2017年9月号Volume 14 Number 9
研究助成金獲得の秘訣
世界的に見て研究助成は縮小傾向にあり、助成金獲得競争は激しさを増している。Nature は米国立衛生研究所(NIH)の助成金交付データと獲得熟練者の話をもとに、助成金獲得に有効な戦略や、よくある助言のうち無視すべきものを探った。このたびの調査結果は、世界中のどの助成金申請にも当てはまり、特に若手研究者やキャリア初期の研究者にとって役立つはずだ。
Editorial
Research Highlights
ネコの「世界征服」の始まりは新石器時代
200点を超えるネコの遺物や標本から、ネコが世界に分散し始めた時期と場所が明らかになった。
News
深い海のサンゴが光る理由
浅海のサンゴとは全く異なる構造の赤色蛍光タンパク質を利用して、光を光合成用に最適化していることが分かった。
ローマン・コンクリートの耐久性の秘密
古代ローマのコンクリートは2000年以上持っている。その理由は、希少鉱物を生成する化学反応の賜物であることが分かった。
ゲノム編集技術で生細胞DNAに動画を保存
生きた細胞のゲノム内に動画を記録できることが大腸菌で実証された。
Droshaは昔、ウイルス防御機構だった?
脊椎動物細胞の核内で遺伝子発現の調節を行っているDroshaが、ウイルス感染に応答して細胞質内に出ていくという奇妙な現象が観察された。研究チームは、このタンパク質がかつてはウイルスと戦っていたと考えている。
Free access
音波探査がプランクトンに死をもたらす
沖合での石油や天然ガスの探査で発せられる強力な音波が、動物プランクトンの命を奪うことが示された。この影響が及ぶ範囲は従来の想定をはるかに超えており、海の生態系を支える微小な動物たちの死によって、魚類や頂点捕食者へも悪影響が及ぶ恐れがある。
中性子星の核心に迫るNICER
NASAが打ち上げた中性子星観測装置NICERが、宇宙で最も高密度な物質の内部を初めて覗き込む。
コロナウイルスの自然宿主はやっぱりコウモリ!
ヒトで危険な感染症を引き起こすことで知られるコロナウイルス。このほど、どの動物からヒトに伝播するかが明らかになり、伝播を予測するための研究が一歩進んだ。
ミイラDNAが示す古代エジプト人の祖先
遺伝子解析により、古代エジプト人はサハラ以南のアフリカの人々ではなく中東の人々と近縁だったことが明らかになった。
中国がフェイク査読取り締まりを強化
中国の研究助成機関は、論文捏造に対する厳罰化および取り締まり強化を発表した。
Free access
TOOLBOX: 科学者とソーシャルネットワーク
近頃、研究者向けの巨大なソーシャルネットワークが急速に拡大している。ほんの数年前には想像できなかったような活況の理由を探るため、Natureはアンケート調査を実施した。
News Feature
研究助成金獲得の秘訣
研究助成金をめぐる競争はこれまでにない激しさになっている。Natureは助成金獲得の熟練者に話を聞き、データを徹底的に調べて、どのような戦略が有効で、よくある助言のうちどれを無視するべきかを探った。
Japanese Author
加熱しても冷却してもできる超分子ポリマー
プラスチックなどポリマーは温度が上昇するとバラバラになるという常識を覆し、加熱すると結合(重合)する「超分子ポリマー」の開発に、理化学研究所の宮島大吾上級研究員、相田卓三グループディレクターらの研究チームが成功した。分散した状態で冷却しても同様の重合が見られ、新たな材料開発に道を開くものとして注目される。6月26日付Nature Chemistry電子版に掲載された1。開発の背景、今後の研究の方向性などについて、研究を中心となって進めた宮島上級研究員に聞いた。
News & Views
1つのリングで90個のレーザーを代替
光ファイバーを使う高速通信システムは、通信容量を上げるために同時に数百個のレーザー光源を使っている。これらの多数のレーザー光源を、1つの環状の光素子で置き換えることができる方法が開発された。
揺れ動くイオン輸送酵素
ATPアーゼと呼ばれる膜貫通酵素が複雑な運動をすることは、これまでの結晶構造から分かっていた。このたび、この酵素の分子全体が膜の中でロッキングチェアーのように揺れ動くことが明らかになった。
RNA反復配列は細胞を固めてしまう
細胞核にできる小滴様のRNA凝集塊は、特定の神経変性疾患に関連している。実験の結果、こうした凝集塊が細胞の中で「固まった」ゲルになることが分かった。RNA凝集塊が毒性を持つ原因をこれで説明できるかもしれない。
News Scan
顔認識のメカニズム
その神経コードを解読する研究が進展
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