2016年9月号Volume 13 Number 9

iPS細胞の10年

成体マウスの皮膚細胞に4つの遺伝子を導入すると、胚性幹細胞のような見かけと振る舞いの細胞になる。2006年6月の国際幹細胞学会で山中伸弥博士が報告した細胞の再プログラム化手法に、皆、度肝を抜かれた。胚性幹細胞につきまとう生命倫理上の問題なしにどんな細胞でも生み出せる人工多能性幹(iPS)細胞の登場から10年、医療への応用はコストと安全性の壁に阻まれているが、医学生物学研究ではすでに世界を大きく変えつつある。今や、疾患研究や薬剤スクリーニングに欠かせない存在となっているのだ。

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長田重一大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授は、アポトーシス(プログラム細胞死)の分子メカニズムの解明など、すばらしい業績を残してきた。いくつもの論文が引用ランキングに並ぶ。その始まりは、1980年に成功したインターフェロンα遺伝子のクローニングだった。
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Editorial

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Research Highlights

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News in Japan

「日本ではこれまで老化の研究、特に基礎研究にしっかりとした予算はついてきませんでした」と、文科省ライフサイエンス課担当課長補佐は説明する。従来から重点が置かれてきた研究領域は、がん、ゲノム、脳科学など。今回、老化研究もそれらと並び、日本社会にとって重要であるという判断が初めてなされたといえる。

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News Feature

人工多能性幹(iPS)細胞は、医療革命の訪れを告げる使者だと考えられた。しかしその発見から10年経った現在、iPS細胞はむしろ生物学の研究を大きく変えるツールとなりつつある。

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Japanese Author

地球の中心部は、「固体の鉄合金からなる内核」を「液体の鉄合金からなる外核」が覆った構造をしており、その物性が磁場形成やプレート運動などのカギを握っている。東京工業大学理学院地球惑星科学系の太田健二講師は、外核に相当する157万気圧、4500Kもの超高圧高温環境を作り出し、鉄の電気伝導度を測定することに成功した。実測というインパクトとともに、「約7億年前」と導き出された内核形成の時期が、新たな議論を呼んでいる。

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News & Views

受精、つまり精子と卵の結合は、精子のIzumo1と卵のJunoという2種類の細胞表面タンパク質が仲介する。それぞれのタンパク質について行われた構造解析と、Izumo1–Juno複合体の構造解析から、認識過程とそれに続く精子–卵融合についての手掛かりが得られた。

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News Scan

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