2025年9月号Volume 22 Number 9
予防接種不安を解消する対話術
COVID-19のパンデミック期に、55カ国中52カ国で「子どもにワクチンは重要」という認識が低下した。こうしたワクチンへの疑念に対しては、批判せず傾聴し、科学的根拠や個人の体験を伝える対話法や医療従事者による動機付け面接など多面的アプローチが有効であることが明らかになっている。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「人口急増がトコジラミを害虫に」「ナイジェリアのセンザンコウが狙われる理由は鱗ではなく味」「キバタンの群れで蛇口をひねって水を飲む技術が広まる」「イエローストーンでの熱水爆発のタイミングを特定」、他。
News in Focus
「竜人」は実はデニソワ人だった!
骨のタンパク質と歯石に含まれていたDNAの解析によって、中国で発見され、新種の人類「ホモ・ロンギ」のものとされていた頭蓋化石がデニソワ人のものであったことが判明し、その外見の特徴が明らかになった。
脳は免疫細胞の力を借りて腸を監視している
脳の中心部で新たに免疫細胞が発見され、腸や脂肪組織に関する情報を脳へと運ぶ監視部隊として働いていることが明らかになった。
目を閉じていても赤外線が見えるコンタクトレンズ
SFのような技術は、ナノ粒子を使って、赤外線をヒトが見ることのできる可視光へと変換する。
神経技術の倫理に関する原則が研究者により策定された
脳活動を読み取るデバイスの倫理に関するユネスコの専門家会議で、プライバシーを保護するための国際的な指針の文案が作成された。
AIボットによるウェブスクレイピングで学術データベースや学術誌に混乱
AIツールを訓練するためにデータを収集する自動プログラムの活動が増加し、学術サイトの運営に支障が出ている。
「転換ペナルティー」:研究分野を変えると被引用数が減少する
2600万本近い研究論文の調査により、研究者が新たな研究テーマに挑戦することがもたらす影響が測定された。
解雇されたデコード社の創業者:「私を従わせるのは難しかったということ」
2025年5月にアイスランドのゲノミクス企業デコード社を去ったKári Stefánssonが、自身のレガシーについてNatureに語った。
Features
抗肥満薬で減った体重を維持するには
副作用、費用、供給不足などの理由で、抗肥満薬であるGLP-1受容体作動薬の使用を中止せざるを得ない数千万人もの人のための選択肢が出てきている。
予防接種に懐疑的な人々をどう説得するか
予防接種をためらう人が増えつつあるが、人々の疑念を払拭するための具体的な方法が研究で明らかにされている。
コロナ禍を経ても下火にならない危険な野生動物売買
生きた動物を売買する市場は、ウイルスを進化させて致死的な感染症のアウトブレイク(集団発生)を引き起こす自然の実験場のようなものであるが、科学者らはそのリスクを研究するための支援を受けられずにいる。
「米国を再び健康に」。そのために本当に必要なもの
米国人の平均余命は、同程度に豊かな国々の多くと比べて短い。その原因の一部は慢性疾患だが、銃、薬物、自動車も原因だ。
Japanese Author
Free access
現在進行中の進化を野外で研究する
学生時代、山で出合った植物、ミヤマハタザオ。シロイヌナズナに似ているが形態も分布も違う。この植物を使えば、現在進行中の進化を検証できるのではないか。そうひらめいた清水健太郎(現・チューリヒ大学教授)は、分子生物学を野外の植物の研究に適用し、進化ゲノム学を推し進めてきた。
News & Views
免疫細胞でのY染色体喪失ががんを促進する
Y染色体の喪失が見られる腫瘍は予後不良である。Y染色体喪失についてがん細胞と免疫細胞の関連性が調べられ、考えられる機構がいくつか示された。
デジタル構築マスクによる絵画修復
絵の具の欠落箇所をデジタル再構築して着脱可能なマスクに印刷することで、損傷した絵画を視覚的に復元する方法が報告された。
Advances
ウミガメの磁気マップ
ウミガメの秘めた磁気能力を明らかにするのに彼らのダンスが役立った。
Where I Work
James Bradley
James Bradleyは、地中海海洋学研究所(フランス・マルセイユ)の地球微生物学者。
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