目次

Volume 6 Number 72009年7月号

Editorial

 サイバーセキュリティー強化の牽引役

世界は今、コンピューターと通信網の安全性を確保するために、より強力なリーダーシップを発揮する存在を待ち望んでいる。それには研究機関も含まれる。

News

 太陽光発電世界一へ、返り咲きめざす日本

日本では現在、数万戸の個人住宅や店舗兼住宅が、その屋根に新しい太陽電池パネルを設置するための準備を進めている。その誘因となった4月からの助成金制度は、日本が太陽エネルギー分野でかつて占めていた指導的な立場を取り戻すという、日本の政策立案者の威信をかけた取り組みの第一歩だ。

 FANTOMが細胞内の分子ネットワークを見渡す

ある国際的なコンソーシアムが、未成熟な細胞を分化させる遺伝子とタンパク質を、前代未聞の規模で詳細に分析し、その結果を公表した。このデータセットにより、細胞の種類を決定する分子ネットワークが飛躍的に解明されるかもしれない。これは、システム生物学における長年の目標であり、おそらく幹細胞治療の実現に向けて重要なステップとなるだろう。

 fMRIの解析方法に要注意

有力な専門誌に発表された2008年の神経画像関係の研究論文のほぼ半数に、意図せずに偏ってしまったデータが紛れ込んでおり、科学的結論が歪められるおそれがある、と米国立精神衛生研究所(メリーランド州ベセズダ)の科学者が報告した。

News Features

 100歳を迎えたレビ-モンタルチーニ女史

リータ・レビ – モンタルチーニは、間違いなく、20世紀を代表する科学者の一人だ。あえて女性科学者と強調する必要もない。1950年代に彼女が格闘した神経成長因子(NGF)の発見と単離によって、その後の生命科学は、大きな新しい道が開かれた。神経細胞は成長して複雑なネットワークが形成されていくが、「なぜ、どのように?」という根本的な問いかけが、彼女の仕事から始まったのだ。 共同研究者S.コーエンとの成果がいかに偉大であったかは、今日隆盛をきわめる脳科学・神経科学が明快に物語っている。いわゆる成長因子はその後、さまざまなものが発見され、それらの受容体も含めて、精妙な細胞間の相互作用の仕組みが解明されつづけている。2人は1986年にノーベル医学生理学賞を受賞した。 2009年4月22日に100歳の誕生日を迎えたリータ。戦前に女性が学問の道に進むこと、ムッソリーニの時代にユダヤ人として過ごすこと、アメリカで厳しい研究競争に打ち勝つこと、いずれも想像を超える苦闘があったはずだ。そしていま、イタリアの“国の宝”として尊敬を集め、上院終身議員の地位にある。100歳を超えて現役をつづける彼女の生き方は、私たちに限りない希望と勇気と教訓を与えてくれる。(編集部)

 インフレーション理論のゆくえ

欧州宇宙機関(ESA)が5月14日に打ち上げたプランク衛星は、ビッグバン直後に宇宙が急激に膨張したとするインフレーション理論にどのようなインパクトを与えるのか。Eric Handが報告する。

Japanese Author

 メタゲノム解析で海洋資源を生かす(竹山 春子)

土壌や海水に含まれる多種多様な生物のDNA断片を、一括してシークエンスする「メタゲノム解析」に注目が集まっている。分離・培養が難しい微生物のゲノム情報や遺伝子配列を、直接得ることができるからだ。その中には、環境保全や工業、医療などに生かせるものも多いと考えられる。早稲田大学理工学術院の竹山春子教授は、メタゲノム解析によってカイメンやサンゴに共生する微生物のゲノム情報を洗い出し、有用な遺伝子の探索や機能解析、データベース化などを進めている。

News & Views

 ホモ・フロレシエンシスを検証する-頭からつま先まで

フローレス島で見つかった古代の小柄な人類化石は、大きな論争を巻き起こし、さまざまな憶測をよんできた。今回、足の構造解析により、この化石が本物の人類の「種」であることを示す証拠が得られた。それは意外にも、小型化したカバに関する解析からも裏付けられている。

 太古の地球のシステム化学

地球上に生命が出現した経緯の解明は、現代化学にとって大きな課題の1つである。しかし、RNA合成の視点を少し変えれば、この難題を回避できるのだ。

Nature Highlights

 ハイライト

News

 サリドマイドが作用する仕組み

胎児の血管新生に薬剤が及ぼす作用が、手足の形成異常の原因とみられる。

 永久凍土の融解で莫大な量の二酸化炭素が放出される

アラスカでの3年の実験で、永久凍土の融解による二酸化炭素の収支が報告された。

英語でnature

 糖尿病のマウスモデルに問題が見つかる

厚生労働省の平成18年国民健康栄養調査によれば、「糖尿病と強く疑われる人」は820万人、「糖尿病の可能性が否定できない人」は1050万人にも及びます。生活習慣病の1つ、糖尿病。放っておくと、深刻な合併症を引き起こし、死につながる危険性があります。今回は、糖尿病に関連するタンパク質がマウスには存在せず、マウスを使った糖尿病実験に問題があるかもしれないというニュースを取り上げます。これをきっかけに、ちょっと食生活を考え直してみませんか。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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