2010年9月号Volume 7 Number 9
音楽教育が、脳の認知機能を向上させる
ノースウェスタン大学の研究者が、「音楽教育は、認知機能を広く向上させる方向に脳を変化させる」と発表した。音楽教育は、単に脳の聴覚系を変化させるだけでなく、記憶力、協調性、注意力など、一般的な脳機能も高めてくれるわけだ。ただし、心を豊かにし、社会性や人間性をはぐくむ、音楽教育の本来の意義を忘れてはいけない、と研究者は指摘している。
Editorials
生物多様性に関する国際的枠組み
生物多様性の問題に関しても、独立した国際的な科学委員会を設立すべきである。これによって、緊急性の高いテーマに関する研究活動を調整し、研究内容を社会に紹介する役割を果たせるだろう。
News in Japan
世界最高の蓄電ナノ材料を開発
東京農工大学大学院の直井勝彦教授の研究グループは、リン酸鉄リチウムを使って特殊なナノ構造を構成し、高出力のリチウムイオン電池用正極材料の開発に成功した。放電容量は世界最高の131ミリアンペア時/グラム(1分放電)で、従来のマサチューセッツ工科大学グループの結果1を3割以上も上回る。この成果は、国際電気自動車シンポジウムAABC2010と国際キャパシタ会議ICAC2010で発表された。
News Features
業績評価は採用・昇進に影響するか?
発表論文数、獲得助成金額といった定量的業績評価は、本当に、研究者の採用や昇進の際の判断基準となっているのだろうか。少なくとも応募する側の研究者はそう信じている。Nature は、独自のアンケート調査とインタビューを通じて、実際にどの程度利用されているかを探った。
深海 ― 死と再生のハーモニー
海底火山の噴火は、そこに暮らす生命に壊滅的なダメージを与える。だが、時としてその「死の世界」は、新しい生命を生み出す「再生」の舞台となる。
創立350周年を迎えた英国学士院
世界の国立科学アカデミーの祖である英国学士院は、2010年に設立350周年を迎え、6月下旬から10日間にわたって大規模な祭典を開催した。各国のエリート学術団体と同じく、英国学士院も、その存在意義と影響力を維持するために、さまざまな努力を重ねている。
Japanese Author
野生植物が複雑な季節変化を 感じ取る仕組み (工藤洋)
植物は、温度や日長の変化を感知して、ほぼ決まった季節に花を咲かせる。ただし、自然の気温変化はあいまいで、春なのに真冬日に逆戻りといったこともしばしば起きる。植物はこうした「季節の誤差」をどのようにとらえ、どのように処理しているのか。工藤洋博士らによって、そのメカニズムの一端が解明された。
News & Views
もう1 つのヒトゲノム
ヒトのマイクロバイオーム(microbiome) を解析するための基礎的研究として、「人体に常在する微生物全体の集合ゲノム」の塩基配列解読が行われた。この研究は、ヒトの健康と疾患の両方を理解するのに重要だ。
超新星は2つの顔をもつ
星の死に方は、これまで考えられていたよりも種類が少ないことがわかった。以前は異なるタイプと考えられていた2種類の超新星は、新たな観測データと既存の観測データの分析から、実際には1つのいびつなコインの裏表だったことがわかった。
Career
幸せな研究者、不幸せな研究者
Nature では今年、世界各国の研究者を対象に、研究環境についての満足度調査を行った。確かに日本などは、満足度を低く見積もる国民性があり、データをそのまま受け取ることは避けたい。しかし、例えば、研究者が仕事に対して感じる満足度は給与以外の要素によっても大きく左右されるなど、全体的な傾向は各調査項目からうかがい知ることができる。
英語でNature
有機農法のほうがジャガイモの害虫防除の効果が高い
生態系の機能に関して、生物種の数(種の豊富さ)だけでなく、各生物種の個体数の分布(種組成の均等さ)も重要である理由がみえてきた。
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