2017年8月号Volume 14 Number 8
偽造試薬と戦う中国
偽造試薬の一大市場となっている中国。その製造・供給ルートには、近所の印刷店など予想だにしない人々が関与していることが分かってきた。サプライチェーンに組み込まれた彼らは、そうとは知らずに誠実に仕事をしているだけであり、法的制裁はそぐわない。そして、中国のニセ試薬は国内にとどまらず、科学界全体に波及し始めている。この問題への対抗策として、中国の研究者や試薬製造企業が始めた取り組みとは・・・・・・。
Editorial
Research Highlights
プラスチックを消化するイモムシ
プラスチックを消化するハチノスツヅリガの幼虫をヒントに、生物工学的なプラスチック分解方法が開発されるかもしれない。
News
薬の効果を左右するのはマイクロバイオーム?
一部の患者で治療薬が効かなかったり副作用が出たりする理由は、腸内細菌や腸内細菌が産生する酵素によって説明できるのかもしれない。
ホモ・サピエンスの歴史を書き換える化石を発見か
モロッコで、31万5000年前のホモ・サピエンスと見られる人骨が出土した。この発見はホモ・サピエンスの起源を10万年さかのぼらせ、我々が進化した地がアフリカ東部に限らなかったことを示唆している。
二次元の磁石が誕生!
原子1個分の厚さのシート状磁石が得られたことで、これまでは不可能だった数々の実験が可能になると期待される。
欧州の10億ユーロの量子技術研究計画
欧州は総額10億ユーロの量子技術研究計画を打ち出し、徐々に具体化しているが、課題も残っている。
新疆でDNA情報収集を加速させる中国
新疆ウイグル自治区の公安庁がDNAシーケンサーを多数購入したことが分かった。中国政府の思惑をめぐり臆測が飛び交っている。
がん治療に役立つ細胞地図
「免疫細胞ガイド」で、適切な治療法が選択可能になるかもしれない。
著作権侵害に対して新方針を打ち出す学術出版社
学術論文の出版社は、有料論文の「公正な共有」を可能にする方法を話し合っている。
News Feature
偽造試薬と戦う中国
中国は偽造試薬の一大市場となっている。この状況に、一部の科学者が戦いを挑んでいる。
Japanese Author
Free access
食虫植物の進化がゲノム解読から明らかに
植物なのに虫を捕らえて食べる「食虫植物」。この不思議な生き物は、一体どのように進化してきたのだろう。このほど、長谷部光泰・自然科学研究機構基礎生物学研究所教授と、当時大学院生として長谷部研に所属していた福島健児さん(現 コロラド大学研究員)らは、食虫植物フクロユキノシタのゲノム配列を明らかにし、さらに捕らえた虫を分解する消化酵素の進化について解明して、Nature Ecology & Evolution 3月号に発表した。食虫植物の進化の謎解きに挑むお二人に聞いた。
News & Views
クエーサーは大質量銀河の目印
クエーサーと呼ばれる非常に明るい天体の近傍の調査は、初期宇宙ではこれまで不十分だった。アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を使って行われた観測で、初期宇宙のクエーサーの周辺には、初期宇宙で最も大質量の銀河たちの一部が存在していることが分かった。
がん再発を早期探知できる液体生検
肺腫瘍の進化に関するゲノム情報が血液から得られることが実証され、がん再発の初期兆候の臨床モニタリングが可能なことが報告された。プレシジョン(高精度)医療への有望な一歩だ。
News Scan
植物は聞こえている?
水の音や虫が葉を食べる音を検知できている可能性も
ロケット材料が熱い
微細な“けば”つき繊維によって強度を大幅にアップ
Advertisement