2008年2月号Volume 5 Number 2
Editorials
Nature Geoscienceの創刊を歓迎して
ここにきてようやく、世界の人々は、人間が地球環境に与えた打撃がもたらす脅威に目を向けるようになった。しかし人間は、地球環境に与える打撃を軽減することもできる。そのためには、あらゆるレベル、あらゆるタイムスケールで、地球の構造と力学を理解しなければならない。
News Features
深海に光をともす
海面のはるか下、太陽光の届かぬ深海に棲む動物にも眼がある。光なき世界の視覚についてMark Schropeが取材した。
慈善後進国、日本
日本人は慈善団体への寄付をほとんど行わない。寄付に消極的な日本の風潮を変えようと活動を続ける科学者や患者支援活動家を、David Cyranoskiが取材した。
Japanese Author
マグネシウムイオンの通り道と輸送システムを解明!(濡木 理)
哺乳類では、全遺伝子の約1割が、受容体やチャネルなど、タイプのタンパク質を作り出すためにあると考えられている。こうした膜タンパク質は極めて重要でありながら、試料の調整や結晶化がむずかしいことから解析がうまく進んでいなかった。今回、東京工業大学大学院命理工学研究科の濡木 理教授は、マグネシウムイオンを輸送するMgtEという膜タンパク質の構造解析に成功し、マグネシウムイオンの認識システムや輸送システムも解明した。詳細は、Nature 2007年8月30日号で発表された。
News & Views
ビーナス・エクスプレスからの第一報
ビーナス・エクスプレス・ミッションから、地球の姉妹惑星である金星の過酷な大気に関する最初の報告が届けられた。我々は、金星の大気が地球の穏やかな大気とまったく違ったものになった原因の解明に向かって、また一歩前進した。
光子バスに乗る量子ビット
電気回路をまるごと使っての量子力学など、実現の可能性はないように思われるかもしれない。けれども、超伝導状態にある電気回路を利用すれば、原子が光子を放出したり吸収したりするのと同様に、しかもそれ以上の効率で、単一の光子を送ったり捕らえたりすることが可能になるのである。
p53の思いがけない役割
p53タンパク質は腫瘍抑制因子として、がんを防ぐ機能が詳しく研究されている。このタンパク質が、マウスにおける胚の着床の制御に不可欠な生理的役割も果たしていることが明らかになった。
Japan News Feature
日本の未来を握る海底熱水鉱床
日本近海の深海底には、世界でも屈指の海底資源が知られている。地震や火山を生み出す厳しい環境が、同時に海底資源という恵みを生み続けてきたのだ。一方で、日本を支える機械産業やハイテク分野に欠かせない金属資源が世界的に高騰の兆しをみせている。海底資源開発が日本の命運を握る。
Naturejobs
過剰気味なポスドクの進む道
ポスドク(博士号取得後の任期付き職)が数千人単位で増え、研究者の余剰という問題に取り組む日本の現状を、Heidi Ledfordが報告する。
英語でNature
謎の雲の正体が明らかに
冬になると、アラスカや北欧などの緯度の高い地域では、オーロラが現れます。夜空にゆらめく幻想的な光のカーテンをみるために、数多くの観光客が集まります。 今回は、そのオーロラとは対象的に、夏にみられる「夜光雲」という現象についての記事を取り上げます。夜光雲はその名のとおり、夜に光るという特殊な雲のことですが、近年では、地球温暖化との関連も指摘されています。右ページのTopicsに目を通してから、英文を読んでみましょう。