2018年11月号Volume 15 Number 11
感染したインフルエンザの亡霊
あなたの出生年はいつだろうか? さまざまな亜型が出現するインフルエンザのうち、どの亜型に感染しやすいかは、その人の出生年に流行していた亜型がカギを握っているようなのだ。免疫学的刷り込みと呼ばれるこの現象の解明に、米国立衛生研究所やビル&メリンダ・ゲイツ財団などが資金提供を始めた。インフルエンザの万能ワクチン開発に利用できる可能性があるからだ。
Editorial
Publishing Academy
学術界サバイバル術入門 — Training 5:学術英語 ②
あなたの考えの影響力を最大にするためには、読者にあなたの考えをしっかりと伝える必要があります。そのヒントを2回に分けて説明します。
Research Highlights
News in Japan
本庶佑氏がノーベル医学・生理学賞受賞!
免疫チェックポイント阻害剤によるがん治療を切り開いた本庶佑氏とジェームズ・アリソン氏に、2018年のノーベル医学・生理学賞が贈られる(ノーベル賞各賞に関する記事は12月号に掲載予定です)。
News Feature
感染したインフルエンザの亡霊
生まれて初めてのインフルエンザ感染が、以後のその人のインフルエンザに対する免疫応答を形作る。こうした免疫の「刷り込み(imprinting)」の重要性が最近、認識されるようになってきた。
Comment
Free access
石油流出事故の大半に人的ミス
タンカーの運行や事故に関する記録は、本質的な理解を妨げる内容であることが多く、これが研究や法律にゆがみを生じさせている。今後優先的に進めるべき研究を3つ提案する。
Japanese Author
光で活性化されるタンパク質の新型を発見
ロドプシンは、光を受容して反応するタンパク質である。ヒトの眼の網膜で働いたり、オプトジェネティクス(光遺伝学)技術に利用されたりすることで知られている。ロドプシンには、タイプ1(微生物型)とタイプ2(動物型)の2種類が存在するというのがこれまでの通説だったが、今回、それを覆す発見があった。第3のタイプのロドプシン、「ヘリオロドプシン」が、神取秀樹・名古屋工業大学大学院教授と井上圭一・東京大学准教授らにより報告されたのである。
News & Views
リンパ管による脳内の老廃物除去
髄膜にあるリンパ管は、血管と相互作用して脳から有害な老廃物を除去していることが明らかになった。この知見は、認知や加齢、アルツハイマー病などの疾患と関係がありそうだ。
反射を伴わない負の屈折
トポロジカルな音波の人工結晶「ワイル・フォノニック結晶」の2つのファセットの境界において、反射を伴わない音波の負の屈折が実現された。
体内のカロリー燃焼を促進する意外な分子
代謝産物の1つであるコハク酸は、褐色脂肪組織での熱産生過程を活性化し、カロリー燃焼を促進することがマウスで示された。この発見は、ヒトの肥満対策にも有効かもしれない。
News Scan
鳥たちの免疫
渡りのパターンによって特徴が異なる
発生のバランス技
四肢が成長をそろえる仕組み
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