進歩で急速に発展していて、細胞様の物体を作ることや、簡単な人工の代謝系を構築することにも成功している。

  • 1月号

    1人1人の1塩基レベルの違いから疾患リスクを予測し、それを健康予測に用いる取り組みが始まっている。ただし1塩基の変異がもたらすリスクは極めて小さく、因果関係を導き出すには大規模な標本集団が必要だ。英国やエストニアなどではバイオバンクを設立し、その試料を基に多遺伝子性スコアを導き出して疾患のリスク予測を行っている。その過程で、予測スコアの評価対象や、遺伝子カウンセラー不足などの課題が浮かび上がってきた。

2018年 | Volume 15

  • 12月号

    地球周回軌道上では2万個以上の人工物が高速で飛び交っていて、運用中の人工衛星は日々、それをよける操作に時間と燃料を費やしている。宇宙ゴミの密度は近年急速に上昇しており、ガラクタ同士が衝突すれば「弾丸」はますます増えるという悪循環に陥るが、事故を防ぐために必要な位置情報は、各国がほとんど公開しない。早急な対策が求められる中、除去を目指す案のいくつかが試験段階に入った。

  • 11月号

    あなたの出生年はいつだろうか? さまざまな亜型が出現するインフルエンザのうち、どの亜型に感染しやすいかは、その人の出生年に流行していた亜型がカギを握っているようなのだ。免疫学的刷り込みと呼ばれるこの現象の解明に、米国立衛生研究所やビル&メリンダ・ゲイツ財団などが資金提供を始めた。インフルエンザの万能ワクチン開発に利用できる可能性があるからだ。

  • 10月号

    ヒト初期発生は、動物や希少な組織試料を参考に推し量るしかない状況が数十年と続いていたが、ヒト受精卵を研究室で13日を超えて培養できる手法が開発され、この研究に道が開かれた。神経系の発生が開始する14日以降の培養は倫理的な理由で認められていないが、ヒト胚を使わないで初期発生を観察する手法も報告され、議論が始まっている。

  • 9月号

    公的機関で人工知能(AI)を用いた自動判定ツールの導入が進んでいる。一貫性のある判断が可能になると期待されるが、AIのアルゴリズムは、人が入力した過去のデータを基に予測する。つまり、入力データの偏りや、アルゴリズムに存在するバイアスにより、不公正な判定につながったり、既存の不公平を強固にしたりする可能性がある。公正かつ透明性が確保されたツールは実現できるだろうか。

  • 8月号

    科学の公正性に対する懸念の高まりから、研究者を不正行為へと駆り立てる要因について各国で研究が進められている。Natureも、研究室の文化がその健全性にどう影響しているかを独自に調査し、その結果、研究室の主宰者(PI)と他のメンバーとの認識の隔たりや、PIの指導力に対する不満が見えてきた。多くのPIが、管理や指導などのリーダーシップに関する訓練を受けないままその地位に就くからだ。

  • 7月号

    概日時計を考慮して特定の時刻に薬剤を投与する「時間治療」。服薬や手術の時刻を変えるだけで、副作用低減や余命延長、生活の質向上を実現すると期待される。臨床試験数が少ないことや、バイオマーカーが十分そろっていないことなど課題は多いが、2017年に概日リズムの機構解明にノーベル医学・生理学賞が贈られたことも追い風となり、普及への取り組みが始まっている。

  • 6月号

    2015年、特定の光を毎日1時間浴びせたマウスは、アミロイド斑の形成が抑えられることが報告された。視覚刺激を介してニューロンの波長を同期できる、つまり脳波を操作でき、その上、特定の波長には神経変性疾患を治療できる可能性があるというのだ。この研究以外にも、神経変性疾患と脳波に重要な関連があることを示唆する証拠は増えており、光や音による非侵襲的な手法の効果を調べる臨床試験も始まっている。

  • 5月号

    10〜19歳の死因に関するWHO調査で、10代後半の男性の死因の多くが、道路での負傷や対人暴力など「危険行動」と関係したものであり、その割合は、10代前半の男性や女性に比べて圧倒的に高いことが示された。青年期の若者はなぜ危険行動をとるのだろう? 反抗心やホルモンバランスにより駆り立てられる、という単純な理由ではないことが、神経科学の手法を用いた研究から最近分かってきた。

  • 4月号

    極度の疲労感のために起き上がれなくなり、慢性的な機能不全の他、歩行や会話に困難を来すこともある筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)。原因は不明で、治療法はない。以前は「まれ」な病で、原因は「気分の問題」と考えられていたため、患者は現在も、誤った理解による偏見に苦しんでいる。米国はこの病の研究を強化するため、2017年に研究資金を増額することを発表した。

  • 3月号

    生命が居住する地球には、その大きさや質量、主星からの距離以上の「好条件」がそろっていることが分かってきた。地球を覆う大気は、コア(核)の対流で生じる磁場で守られていて、地球の温度がちょうど良く保たれているのはテクトニックプレートの運動のおかげである。では、太陽系外惑星の中に地球と似たものはあるのだろうか? それを明らかにしようと、惑星を地質学的に理解する研究が進められている。

  • 2月号

    「会話のきっかけとして使える遺伝子は何だろう?」。あるバイオインフォマティシャンが好奇心から、生物医学文献データベースPubMedを調べ、ヒト遺伝子2万7000個のうち「最もよく研究されている遺伝子」のランキングを作ってみたところ、分子生物学の黎明期からの変遷や注目される遺伝子の特徴が浮かび上がってきた。PubMedには、生物の遺伝子に関する論文が120万本以上が登録されている。

  • 1月号

    ロボット工学やクラウド・コンピューティング、モバイル技術などのデジタル技術は、この10年で著しく進歩した。特に、人工知能(AI)と呼ばれる機械学習システムの進歩は、世界の労働者のあり方に革命をもたらすといわれる。AIが良きパートナーとなるか人間の雇用を奪うかをはじめ、デジタル技術の進歩が人間の仕事にどんな影響をもたらすのか、これまでのデータに基づき3つの観点から検証した。

2017年 | Volume 14

  • 12月号

    細胞から細く長く伸びるワイヤー状の管。サイトネームやトンネルナノチューブと呼ばれるこの管は、離れた細胞に物資を輸送する連絡路であることが分かってきた。当初は「培養皿に付いた傷ではないか」と、存在自体が疑われたが、2015年にがん細胞や細菌もこれを利用して拡散している可能性が示されたことで、注目が集まっている。

  • 11月号

    物質の鏡像である「反物質」。物質と反物質は初期の宇宙では同じ量だけ生成したとされるが、反物質は宇宙にはほとんど存在していない。欧州原子核研究機構(CERN)では6つの実験チームは、この謎を説明できる反物質と物質の性質のわずかな違いを見つけ出そうと、それぞれの手法で挑んでいる。これまでのところそうした違いは見つかっていないが、発見されれば、宇宙をのぞく新しい窓が開かれる。

  • 10月号

    塩基配列解読技術の進歩によって微量なRNAも解析できるようになり、細胞集団を単一細胞レベルで調べることが可能になった。この進歩により、これまで困難だと思われていたさまざまなアイデアが実現している。今号では、この分野を切り開き、現在ヒト細胞アトラスを主導するAviv Regev氏の素顔に迫った「細胞に魅せられた科学者」の他、この手法なしには達成できなかった「T細胞の標的認識パターンを予測」も掲載。

  • 9月号

    世界的に見て研究助成は縮小傾向にあり、助成金獲得競争は激しさを増している。Nature は米国立衛生研究所(NIH)の助成金交付データと獲得熟練者の話をもとに、助成金獲得に有効な戦略や、よくある助言のうち無視すべきものを探った。このたびの調査結果は、世界中のどの助成金申請にも当てはまり、特に若手研究者やキャリア初期の研究者にとって役立つはずだ。

  • 8月号

    偽造試薬の一大市場となっている中国。その製造・供給ルートには、近所の印刷店など予想だにしない人々が関与していることが分かってきた。サプライチェーンに組み込まれた彼らは、そうとは知らずに誠実に仕事をしているだけであり、法的制裁はそぐわない。そして、中国のニセ試薬は国内にとどまらず、科学界全体に波及し始めている。この問題への対抗策として、中国の研究者や試薬製造企業が始めた取り組みとは・・・・・・。

  • 7月号

    核内で分散していたクロマチンは、細胞の分裂期になると凝縮されて染色体となる。このとき、DNAはなぜ絡まったりしないのだろう。その答えは、イヤホンコードをクリップで留めて絡まないようにするのと似ているのかもしれない。クロマチン繊維がコヒーシンによりループ状に束ねられ、それが幾重にも折りたたまれている、という説が有力なのだ。ゲノムがループを作って遺伝子の近くにその調節領域を持ってくることは30年以上前から知られていたが、ループ形成に必要な因子やその仕組みについては議論が続いている。

  • 6月号

    恐竜が陸上を闊歩している時代に海を支配していた巨大な海生爬虫類、魚竜。恐竜の存在がまだ知られていなかった19世紀初頭、魚ともイルカとも見まごう奇妙な姿の爬虫類化石に古生物学者は興味をそそられた。だが、しばらくして恐竜化石が発見され、研究者の関心は恐竜へと移ってしまった。100年以上にわたる停滞期にあった魚竜研究だが、近年大いに活気付いている。新種の発見により、謎に包まれていた水生適応に至る過程が浮かび上がってきたのだ。

  • 5月号

    暑い夏に欠かせない冷房。その需要は高まっていて、冷房用の電力需要も2100年までに2000年の30倍以上になると予想されている。そうした状況を受け、暑さの原因である「太陽熱」を利用した空調システムに注目が集まっている。価格がネックとなり普及には至っていないが、技術革新や部品が安価に作れるようになったことで、潮目が変わりつつあるのだ。

  • 4月号

    火星の生命を探す最良の方法は、火星の岩石を地球に持ち帰ってじっくり分析することだが、試料を地球や探査機由来の物質で汚染せずに採取し、変性させずに持ち帰るのは至難の業である。NASAは今、その究極のミッション「マーズ2020」の詳細を詰めているところで、今年2月中旬には着陸地点を3カ所に絞ったことを発表した。それらはかつて水があったと予想されている場所だ。

  • 3月号

    ゲノム編集ツールとして注目を集めるCRISPR系。この機構の特徴的な繰り返し配列を最初に報告したのは、大腸菌ゲノムを調べていた大阪大学の研究者で、1987年のことだった。その後、この領域にはウイルスの塩基配列が記憶されていることが分かり、現在は、原核生物がウイルス感染に対抗するために進化させた「適応免疫」と考えられている。だが、それ以外の機能が存在することや、利用しているのは一部の原核生物に過ぎないことが明らかになり、生物学的な謎はますます深まっている。

  • 2月号

    スズメに似た野鳥、ノドジロシトドには、頭部が黄褐色のものと白色のものの2種類がいて、それぞれ行動様式が異なることが知られている。約30年にわたる研究から、この鳥のつがいのほとんどが黄褐色と白色の組み合わせであり、4つの性があるかのように振る舞うことが明らかになった。2種類の違いは大規模な染色体逆位にあると予想されていたが、この逆位のために、相同だった染色体が「2つ目の性染色体」となったと考えられる。これほど大規模な逆位は脊椎動物ではまれだという。

  • 1月号

    6万人以上のタンパク質コード領域(エキソーム)の高品質な塩基配列解読データをまとめた無料のデータベース「ExAC」とその解析結果が、2016年8月にNatureに報告された。以来、これまで「致死的」と考えられていた遺伝的変異の見方が変わりつつある。ExACを利用した解析結果が次々と報告され、無害なものも多いことが分かってきたのだ。世界中の臨床検査室でも、患者の治療方針を検討する際にはまずExACを当たるようになってきている。

2016年 | Volume 13

  • 12月号

    並はずれて優秀な子どもたち5000人を45年にわたり追跡してきた米国のSMPYによる調査から、そうした子どもたちが学習意欲を持ち続けるためには手助けが必要なことが分かってきた。彼らは、自分自身で興味のあるものを見つけ出し、自力でその力を伸ばしていくことができると考えられがちだが、そうではないという。彼らが未来を切り開き、幸福にもなれるようにするためには大人の介入が必要であり、それにはまず、そうした子どもたちを見つけ出す必要がある。

  • 11月号

    私たちの生活に不可欠なナイロンやポリエチレンは、単一の小さな分子が鎖状につながった巨大な分子で、高分子(ポリマー)と呼ばれる。ポリマーは今日では見事な発展を遂げているが、その概念が受け入れられるようになったのは1930年頃だ。どこにでも使われているが故、環境問題を引き起こしてもいるが、その解決策として期待されているのはバイオベースの「ポリマー」であり、さらには、薬物送達分子やデータ記憶装置としての開発も進められている。

  • 10月号

    「現生人類はアフリカで誕生した」というのが現在の定説だが、人類発祥の地はアジアだと考えられていた時期があった。そのきっかけとなった北京原人はその後ホモ・エレクトスの亜種とされ、また、アフリカでさらに古い人類化石が出土したことで、研究の中心はアフリカ・欧州へと移って行った。しかし、中国で近年、定説と合わない化石が相次いで見つかった。2015年には、6万年前に世界に広がり始めたとされるホモ・サピエンスが、10万年前にすでに中国にいたことが示唆された。研究者たちは今、人類進化の謎を解くカギはアジアにあると考えている。

  • 9月号

    成体マウスの皮膚細胞に4つの遺伝子を導入すると、胚性幹細胞のような見かけと振る舞いの細胞になる。2006年6月の国際幹細胞学会で山中伸弥博士が報告した細胞の再プログラム化手法に、皆、度肝を抜かれた。胚性幹細胞につきまとう生命倫理上の問題なしにどんな細胞でも生み出せる人工多能性幹(iPS)細胞の登場から10年、医療への応用はコストと安全性の壁に阻まれているが、医学生物学研究ではすでに世界を大きく変えつつある。今や、疾患研究や薬剤スクリーニングに欠かせない存在となっているのだ。

  • 8月号

    新しい培養法の開発により、受精後13日間、培養皿でヒト胚発生が観察された。この成果は不妊治療の助けになると期待されるだけでなく、ヒトの初期発生が人類にとっていまだに謎の多い事象であることを改めて認識させるものとなった。ヒト固有の特徴がいくつも見つかり、未知の細胞群も観察されたのである。これに伴い、ヒト胚培養における国際的な規則改正にも議論が及んでいる。これまでの最長記録は9日間で、ヒト胚体外培養を14日以内と定めた規則を超えることは「技術的にない」と考えられてきたが、今回の報告はそれを超えたばかりか、さらなる研究の必要性を示したからだ。

  • 7月号

    腫瘍は遺伝学的に異なる細胞の集まりだ。それ故、抗がん剤の投与前から抵抗性の変異を獲得した細胞が存在していることもある。そして抗がん剤を投与するとその細胞が生き残り、競争相手のいなくなった環境でどんどん増える。ならば、抗がん剤が効くがん細胞をある程度残し、耐性のある細胞が増えないように競争させればいいのではないか? このような「進化の原理」を利用したがん治療法の研究が始まっている。

  • 6月号

    あらゆる色の蛍光体を作り出すことのできるウイルスサイズの粒子、ナノ蛍光体。粒子の大きさと形状によりその色を厳密に調整できる「量子ドット」が1981年に報告されたことに端を発し、現在は、テレビ・ディスプレイを始め、バイオイメージングやがん治療、太陽光発電などの分野から熱い視線が注がれ、開発競争が激しさを増している。

  • 5月号

    大型捕食者アノマロカリスをはじめ、脊椎動物へとつながるピカイアなど、複雑な形態の動物の祖先がほとんど出そろったといわれるカンブリア紀。動きの早い捕食者が突如出現したことで、ほとんど動けなかったエディアカラ紀の動物たちは食べ尽くされ絶滅したと考えられている。爆発的進化が起こったとされる両時代の境目で、一体何があったのだろう? 少数の生物から緩やかに多様な生物が生じたとする進化論では説明がつかず長年論争が続いていたが、当時の海洋の酸素濃度に関する新発見があり、大変化のきっかけがついに見えてきた。

  • 4月号

    ビジネス業界では、きちんとした製品やサービスが流通するように、ISOなどの国際機関が世界共通の標準や規格を制定しており、それを守らなければ取引が成立しない場合がある。一方、学術研究の場では、サンプル保存やデータ管理の方法が研究室ごとに違っていたり、試薬の保管条件や使用期限を守っている人とそうでない人がいたりする。こうした日々の実験過程を是正して「信用できるデータ」を生成しようと、品質保証部門を設ける大学や、外部の品質保証コンサルタントと提携する研究者が増えつつあるが、まだ少数だ。原因は、時間や費用がかかると思われていることにある。

  • 3月号

    がんなどの疾患の末期になると、患者は基礎疾患に伴うさまざまな代謝異常で筋肉量が著しく減少し、痩せて衰弱する。この代謝異常の症候群は悪液質(cachexia;カヘキシー)と呼ばれ、2400年前のギリシャの医学者ヒポクラテスも認識していた。だが、現在も対処法がなく、医師からの説明も少ないために、患者とその家族は不安と苦悩を抱えて残りの時間を過ごすことが少なくない。そうした中、2001年のある発見を皮切りに急速に解明が進み始め、基礎疾患とは別の疾患として治療できる可能性が見えてきた。

  • 2月号

    毎年約60万人が命を落とすマラリア。2000年に始まった国際的な取り組みでその数は減少したものの、今も約32億人が感染の危険にさらされており、温暖化による感染地域拡大も懸念されている。一方、蚊の遺伝学に基づいた研究では、マラリア伝播を防ぐ遺伝子を媒介蚊に組み込むことに成功していたが、自然界に迅速に広める方法がなく実用的とは言えなかった。突破口を開いたのは、2015年1月まで机上の空論と考えられていた「遺伝子ドライブ」だ。このたび作出された「遺伝子ドライブ蚊」はまだ論議が必要な段階ではあるが、マラリア根絶は夢ではないかもしれない。

  • 1月号

    エルニーニョという名前は、毎年クリスマス頃にペルー沖合に現れる高温の暖流が神の幼子にちなんで「corriente del Niño」と呼ばれていたことに由来するが、気象学では、数年に一度、熱帯太平洋全域で海面水温が平年よりも上昇する現象を指す。予測不能である上に毎回様態が異なり、そのメカニズムも不明だ。現在発生中のエルニーニョは2014年夏に始まり、その冬には終息したかに思われたが、再び水温が上昇し始め、2015年11月には観測史上3番目を記録した。2016年夏頃には終息すると予測されているが、干ばつや大洪水などに備えるよう、世界各地で警告や緊急事態宣言が出されている。

2015年 | Volume 12

  • 12月号

    生体分子をお手本に、化学者たちはラチェット、スイッチ、モーター、ロッド、リング、プロペラなどの、組み合わせて使えるナノスケールの部品をたくさん生み出してきた。そして、いよいよ人工「分子マシン」としての利用が可能な時期に入ったと考える研究者が増えてきた。人工筋肉のような肉眼で見える物体を作れるようになるのはまだ先のことだろうが、現在、体内の狙った場所で薬物を放出する光駆動スイッチや、エネルギーを蓄えたり光に応答して伸び縮みしたりするスマート材料などが次々と開発されている。

  • 11月号

    2013年12月、ギニア南東部で原因不明の熱病の発生が相次いで報告された。ギニア政府が原因を特定し世界保健機構(WHO)に報告した2014年3月末にはすでにアウトブレイク(集団発生)になっていたが、国際的な対応は2014年9月まで本格化しなかった。WHOの国際保健規則では対応に当たるのは原則として当事国で、途上国の支援には触れられていなかったのだ。また、貧困地域で蔓延する疾患に対して、新薬・ワクチン開発が積極的には行われていないため、世界はこれらの疾患に対し無防備な状態である。パンデミック(世界的流行)を防ぐためにはどうしたらよいのだろう。

  • 10月号

    100年以上前から細胞には自己組織化能力があることが知られていたが、その能力が培養法に用いられだしたのは、わずか十年ほど前の2000年代半ばだ。培養皿の中にシグナル分子を投入するだけで、細胞は自分で組織を形作り、臓器に似た立体構造体「オルガノイド」となる。このミニ臓器は、基礎研究や薬の試験で役立つことが実証されつつあり、さらには、移植などの治療に用いるための研究も進められている。

  • 9月号

    地球に存在する微生物の99%は培養ができないことから、「微生物ダークマター」と呼ばれ、そこには抗生物質などのお宝が大量に眠っていると考えられている。近年、研究者たちは微生物ダークマターに迫ろうと、未培養のまま遺伝子を詳細に解析する技術や、微量の試料から目的の微生物を探す技術などを編み出してきた。中でも、微生物をその生育環境で培養する新技術では、実際に新しいタイプの抗生物質が見つかった。これらの最新手法を詳しく紹介する。

  • 8月号

    モルヒネは強力な医療用麻薬で、がん性疼痛の緩和でこれに勝るものはないとも称される。需要が高まり続けているが、アヘンケシから抽出して生産するしかなく、製造も管理も依然として高コストである。このたび、モルヒネの前駆物質を生合成できる酵母株が作り出された。安く大量に鎮痛剤を供給できるだけでなく、中毒性のないモルヒネの開発が進む可能性もあり期待が集まっているが、違法なヘロイン生産という大問題を生むことになった。早急な規制が必要だが、このような正反対の面を持つ「デュアルユース」技術から最大限恩恵を受けつつ、その悪用を防ぐのは、簡単なことではない。

  • 7月号

    ゲノム編集と呼ばれる手法を使えば、生命の設計図であるゲノムを1塩基単位で思い通りに書き換えることが可能だ。この技術には農畜産業から医療に至るまで幅広い分野から期待が集まっているが、ヒト受精卵の遺伝子改変を行ったという論文が4月に発表され、物議を醸している。遺伝子改変された受精卵はいずれ生殖細胞にも分化するからだ。後世に影響を及ぼすことから議論が沸騰しているが、どんな遺伝子改変なら問題がないのか、現時点では明確な規定がない。同号に、ヒトの遺伝子治療に使える小型Cas9ヌクレアーゼの発見についても掲載した。この技術の臨床応用が近いことは明らかだ。

  • 6月号

    太陽系の探査活動から、驚くべき報告が相次いでいる。中でも、土星の小さな衛星エンセラダスは2005年にカッシーニ探査機が撮影した画像から注目が集まり、最近では、この天体に熱を維持できる機構があることや水が存在することが報告されていた。さらに今回、東京大学の関根康人氏らは、原始的な生物であれば生育可能な環境があることを実験室での再現実験で証明し、Nature 2015年3月12日号に報告した。

  • 5月号

    星の光は大気を進む間に撹乱されるため、地上で撮影するとぼやけてしまう。だが、すばる望遠鏡は、地上にありながら高解像度画像を撮影できる。これは、光がどのように撹乱されたかを瞬時に計算する「補償光学」システムのおかげである。光が撹乱される前の姿を復元できるこの技術を使って、不透明な壁にぶつかって散乱された可視光を壁の向こう側で収束させる、つまり、光を壁抜けさせる手法が、2008年に2つのチームから報告された。以来、補償光学を取り入れて可視光による非侵襲的な生体イメージングを実現しようという研究が活発に行われている。

  • 4月号

    日本では燻炭(くんたん)と呼ばれ古くから用いられてきた土壌改良材「バイオ炭(biochar)」が、世界的なブームの兆しを見せている。穀皮や食品廃棄物を低酸素条件下で加熱して作るため、焼却に伴う二酸化炭素排出量を減らすだけでなく、地中に埋蔵すれば温暖化ガス対策になるのではないかと研究者の間で関心が持たれるようになったのがきっかけだ。その後、農作物の収穫量を増やし、土壌や水の汚染を抑制するとして注目を集めるようになり、現在、科学的な研究が世界中で行われている。

  • 3月号

    地球はこれまでに5度の大量絶滅を経験しており、今日までに95%以上の生物種が姿を消したと考えられている。そして現在、人類の活動により生物が次々と姿を消しており、世界各国は保護区を増やしているものの、今後数百年の間に6度目の大量絶滅が起こると危惧されている。生物種の消滅の速度を弾き出し、地球の将来を予測しようと、産学官が力を合わせて困難極まりない「地球上の全ての生物をモデル化する」という作業に取り組んでいる。

  • 2月号

    世界中で深刻な問題となっているうつ病。その治療は、薬物療法と認知行動療法と呼ばれる精神療法が一般的だが、効果が見られる患者は一部のみで、抗うつ薬に至っては50年以上大きな進展がない。現状を打開しようとさまざまな視点から研究が行われており、特に、高い効果が認められる認知行動療法の神経科学的検証や、統合失調症などの遺伝子多様体の発見につながった遺伝子解析の手法には注目が集まっている。確実な治療法を見いだすため、そしてうつ病を根本から理解するための、最新の取り組みを紹介する。

  • 1月号

    科学文献における「引用」を追跡する初の系統的な試みとして考え出された科学引用索引(SCI)が50年の節目を迎える今年、Nature誌はトムソン・ロイター社とグーグル社に協力を仰ぎ、1900年から今日までに発表された科学論文を被引用回数順に並べた「被引用回数トップ100」リストを作成した。驚いたことにこのリストには、アインシュタインの特殊相対性理論は見当たらず、教科書級の大発見は少ない。科学の発展を支えてきた知見とは、一体どのようなものだろうか。

2014年 | Volume 11

  • 12月号

    「将来のスター科学者」と目されていた優秀な大学院生が、博士号取得後に科学者にならずに別の道に進むことは少なくない。その原因の1つに、学術研究機関のポストに空きがないことが挙げられる。今回 Nature は、博士号取得後に学術研究を離れた3人を取材し、どんなきっかけでどういう道を見出したのか尋ね、そこから、研究を続けている人とそうでない人にどのような違いがあったかを探った。

  • 11月号

    2014年のノーベル物理学賞は、窒化ガリウムによる高輝度青色LEDを開発した3人の研究者に贈られることになった。赤﨑勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の各氏だ。日本生まれの高輝度LEDは、その電力消費量の少なさと耐久性の高さから資源保護につながる発明であると評価され、スウェーデン王立アカデミーは「21世紀はLEDによって照らされる」と賞賛した。Nature ダイジェストでは、この受賞理由を別の視点から解説する。

  • 10月号

    核融合は、少量の燃料から莫大なエネルギーを生み出すことができる上、核分裂のように放射性廃棄物を排出することもないため、夢のエネルギーとして、国際協力下で研究が進められている。核融合発電の持続に欠かせないプラズマ閉じ込め方式はトカマク型が主流で、その装置の開発に最初に成功した日本がこの研究をリードし、米国の核融合エネルギー予算の大半もこれに注がれている。だが、コスト超過や計画の遅れから、一部の研究者がベンチャー企業を立ち上げ、別の方式による核融合炉の開発に乗り出した。

  • 9月号

    1990年代にアルツハイマー型認知症との関連が報告されたものの顧みられずにいた遺伝的リスク因子「アポE」。これまでアミロイドβの代謝を標的とした薬剤開発が行われてきたものの、期待に応えるほどの薬効を持つものがいまだに登場してないことから、現在、この因子に立ち戻ろうという動きがある。実際、この因子を基に、認知機能が正常な高齢者の発症を予測し、先制的な治療を施すという臨床試験が始まっている。

  • 8月号

    より精緻にゲノム解析を行えるようになったことで、思いもよらない生物の仕組みが次々と明らかになっている。今号では、馴染みのある生き物たちに関する、驚くべき最新の研究成果を集めた。中でも、勝間進(東京大学)らが突き止めたカイコガ性決定の最上流因子は、タンパク質ではなくRNAであったことや、概要ゲノム配列が明らかになったクシクラゲの神経系は他に類を見ないものと分かったことは興味深く、今後は科学分野のみならず経済・産業にも大きな影響を及ぼすことだろう。

  • 7月号

    「免疫チェックポイント阻害剤」という新機軸の登場により、免疫療法が盛り返してきた。免疫チェックポイントタンパク質は免疫細胞の攻撃を制御する「ブレーキ」で、がん細胞はこれを悪用して免疫系から逃れている。この阻害剤の臨床試験で良好な結果が得られたことで、現在、この分野に研究者や企業が殺到しており、ある分析によれば、今後10年間で進行がん患者の60%に免疫療法が行われるようになり、市場規模は約3兆円に達すると予想されるほどだ。

  • 6月号

    生活に欠くことのできない充電式電池。高性能リチウムイオン電池の登場で、機器は小さく手ごろな価格になったが、電気自動車では依然として価格のネックであり、再生可能エネルギー利用ではその容量が課題となっている。6月号では、ビジネスの可能性に満ちあふれるこの分野で注目の「多価イオン電池」、「空気電池」、「超大容量電池」などの最新技術を紹介した記事を掲載。また、体内で溶ける「生分解性電池」に関する最新報告も掲載。

  • 5月号

    2014年3月17日、ハーバード・スミソニアン宇宙物理センターの研究者を中心とした国際共同研究グループBICEPが、宇宙誕生の謎解明に大きな一歩となる成果を報告した。宇宙急速膨張(インフレーション)の証拠となる原始重力波の痕跡を、宇宙マイクロ波背景放射から検出することに成功したのだ。インフレーション理論は、宇宙が誕生直後に瞬間的に急膨張したというもので、佐藤勝彦氏とアラン・ハーヴェイ・グース氏により1981年にほぼ同時に提唱され、その証明が待たれていた。

  • 4月号

    標的遺伝子のDNA配列を改変できるゲノム編集技術に熱い視線が注がれている。どこに遺伝子が挿入されるか分からない従来の遺伝子組換えと比べ格段に精緻な操作が可能なうえ、さまざまな生物種で遺伝子ノックアウトなどが可能なのだ。特にCRISPR/Casシステムは簡便なことから、実験動物だけでなく、産業界でも広く利用されることが予想される。今後の展望について、農工商連携センターを立ち上げた徳島大学の野地澄晴副学長を中心とする研究チームとラットのゲノム編集を開拓した真下知士氏に伺った。

  • 3月号

    体細胞を外部刺激だけで受精卵に近い状態へとリセットできることが示され、この方法で初期化された細胞は「STAP細胞」と名付けられた。STAP細胞をマウスの胚盤胞(卵割腔が形成された着床直前の胚)に注入して得られたキメラマウスでは、STAP細胞が全身のみならず胎盤にも分化していることが観察された。この能力はES細胞とiPS細胞にはないため、STAP細胞は独特な多能性状態をとることが示唆される。初期化の概念が大きく変わる発見であり、詳細な機構解明が待ち望まれる。

  • 2月号

    「遺伝子改変サルを作ろうなんて、想像すらできなかった」。霊長類は、マウスに比べて飼育に費用がかかり、また繁殖が容易ではない上に時間がかかる。だが、ヒト疾患モデルとして使える「遺伝子改変サル」が現実味を帯びてきた。近年登場した「ゲノム編集」技術ならば胚を1つずつ操作可能で、遺伝子改変動物を効率よく得ることができるのだ。この先頭を走る慶應義塾大学の佐々木えりか氏と岡野栄之氏は、2013年11月の米国神経科学学会でそれぞれ、免疫不全マーモセットと自閉症マーモセット作出に向けた取り組みについて発表した。

  • 1月号

    考えていることが他人に分かってしまう?「脳情報デコーディング(解読)」と呼ばれるこの技術は、2001年に最初の論文が発表され、現在、研究が活発に行われている。当時は見ているものが猫か靴かを判別できる程度であったが、2013年4月にはATR脳情報研究所の神谷之康氏によって、夢で見ているものも解読できることが報告された。この技術をマーケティング活動に使えないかと考える企業や、捜査や裁判の証拠にできないかと考える専門家まで出てきた。

2013年 | Volume 10

  • 12月号

    大学の特許が売れるとかビジネスになるという幻想は、日本ではとうの昔に消滅したが、米国でも、実際には非常に苦戦している。正式な統計はないが、米国の大学特許でライセンス供与ができているのは、せいぜい5%とみられている。残り95%は、法務関係費や事務費が無駄につぎ込まれている。この状況を打開するため、一部の有名大学が不適切な企業体に、十把一絡げ二束三文で保有特許を売却していることが明らかになった。売却先はいわゆるパテントトロール(特許の怪物)と呼ばれ、発明や知財を自らが発展・展開させることはほとんどなく、もっぱら、特許権の侵害訴訟ないしはそれを攻撃的交渉手段として、莫大な利益をあげている企業だ。いくら合法とはいえ、公的資金で生まれた研究成果が、問題視される企業に売り渡されている現状は、倫理的に批判されても仕方ない。

  • 11月号

    大学の特許が売れるとかビジネスになるという幻想は、日本ではとうの昔に消滅したが、米国でも、実際には非常に苦戦している。正式な統計はないが、米国の大学特許でライセンス供与ができているのは、せいぜい5%とみられている。残り95%は、法務関係費や事務費が無駄につぎ込まれている。この状況を打開するため、一部の有名大学が不適切な企業体に、十把一絡げ二束三文で保有特許を売却していることが明らかになった。売却先はいわゆるパテントトロール(特許の怪物)と呼ばれ、発明や知財を自らが発展・展開させることはほとんどなく、もっぱら、特許権の侵害訴訟ないしはそれを攻撃的交渉手段として、莫大な利益をあげている企業だ。いくら合法とはいえ、公的資金で生まれた研究成果が、問題視される企業に売り渡されている現状は、倫理的に批判されても仕方ない。

  • 10月号

    ネジから液晶ディスプレイの規格まで、大半の工業製品には「国際標準」という詳細な国際的取り決めが存在する。このルールに従っていれば、どこの誰が作ったものでも代替利用できる。これに近い形で「間葉系幹細胞」の国際標準を決めようという動きが、米国立衛生研究所(NIH)の主導で始まった。間葉系幹細胞からは、骨細胞・心筋細胞・脂肪細胞などが作れ、最近では、グリア細胞や幹細胞にも誘導できることがわかり、再生医療への期待が高まっている。ところがその実体は定義さえ怪しい状態にあって、各研究者が勝手に主張しているのに近い。この混乱状況を解決するため、作業部会は当面、基準となる参照株を1株以上樹立したいと考えているという。

  • 9月号

    2013年6月13日、米国最高裁判所は「自然に存在するヒト遺伝子に特許は認められない」とする歴史的判決を下した。これは遺伝子検査会社ミリアド社による2種類のがん関連遺伝子 BRCA1BRCA2 の特許の有効性に関する訴訟への回答だ。今後、農業分野などでも、自然遺伝子への特許が認められなくなる可能性が高く、バイオテク業界の動揺が広がっている。ただし、人工的に修飾されたDNAには特許が認められ、これまでもcDNAについては特許が認められている。そこで、どれだけ自然と異なれば特許になるのか、誰もわからず混乱が生じている。

  • 8月号

    ケンブリッジ大学のホーキング博士は、世界で最も名前を知られた物理学者の一人だろう。その彼が、今回、パレスチナ占領地におけるイスラエルの行為に抗議する「学術ボイコット運動」に参加することになった。具体的には、6月中旬に開催されたイスラエルのペレス大統領の90歳を祝う各種式典への参加を見送ったのだ。ケンブリッジ大学は当初、「健康上の理由」としていたが、同じ日に、パレスチナの学者の助言に基づいて欠席すると訂正発表した。英国では、労働組合が反ユダヤ的状況を醸し出したという訴えが退けられたばかりだった。

  • 7月号

    アメリカでは、毎年3万以上の人々が銃の犠牲となっている。それはたぶん、国民1人当たりの銃の所有数が断トツの世界一であることと関係する。重大な問題は、強力なロビイスト団体である全米ライフル協会(NRA)の圧力で、銃が及ぼす負の問題について研究するための助成金を、連邦政府が支出することがほとんど禁止されてしまっていることだ。しかし、カリフォルニア大学デービス校のウィンテミュート博士は、民間財団からの援助や個人資金まで持ち出して、銃支持派の圧力に屈せず、銃の災厄をあばき続けている。

  • 6月号

    例えば酵素分子がどんな形をしているかは、その機能を知る上できわめて重要な情報だ。これまで、そうした分子の形や構造は、ほとんどすべて、X線結晶構造解析という手法で得られてきた。この解析法が、現代科学の多くを築き上げたと言っても過言ではない。しかし、この手法には、試料を結晶化しなければいけないという条件があり、微量だったり結晶化の難しい物質は対象外だった。ところが今回、「結晶スポンジ」という特殊な材料を使って、小さな分子でも少量の試料でも、規則正しく並べてX線構造解析ができることが証明された。日本の化学者が、またまた科学の画期的な1ページを開いたのだ。

  • 5月号

    動脈硬化はいわゆる現代病で、健康な古代人にはなかったと思われてきた。ところが、居住環境が異なる4つの古代ヒト集団のミイラをCTスキャンで調べたところ、全137体のうちの47体、つまり34%でアテローム性動脈硬化が見られたのだ。運動不足や飽和脂肪の多い食生活は血中の悪玉コレステロール値を上昇させ、アテローム性動脈硬化を起こし、動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中などの心疾患を起こすとされる。しかし、今回の成果は、こうした“常識”が誤りである可能性を示す。心疾患を予防できるという考え自体も、あるいは非現実的なのかもしれない。

  • 4月号

    イヌは、オオカミが家畜化された動物である。今回、スウェーデンの研究者たちは、オオカミ12頭とイヌ60頭のゲノムを比較し、イヌとオオカミの間でのみ違いが見られる遺伝子を洗い出した。その結果、36か所が得られ、うち19か所は、脳の発達や機能に関わる遺伝子だった。これらが、イヌに人なつっこい性格をもたらしたのであろう。さらに注目すべきことに、デンプンの消化を助ける遺伝子が、イヌでだけ見つかった。ということは、イヌが人間たちの残飯を消化吸収する能力を得たことが、家畜化の必須条件だったらしい。

  • 3月号

    太陽系からわずか190光年というすぐ近くで、宇宙誕生ビッグバン(137.7億年前)の直後に生まれた星が見つかった。これはHD 140283という恒星で、ほぼ完全に水素とヘリウムからできていて、古い星であること自体は昔からわかっていた。今回、ハッブル宇宙望遠鏡の「ファイン・ガイダンス・センサー」で太陽系との距離を精確に求め、さらにその固有光度を算出することで、139億歳±7億歳という最古の値が得られた。驚くべきは、この星が第二世代の星であること。つまり、第一世代の星が誕生して爆発し、次に第二世代ができるまで、わずか数千万年しかなかった計算になる。

  • 2月号

    2012年11月、米国の独立系研究機関BBRI(ボストン生物医学研究所)が、その44年間にわたる歴史に終止符を打った。2008年秋のリーマンショックの影響はなお大きく、米連邦政府の財政危機が続いており、それが米国立衛生研究所(NIH)の予算削減となっている。BBRIの場合、NIH からの助成金は、2010年の1000万ドル(約8.5億円)から、2012年の650万ドル(約5.5億円)、2013年の300万ドル(約2.6億円=予定)と急落、息の根を止めることになった。BBRIのほかにも、大学や企業に身売りする医学生物系の独立研究機関が相次いでいるのが、実態だ。

  • 1月号

    論文撤回について広範な調査研究が行われ、非常に残念なことに、生命科学系学術誌における最多の撤回理由は、ミスや重複発表ではなく、データの改竄や捏造を含む詐欺的行為であることが明らかになった。しかも、撤回論文数トップ10には、NatureSciencePNAS といった超一流誌がまくらを並べた。研究費から終身雇用権まで、科学者にとって、一流誌への投稿は高いインセンティブがあり、それゆえに不正行為を誘発している可能性がある。今回の調査をした研究者は、詐欺的行為への誘惑を下げる方策が必要だと指摘している。

2012年 | Volume 9

  • 12月号

    今年の4月11日、スマトラ島沖でM8.6とM8.2の巨大地震が連続して発生した。特に最初の地震は、史上最大の横ずれ断層地震であった。今回の地震は、どうやら、インドとオーストラリアが乗っている1枚のプレートが、この付近で分裂しつつあることを物語っているらしい。現在のインド・オーストラリアプレートは、北側のインドでユーラシアプレートとぶつかってヒマラヤ山脈を持ち上げ、その移動が遅くなっている。一方で、東側のスンダプレートとの境界には障害はなく、スムーズに前進を続けている。その結果、プレート全体に張力のねじれが生じ、中間の部分で引き裂く力が集中しているのだ。

  • 11月号

    レーザーは光通信に使われ、現在の情報社会の大黒柱となっている。レーザー技術の爆発的展開のきっかけとなったのが、1970年にベル研究所の林厳雄たちが実現した固体レーザーの室温発振だった。今回、歴史的にはレーザーの兄貴分にあたるメーザー(マイクロ波領域の指向性の高い電磁波)が、40年以上も遅れたが、ついに、室温発振に成功した。具体的な物質名は、ペンタセン分子分子をドープしたp-テルフェニルである。通信、電波天文学、分光学など、幅広い応用が期待されている。

  • 10月号

    アルツハイマー病患者は全世界で約3000万人いると推定され、高齢化社会の大きな課題の1つとなっている。そんな中、朗報がもたらされた。アイスランド人の全ゲノム配列と病歴を比較する研究によって、アルツハイマー病を抑える遺伝子変異が発見されたのだ。この変異は、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)を作る遺伝子の中にあった。この発見により、これまで疑われてきたアミロイドβが、まさにアルツハイマー病の根本原因であると特定され、今後、この物質を標的とした治療法の開発が加速されることになる。

  • 9月号

    指向性の高いX線光源は、結晶構造解析など材料科学や分子科学にとって必須の道具だ。現在は、放射光施設や自由電子レーザーなど、数百億円以上の大型施設のX線光源が主役を演じている。しかし、今回、小型のX線ビーム光源が開発され、注目を集めている(Science 336, 1287-1291, 2012)。今回の装置は高次高調波発生の原理から得られたもので、小型ゆえに光量は少ないものの、大型光源より短いパルスがすでに実現し、高速の「動画」を撮影することができる。当面は、大型光源と併用することで、新たな知見が期待されている。

  • 8月号

    福島原発事故を受け、X線CT診断など低レベル放射線の問題に関心が高まっているが、影響はきわめてわずかであり、ほとんど何もわかっていない。しかも、新たな動物実験を実施しようとしても、費用や時間などから不可能に近い。こうした中で、冷戦時代に行われた実験の組織標本に関心が集まっている。例えば旧ソ連のオジョルスクでは、1950年代初めから25万匹近い動物を使った照射実験が行われたが、国家の崩壊とともに、多くの標本資料が失われた。しかしいま、ヨーロッパの支援によって、実験データのデジタル化などの対策が進められている。

  • 7月号

    川崎病は、川崎富作博士が1960年に発見した病気で、主に5歳未満の乳幼児が罹患する。半世紀以上経過した現在も、その原因は不明だ。こうした中で、「川崎病の病原体は、中央アジアから日本へ、さらに日本から太平洋を渡って米国に、風に乗って運ばれているのではないか」という大胆な仮説が登場している。日本における川崎病の患者発生数は、北西から(中央アジアから)の風の風速とほぼ相関しており、感染症であることを示す有力な状況証拠といえる。インフルエンザなど、風で運ばれる病原体は他にも可能性がある。

  • 6月号

    教科書を書き変える大発見がなされた。これまで60年間の通説は、「ヒトの女性は卵巣内にすべての卵を持って生まれ、生後に、新たに卵が増えることはない」というものだった。ところが今回、マサチューセッツ総合病院の研究者らが、成人女性の卵巣から、卵を作り出せる幹細胞を発見したのだ。直接の発見者は、現在埼玉医科大学産婦人科にいる高井泰・准教授。今回の卵原幹細胞(OSC)の発見により、新しい不妊治療法はもちろん、生殖可能年齢の延長など、新たな道が開かれるのは明白だ。

  • 5月号

    放射性炭素14による年代測定は、考古学では不可欠の技術だ。約5万年前までであれば、土器や骨がいつ遺されたのか、正確に推定することができる。ただ、これには高エネルギー加速器を用いた高価な質量分析が必要だった。しかし今回、試料に赤外線レーザーを照射し、その「残光」を測定することで炭素14含有量を求める超高感度の測定法が考案・実証された。費用は数分の1ですむ。なお、この「残光」は、正確には飽和吸収キャビティリングダウン光と呼ばれ、この測定法は、炭素以外の同位体分析にも応用できる。

  • 4月号

    ケプラー宇宙望遠鏡の活躍はめざましく、とうとう、地球とほぼ同じ大きさの惑星を突き止めた(Nature 2月12日号)。ところが、このケプラー望遠鏡は、たまたま、恒星の振動(星震)をうまく観測できる条件を備えており、この幸運を利用して、はるか彼方の恒星の内部が、詳しくわかってきた。まず、星震データから、恒星の質量が、天体物理学の予想よりかなり低めであることが明らかになった。さらに、赤色巨星の観測により、水素がどこまで燃え尽きているのか、その進化段階を明確に把握することにも成功した。

  • 3月号

    2008年9月のリーマンショック以降、カリフォルニア大学の経営がますます悪化している。例えば学部学生の授業料は、3年半前に比べて2倍近くになろうとしている。あいかわらず日本では何十年も昔の「古き良き米国」しか伝えられないが、そろそろ「米国の真の大学事情」を直視すべき時であろう。カリフォルニア大学は米国を代表する公立大学で、医学のサンフランシスコ校やデービス校、理工学のバークレー校、材料科学のサンタバーバラ校など、10のキャンパスを抱える。これまで、危機に直面しても大学院レベルの研究や教育の水準は維持されている、というのが大方の見方だった。しかし今回の報告によると、有名教授が逃げ出したり、研究室が雨漏りしたり、アルバイトが減って3割も院生が減った学科さえあるという。

  • 2月号

    11月26日に打ち上げられた米国の火星探査機マーズ・サイエンス・ラボラトリーは今、火星に向かって旅を続けており、8月下旬には火星周回軌道に到着する。搭載されている探査ローバー「キュリオシティー」には、今回も、MSSS社による3つのカメラシステムが積み込まれた。この会社は従業員わずか30名の小企業にもかかわらず、火星探査カメラに関して、20年以上もNASAから独占的に受注してきた。同社を率いるのが天才マイク・マリン博士だ。有名な火星で堆積作用が見られる画像、現在も水が流れている可能性がある画像、巻き上がる砂嵐の画像など、すべてマリン博士の優れたアイデアとレンズ設計技術による成果だった。彼の卓越した能力とユニークな性格が、初めて紹介される。

  • 1月号

    14世紀半ばのヨーロッパでは凶悪な「黒死病」が蔓延し、膨大な死者が出た。例えばロンドンでは、当時の市民10万人のうち、約1/3が死亡したとされる。この黒死病が何であったのか、これまでさまざまな研究が行われ、「ペスト説」が有力視されてきたが、確定したわけではなかった。今回、ロンドン塔付近の教会の墓地だった場所から発掘された遺骨をもとに、最新の次世代シーケンサー技術によって、当時流行したペスト菌の全ゲノムが解読された。なかでも驚きは、ペスト菌が今日まであまり変化(進化)していないこと、凶暴であった理由が見当たらないことだ。

2011年 | Volume 8

  • 12月号

    パーキンソン病は運動能力などを失っていく難病で、ドーパミンやアセチルコリンなどが関係する神経変性疾患だ。この病気の治療法として、胎児由来神経細胞の移植など、新しい外科的な方法がいろいろと試みられてきた。こうした治療法の有効性を判断する時、二重盲検法の代わりに「偽手術」という手法がよく使われる。これは、目的の手術と全く同じ手続きを踏み、その薬剤なり組織なりを移植しない点だけが異なる。しかし、パーキンソン病のような疾患の場合、手術を受けたことで治癒への期待が高まり、患者のドーパミン分泌が増えるなどのプラセボ効果がかなり見られる。プラセボ効果を排除しようとする科学性と、実際の治療効果を求める患者の意志は、時としてぶつかることがある。

  • 11月号

    学名ホモ・サピエンスは「知恵のある人」という意味だが、あやしい個体や集団は多い。類人猿が知恵を持たないと断定するのも難しい。ところが今回、ヒトの特徴をもっとよく表す性質が明らかになった。それはなんと、仲間と一緒に作業をすること(共同的)と、獲得物を気前よく分け与えることなのだ。実験では三歳児のペアにおもちゃを与え、どちらかがそれを手にするまでに、(1)共同作業が必要、(2)労せずして手に入る、(3)単独作業、のいずれかになるようにした。すると、共同作業で手に入れたおもちゃは、明らかに、2人で分かち合って遊んだのである。ヒトは三つ子の時から、仲間と共有することの大切さを身につけているようだ。

  • 10月号

    スリムな体型が求められる俳優やモデルの間では、肥満への恐怖から禁煙できない人も多いという。実際、10kg以上の体重急増も珍しくない。こうした中で、今回、マウス実験ではあるが、ニコチンが食欲抑制効果を及ぼす脳内分子標的「MC4受容体」が明らかになった。ニコチンは、視床下部のPOMCニューロン上の別の受容体を活性化し、そこからMC4受容体を活性化、食欲を抑制する。一方、逆に作用する神経経路もあって、それが食事制限による減量でリバウンドしやすい原因となっている。

  • 9月号

    コンピューターウイルスやサイバー攻撃は、確かに暴力的な一面はあるものの、基本的に、障害を与えるのは情報のレベルにとどまっていた。ところが、とうとう、実際の器械を壊したり爆発させたりするウイルス(マルウェア)が登場した。これはStuxnetと命名されたが、目的は例のイランの核施設を破壊するためらしく、実に巧妙に作られている。非常に大きなプログラムで、その規模と仕組みからすると、政府機関の関与が強く疑われる。いよいよ、ネットの世界で本格戦争が始まったようだ。

  • 8月号

    私たち人間は、重力加速度1Gの地上で平和な生活を送っている。だが、もし重力加速度が変化したらどうなるだろう。数十秒間なら2G程度には耐えられるとされるが、長期間だと1.25Gでも失神してしまう。ところが、ある種の一般的な土壌細菌や大腸菌は、実に40万Gという超高重力加速度の環境において、長期間生息できるだけでなく、増殖して子孫も殖やせることを実験的に証明された。海洋研究開発機構の出口茂さんたちの研究だ。40万Gという極限環境は、中性子星などでもありえず、生命起源の問題にも一石を投じている。

  • 7月号

    がん死亡患者の90%に転移が見られるという。つまり、がんで最も恐ろしいのが、別の部位への転移である。ところが、その転移の仕組みそのものについて、現在の理論に重大な疑問が投げかけられた。ポイントは、がんが移動能を持つようになる上皮間葉転換(EMT)のところだ。カリフォルニア大学の病理学者によると、数百万枚にも及ぶヒト病理組織切片に、このような細胞は全く観察されていない、という。ということは、転移の本質は別の仕組みにあるのかもしれない。いずれにせよ、待たれるのは、転移の現場をずばりと捕らえることだ。

  • 6月号

    始祖鳥の化石発見から150年、鳥類は恐竜から進化したと考えられてきた。しかし100%認められていたわけではない。発生学によれば、恐竜の前肢の3本指と、鳥類の翼部分にある前肢3本指とは、それぞれ由来が異なるように見えるからだ。親指から1-2-3番目が残ったのが恐竜で、鳥類では2-3-4番目が残ったように見える。ところが今回、東北大学大学院の田村宏治教授らが、ニワトリの発生過程でZPA細胞との相対位置を詳しく追跡し、間違いなく1-2-3指であることを確認した。こうして鳥類の進化論争についに終止符が打たれた。

  • 5月号

    眼の光受容器といえば、つい10年前まで、桿体細胞と錐体細胞だけと考えられてきた。現にウィキペディアなどでもなおそう記述されている。ところが現在では、第三の光受容細胞(ipRGC)の存在が明らかになっており、いま、視覚の世界で知識革命が進行中だ。例えば青い光を当てた被験者のほうが、音への反応時間が速くなるという報告も登場し、青色LEDなどの新しい照明器具が生体に及ぼす影響の研究も始まっている。

  • 4月号

    液晶ディスプレイの透明電極など、酸化物エレクトロニクスの研究が大きな展開を見せている。その代表選手ともいえるチタン酸ストロンチウム(STO)で、極めて興味深い性質が明らかになった。なんと、結晶をへき開、つまりただ割るだけで、表面が導電状態になったのだ。物理学の新たな謎、工学の新しい可能性が生まれたわけだ。

  • 3月号

    米国食品医薬品局(FDA)が昨年秋に承認した乳がん治療薬エリブリン(商品名ハラヴェン)が、天然物合成化学の威力を再認識させている。日本のエーザイ(株)が申請していたエリブリンは、もともと、海綿動物クロイソカイメンから単離されたハリコンドリンBが出発点であり、その全合成を成し遂げたのがハーバード大学の岸義人名誉教授らだ。

  • 2月号

    脳梗塞は脳血管がふさがって起こるが、直後に手術すれば、ダメージは劇的に改善されるようになってきた。しかし、時間が経った患者では、依然として大きな障害が残る。今回、マウス実験ではあるが、朗報となる成果が得られた。GABAを介した「持続性抑制」を減らすことによって、損傷3日目でも、回復が有意に改善されたのだ。

  • 1月号

    DNA二重らせんモデルを構築し、20世紀後半からの生物学革命を引き起こしたワトソンとクリック。そこに至るまでに、クリックらのケンブリッジ大学グループと、ウィルキンズやロザリンド・フランクリンなどのロンドン大学グループ、そしてポーリングなどが、複雑に関係している。今回発見された書簡は、彼らの生き生きとした人間模様を教えてくれる。

2010年 | Volume 7

  • 12月号

    民間の研究助成団体である「米国がん協会」の審査委員会に、Natureの記者が潜入。助成申請書が、どのような評価プロセスを経て採用・不採用になるかが、明らかになった。限られた資金の中で、誠実な評価に基づき、優れたテーマを選び出すのは容易ではない。特に当落線上にある申請の場合、審査委員は、申請者の研究キャリアの命運をも握っているからだ。

2009年 | Volume 6

2008年 | Volume 5

2007年 | Volume 4

2006年 | Volume 3

2005年 | Volume 2

2004年 | Volume 1