著者インタビュー

論文が掲載された日本人著者にインタビューし、学生時代からの経歴、投稿から掲載までの経緯や今後の方向性などについて、興味深い話をお届けします。

  • Nature Human Behaviour

    2017年1月号掲載

    恐怖記憶を消去するニューロフィードバック技術を開発

    小泉 愛氏、天野 薫氏、川人 光男氏

    人間の脳が恐怖体験を記憶しやすいのは、危ないものに二度と近づかないようにする防御反応として意味があるからだといわれる。しかし、それがトラウマ(心的外傷)となって日常生活に支障をきたすこともあるのでやっかいだ。このほど、最新の情報学的技術を脳科学に応用して、恐怖記憶を消去する新しい技術が考案され、新創刊のNature Human Behaviour に報告された。従来の恐怖記憶の緩和治療に伴いがちなストレスを大きく低減できる、画期的な方法として期待されている。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年1月20日掲載

    先天性難聴

    宇佐美 真一氏

    先天性難聴(生まれつきの難聴)は、小児の慢性疾患の中で最も頻度が高い。そのため、多くの先進国が新生児の聴力スクリーニングプログラムを実施して早期発見に努めている。早期介入を行うことで、言語発達の遅延が未然に防がれ、社会的・情緒的発達やQOLへの有益性が長期に及ぶ。

  • Nature Plants

    2016年9月号掲載

    非自己を認識する自家不和合性の仕組みを、理論的にも検証!

    藤井 壮太氏

    2015年のNature Plants 創刊号で、ペチュニアが自己の花粉と非自己の花粉を識別し、他者の花粉だけを受け入れる「非自己認識の仕組み」について発表した、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科の高山誠司教授(現東京大学農学生命科学研究科)、久保健一研究員らのチーム。今回、新たに藤井壮太氏がこれまでに解明した仕組みを理論的に検証。3人のコラボレーションにより、非自己認識システムがより強固にそして確実に証明された。

  • Nature Microbiology

    2016年11月号掲載

    アーキアのべん毛を動かす運動モーターの仕組みに迫る!

    木下 佳昭氏、西坂 崇之氏

    生命現象を支えるタンパク質のなかには、モーターのように回転する「分子モーター」がある。これまで、バクテリアのべん毛や真核生物の細胞内輸送に重要なキネシンなどで研究が進んできたが、アーキア(古細菌)が持つ分子モーターは未解明のままだった。今回、学習院大学大学院自然科学研究科生命科学専攻西坂研究室の大学院生、木下佳昭さんは、死海で見つかったアーキアを使ってべん毛が動くようすを詳細に観察し、分子モーターの仕組みの一端を解明した。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2016年11月10日掲載

    神経芽腫

    中川原 章氏

    神経芽腫は小児期に最もよく見られる頭蓋外固形腫瘍であり、臨床像は多様で、腫瘍の生物学にしたがった経過をたどる。この神経内分泌腫瘍の特異な性質として、若年期に発症すること、診断時で既に転移していることが多いこと、および乳児では腫瘍が自然寛解する傾向があることが知られている。

  • Nature Energy

    2016年10月号掲載

    有機溶媒電解液にかわる水系のリチウムイオン伝導性液体発見
    - 安価、安全、高性能なリチウムイオン電池実用化に道

    山田 淳夫氏、山田 裕貴氏

    不燃、無毒、安価な“水”をベースとした新たなリチウムイオン伝導性液体「常温溶融水和物(ハイドレートメルト;hydrate melt)」を、東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻の山田淳夫教授、山田裕貴助教らの研究グループが発見した。この伝導性液体は、リチウムイオンの輸送特性も高く、電気的安定性にも優れ、3V以上で実用化されているリチウムイオン電池の電解液である有機溶媒に置き換わりうる。火災、爆発の危険性を極限まで低下させ、低価格の次世代リチウムイオン電池の開発につながると期待される。成果はNature Energy 10月号(8月26日オンライン掲載)に発表された。開発に至る経緯、新たな伝導性液体の特徴、今後の研究の方向性などについて、山田教授、山田助教に聞いた。

  • Nature Microbiology

    2016年10月号掲載

    細胞の個性を探るイメージング装置開発
    — 誘導ラマン顕微鏡でミドリムシの代謝を調べる

    合田 圭介氏、小関 泰之氏、鈴木 祐太氏、脇坂 佳史氏

    生きている細胞を無染色のまま、高速に画像化する誘導ラマン顕微鏡。そのスペックを大きく向上させて素早く動き回るミドリムシを画像化し、さまざまな環境下での物質代謝がミドリムシ個体間でどう異なっているかを、東京大学の研究グループが明らかにした。今回の成果により、例えば生産性の高い微生物個体を見つけ出すことが可能になるなど、さまざまなバイオ産業への応用が期待される。

  • Nature Microbiology

    2016年10月号掲載

    D-アミノ酸による腸内細菌と宿主哺乳類の相互作用

    笹部 潤平氏

    タンパク質を構成するアミノ酸には、分子構造が鏡像関係にある2つの光学異性体が存在する。L-アミノ酸とD-アミノ酸だ。あらゆる生物界で広く利用されているL-アミノ酸に比べ、D-アミノ酸はマイナーな存在だが、L-アミノ酸とは異なる重要な役割を担っていることが解明され始めている。今回、慶應義塾大学医学部の笹部潤平専任講師は、腸内細菌の作るD-アミノ酸に着目し、それが、宿主である我々の体にとってどんな意味を持つのか、初めて明らかにした。

  • Nature Microbiology

    2016年9月号掲載

    腸粘膜が分泌する、悪玉菌を一括して抑えるIgA抗体を発見!

    新藏 礼子氏、岡井 晋作氏、臼井 文人氏

    ヒトの腸内には、最大で数千種類、1000兆個にも及ぶ腸内細菌が住み着いているという。菌の種類や数は食生活や健康状態によって大きく変わるとされ、腸内細菌叢がさまざまな疾患に関与していることもわかってきた。奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の新藏礼子教授らは、腸粘膜で分泌されるIgA抗体を1種ずつ分離し、その一つに腸内細菌に幅広く結合し、増殖を抑える機能があることを突き止めた。

  • Nature Microbiology

    2016年6月号、2016年8月号掲載

    東京大学医科学研究所教授 河岡義裕氏 ロングインタビュー 後編
    科学者は常に研究のプラス面とリスクを考え対処し、一般の人に信頼される努力が不可欠

    河岡 義裕氏

    インフルエンザウイルス研究で世界をリードする東京大学医科学研究所河岡義裕教授。前編では、Nature Microbiology に掲載された論文2報を中心にお話を伺った。後編では、これまでのインフルエンザウイルス研究、その研究の重要性・有用性と悪用の危険性、社会とのかかわり方について語ってもらった。

  • Nature Microbiology

    2016年6月号、2016年8月号掲載

    東京大学医科学研究所教授 河岡義裕氏 ロングインタビュー 前編
    ウイルスの変異を高精度で予測 −−より有効なワクチン開発に道

    河岡 義裕氏

    インフルエンザウイルスを人工的に合成するなど世界的に業績を知られる東京大学医科学研究所河岡義裕教授。このほど、インフルエンザウイルスの抗原変異を高い精度で予測する技術の開発と、宿主の核内におけるウイルスの動態に寄与するタンパク質の同定に関する2つの研究成果を、Nature Microbiology に発表した。ともにワクチン、治療薬の開発に道を開くもので、特に抗原変異の予測はより有効なワクチン製造を可能にする画期的な成果であり、すでに実用化に向け応用が始まりつつある。今回、これら2つの成果を踏まえ、パンデミックへの危機感と研究の重要性、デュアルユース(科学研究の両義性)、社会とのかかわり、今後の研究の方向性について河岡教授に聞いた。前編、後編に分けてお届けする。

  • Nature

    混沌状態をすっきりさせるような研究が好き

    長田 重一氏

    長田重一大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授は、アポトーシス(プログラム細胞死)の分子メカニズムの解明など、すばらしい業績を残してきた。いくつもの論文が引用ランキングに並ぶ。その始まりは、1980年に成功したインターフェロンα遺伝子のクローニングだった。

  • Nature Energy

    2016年4月号掲載

    次世代電池を牽引する、全固体電池開発

    菅野 了次氏、加藤 祐樹氏

    広く普及しているリチウムイオン電池の3倍以上の出力特性を持つ、全固体(型)セラミックス電池が開発された。開発に成功したのは、東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループで、リチウムイオンの伝導率がこれまでの2倍という過去最高の性能を誇る固体電解質の発見によって実現した。次世代の自動車開発、スマートグリッド拡大などにつながる有力な蓄電デバイスとして期待される。成果は今年1月に創刊したNature Energy の4月号に発表された。菅野教授、筆頭著者の加藤博士に研究の意義、今後の展望などについて伺った。

  • Nature Communications

    2016年1月19日掲載

    スカーミオン・ホール効果を抑制する2層磁気スカーミオンの可能性

    江澤 雅彦氏

    磁石などの磁性体に見られる「磁気スカーミオン」が注目されている。スカーミオンは磁石の中に発生する、電子スピンの小さな渦構造のことで、スイッチのように電流駆動で作ったり、消したりすることができることから将来的にはメモリー、論理回路、計算機などのデバイスへの応用が期待されている。ただ、電流駆動では、マグナス力によって真っすぐ進めず、壁にぶつかり消えてしまうという欠点があった。東京大学大学院工学研究科物理工学専攻の江澤雅彦(もとひこ)講師、香港大学のXichao Zhang, Yan Zhouらの研究グループは、材料を2層系にすることで、スカーミオンが壁にぶつからず、安定的に駆動できることを理論計算で予言した。今回、江澤氏に研究内容、将来の発展性、若手研究者へのメッセージを聞いた。

  • Nature Communications

    2016年1月18日掲載

    微小管βチューブリンタンパク質が神経疾患を引き起こすメカニズムが明らかに

    武藤 悦子氏(写真左)、箕浦 逸史氏(写真右)

    眼筋麻痺による斜視や眼瞼下垂を主な症状とする先天性外眼筋繊維症(CFEOM)。CFEOMは1型、2型、3型に分類され、3型(CFEOM3)は、微小管形成の阻害による脳神経の発生異常、特に神経軸索の形成不全が原因と考えられている。微小管を構成するタンパク質βチューブリンの遺伝子変異が微小管形成の異常を引き起こすメカニズムを明らかにした1、理化学研究所脳科学総合研究センター所属の武藤悦子チームリーダーと箕浦逸史研究員に、今回の研究成果や今後の展望について話を聞いた。

  • Nature Reviews Materials

    2016年1月号掲載

    ボトムアップ法が拓くナノカーボン科学の新局面

    伊丹 健一郎氏(写真中)、瀬川 泰知氏(写真右)、伊藤 英人氏(写真左)

    1985年のフラーレン発見以来、ナノチューブやグラフェンなどのいわゆるナノカーボン類は社会に多大なインパクトをもたらしてきた。ナノカーボン類は現在、レーザー照射などでグラファイトを蒸発・凝結させるといった「トップダウン型」の手法で合成されることがほとんどだが、近年、ナノカーボン構造を有機合成の手法で構築する「ボトムアップ型合成」の研究が盛んになっており、この手法に関する総説がNature Reviews Materials 創刊号に掲載された。著者である名古屋大学の伊丹健一郎教授、瀬川泰知特任准教授、伊藤英人講師のお三方に、有機合成で作ることの意義と現状、今後の展望について伺った。

  • Nature Chemistry

    2015年3月号掲載

    「プログラム合成」で、究極の構造多様性を征服する

    伊丹 健一郎氏(写真左)、山口 潤一郎氏(写真右)

    ベンゼン環は、有機化学の象徴ともいうべき構造であり、天然・人工を問わず多くの化合物の基本単位だ。このベンゼン環に各種の置換基を導入することで、多様な性質を引き出すことができ、例えば液晶材料・有機EL・医薬品などの高付加価値化合物がここから生み出される。このため、ベンゼン環上の望みの位置に必要な置換基を導入する手法の開発は、化学の黎明期から変わらぬ重要なテーマだ。このほど名古屋大学の伊丹健一郎教授、山口潤一郎准教授らのグループは、ベンゼン環の6つの炭素に、全て異なる芳香環が導入された「ヘキサアリールベンゼン」の合成に成功した。その意義、研究の経緯などを、両博士に伺った。

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