2016年2月号Volume 13 Number 2
遺伝子ドライブでマラリアと闘う
毎年約60万人が命を落とすマラリア。2000年に始まった国際的な取り組みでその数は減少したものの、今も約32億人が感染の危険にさらされており、温暖化による感染地域拡大も懸念されている。一方、蚊の遺伝学に基づいた研究では、マラリア伝播を防ぐ遺伝子を媒介蚊に組み込むことに成功していたが、自然界に迅速に広める方法がなく実用的とは言えなかった。突破口を開いたのは、2015年1月まで机上の空論と考えられていた「遺伝子ドライブ」だ。このたび作出された「遺伝子ドライブ蚊」はまだ論議が必要な段階ではあるが、マラリア根絶は夢ではないかもしれない。
Editorial
News in Japan
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生命誕生のカギを宇宙に探す新拠点誕生!
20年先の自然科学研究を考える自然科学研究機構(NINS)に、「アストロバイオロジーセンター(ABC)」が誕生した。2015年4月に創設され同年11月20日に開所式を迎えた同センターは、系外惑星探査を主軸に生物学、生命化学、地球物理学などとの融合研究を行い、宇宙における生命誕生と進化の謎に挑む。キャンパスは、東京都三鷹市にある国立天文台に構えている。
News Features
とっておき年間画像特集2015
NASAの探査機ニューホライズンズが太陽系外縁部から送ってきた冥王星の画像は、さまざまなメディアで大きく取り上げられ、見る人を魅了しました。Natureは、2015年に得られた数々の科学や自然現象の画像の中から、特に感動と驚きをもたらしたものを選びました。冥王星はもちろんのこと、まるで怪獣映画の1シーンのような動物の争いや可視化された衝撃波、肉眼では見ることのできない生物や物質の精細画像などをお届けします。
ヒトゲノム編集の世界情勢
ヒト胚の利用や改変に関する世界各国の規制状況を俯瞰することで、ゲノム編集技術を使った最初の「CRISPR(クリスパー)ベビー」が誕生しそうな国が浮かび上がってきた。
News & Views
酸化ストレスはがんの遠隔転移を抑制する
活性酸素は、細胞にストレスを与え、がんのイニシエーション(発がんの第一段階)を促進すると考えられてきたが、今回、がんの転移を防ぐという有益な作用も持っていることが明らかになった。
「多孔性液体」が誕生!
多孔性固体は化学工業では極めて有用な材料で、研究が盛んに行われてきたため、すでにさまざまな種類の多孔性材料が数多く開発されている。そこへ、液体でありながら永続的に空孔を維持することのできる画期的な新材料「多孔性液体」が加わることとなった。
News Scan
バイソン流の民主主義
野牛の群れは行き先を多数決で決めている。
転移するがん細胞は増殖しない
がん治療に新たな視点。
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