著者インタビュー

論文が掲載された日本人著者にインタビューし、学生時代からの経歴、投稿から掲載までの経緯や今後の方向性などについて、興味深い話をお届けします。

  • Nature Ecology & Evolution

    2018年11月号掲載

    サメのゲノムが挑む、進化と自然の謎

    工樂 樹洋氏

    軟骨魚類板䚡(ばんさい)類のサメ類は、その名の通り、硬い骨を持たない。ヒトの属する硬骨脊椎動物の祖先とは、4億5000万年前に分岐した。日本近海には、映画で有名なホホジロザメ、巨大なジンベエザメ、ダイバーに人気のシュモクザメをはじめ、約150種が生息している。このほど、理化学研究所生命機能科学研究センター分子配列比較解析ユニットの工樂樹洋ユニットリーダーらを中心とする、沖縄美ら海水族館、海遊館、大阪市立大学、東京大学の共同研究チームが、ジンベエザメ、トラザメ、イヌザメの全ゲノムを解析し、脊椎動物の進化やサメの生態についてさまざまな知見を得た。成果は、Nature Ecology & Evolution 11月号に発表された。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2018年4月19日掲載

    非静脈瘤性上部消化管出血

    藤城 光弘氏

    非静脈瘤性上部消化管出血(NVUGIB)は、生命を脅かしうる消化器救急として日常で経験することの多い疾患の一つです。そのような状況を鑑み、本総説では、診断と治療のみならず、疫学、病態生理、患者のQOL、本分野の将来展望まで、NVUGIBのすべてを、その道の世界的権威が共同執筆した点にインパクトがあると思います。今までに類を見ないNVUGIBに関する総説であるのではないかと思います。

  • Nature Electronics

    2018年2月号掲載

    スピンを活用し、ひずみ方向検知に初成功 ― 柔らかいセンサー開発に道

    太田 進也氏、千葉 大地氏、安藤 陽氏

    磁性体(磁石)が変形すると磁化方向が変わる性質を利用して、変形の方向を検出できる柔らかいひずみセンサーの動作実証に、東京大学大学院工学系研究科准教授の千葉大地さん、同研究科博士課程2年の太田進也さん、株式会社村田製作所シニアプリンシパルリサーチャーの安藤陽さんの3人が世界で初めて成功し、新創刊のNature Electronics 2月号に発表した。電子の磁気的性質であるスピンを活用する「スピントロニクス」と、折り曲げることができる電子部品を創造する「フレキシブルエレクトロニクス」を融合した新しいデバイス開発に道を開くものだ。3人に研究の背景、今後の方向性などについて聞いた。

  • Nature Catalysis

    2018年3月号掲載

    窒素固定 ― 常識破りのメカニズムに迫る

    細野 秀雄氏、多田 朋史氏

    空気中の窒素から、肥料として不可欠なアンモニアを作る「ハーバー=ボッシュ法」は、人類の食料供給を100年以上にわたり支えてきた。ただし、この方法は高温高圧が不可欠であるため、多くのエネルギーと大型プラントが必要となる。このため、消費エネルギーが低く小型の設備かつオンサイトで可能な窒素固定法の開発は、現在最も社会的要請の高い研究の1つだ。このほど、ランタン・コバルト・ケイ素の3元素から成る金属間化合物(LaCoSi)が、400℃、常圧という従来よりはるかに温和な条件下で窒素固定触媒として働くことが、Nature Catalysis に報告された。その開発の過程について、細野秀雄・東京工業大学教授および多田朋史・同大学准教授に話を聞いた。

  • Nature Electronics

    2018年2月号掲載

    異常ホール効果を利用した、不揮発性メモリーの新しい記録技術開発

    飯浜 賢志氏、谷口 知大氏、久保田 均氏

    電流を流す配線部に安価でありふれた鉄系の磁石を使うことで、記録書き込みエラーが極端に低くなる新しい「面内電流型磁気メモリー」を作製することに、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)スピントロニクス研究センターの久保田均総括研究主幹らの研究チームが成功した。配線部を磁石にすることで発生する異常ホール効果で、記憶層の磁化の変化の確実性が高まり、記録の信頼性が高まることは、理論的には予言されていた。が、それを実証したのは、今回が世界初。省電力で、安価な不揮発性の磁気メモリー(MRAM)の実用化につながる成果で、2018年1月に創刊されたNature Electronics 2月号に掲載された。異常ホール効果を利用して磁化を確実に制御できることを提唱した谷口知大主任研究員、それを実証した論文第一著者の飯浜賢志さん(日本学術振興会特別研究員)に研究開発の狙い、経緯、今後の展望について聞いた。

  • Scientific Data

    2017年8月29日号掲載

    FANTOM5データを誰でも活用できる形に

    川路 英哉氏、粕川 雄也氏、坊農 秀雅氏、小野 浩雅氏

    理化学研究所主宰の哺乳類ゲノムの国際研究コンソーシアム、FANTOM。現在の第5期FANTOM5では、500種類以上の細胞(臓器由来含む)ついて、ゲノムから転写されたRNAが網羅的に測定・解析された。FANTOM5データの多くはすでに公開済みだが、データ取得プロセスや試料の品質、データ処理などを詳しく記述した報告は、今回のScientific Data が初めてだ。同時に、FANTOM5などの遺伝子発現データを簡単に検索・閲覧できるウェブツール「RefEx」に関する論文も同誌に報告。公開データの活用を促すこれらの研究に尽力した4人のデータサイエンティストに話を伺った。

  • Nature Astronomy

    2017年7月号掲載

    大質量星の進化の一端をとらえる — 原始星円盤からアウトフローの噴出を観測

    廣田 朋也氏

    冬の夜空に燦然(さんぜん)と輝くオリオン座。その三つ星ベルトの下にぼんやりと見えるのがオリオン大星雲だ。地球から約1400光年にあり、「星の生まれる場所」として有名である。その中にある赤外線天体KL領域の電波源I(アイ)は、太陽の8.7倍程度の質量を持つ大質量原始星だ。このほど、国立天文台、九州大学、山口大学などの共同研究チームが、この原始星を取り囲む円盤から、ガスが回転しながら噴出していることを確認した。中小質量星では原始星からジェットが回転しながら噴出する現象はこれまでにも観測されていたが、今回、大質量星でアウトフローがはっきりと回転しながら噴出していることが観測されたことは、非常に意義深い。研究の中心となった国立天文台水沢VLBI観測所の廣田朋也さんにお話を伺った。

  • Nature Plants

    2017年7月号掲載

    日本とトルコのアブラナは、なぜ交配できない?
    ─自家不和合性遺伝子が作り出す生殖隔離

    渡辺 正夫氏、髙田 美信氏

    アブラナ科などの花では、雌しべに自分の花粉が付いても交配は起きない。「自家不和合性」という自己認識システムが働き、自分の花粉を拒絶するからだ。一方、他者の花粉ならば受け入れるはずである。ところが、日本系統のアブラナの雌しべはトルコ系統の花粉を拒絶するというのだ。なぜか? 今回、この発見者である東北大学の髙田美信さんと渡辺正夫さんは、拒絶の仕組みを解明し、重複した自家不和合性遺伝子が生殖隔離の仕組みに役割を果たしている可能性があることを、Nature Plants 7月号に発表した。

  • Nature Human Behaviour

    2017年3月号掲載

    運動学習を2人で行うと上達が早いのは、なぜ?

    高木 敦士氏

    ヒトとヒトとの間では、感覚受容器を介し、さまざまな情報交換がなされている。交換される情報のうち力に着目し、それがヒトの動作や行動に及ぼす影響を研究しているのが、東京工業大学の高木敦士さんたちのグループだ。これまでの研究から、運動学習を行うときに、2人をゴムなどで連結して互いの力を情報交換しながら行わせると、1人で学ぶよりも学習効率が上がるという実験結果が得られている。なぜ学習効率が上がるのだろうか。今回、その仕組みを解析して、コンピューター・シミュレーションによる再現に成功し、Nature Human Behaviour 3月号に発表した。

  • Nature Energy

    2017年5月号掲載

    結晶シリコン太陽電池変換効率、世界最高値26.3%を達成

    吉河 訓太氏

    化学メーカーの株式会社カネカ(本社・大阪市)は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトの一環で、多方面で使われる結晶シリコン太陽電池のセル変換効率を世界最高の26.3%まで高めることに成功した。セルの大きさも180cm2と実用サイズで、太陽電池のコストを低下させ、再生エネルギーの普及に大きく寄与する成果として注目される。日本の技術の高さをアピールするもので,成果はNature Energy 5月号に発表された。中心となって開発を進めたカネカ太陽電池・薄膜研究所主任の吉河訓太さんに開発の経緯、苦労、今後の展開などについて聞いた。

  • Nature Biomedical Engineering

    2017年3月号掲載

    人工硝子体として長期埋め込み可能なゲル

    酒井 崇匡氏

    大量の水を含み弾力性に富んだハイドロゲルは生体軟組織と似ており、医療材料として注目されている。一方で、生体内で膨潤、白濁、炎症などを引き起こすといった問題も抱えており、広く実用化されているものはあまりない。このほど、酒井崇匡・東京大学大学院准教授らは、膨潤や白濁の問題をクリアし、液体からゲル化までの時間も制御できる、注入可能なハイドロゲルを開発。実際にこのハイドロゲルをウサギに導入し、長期の埋め込みが可能な人工硝子体としての安全性を確認した。

  • Nature Microbiology

    2016年11月号掲載

    アーキアのべん毛を動かす運動モーターの仕組みに迫る!

    木下 佳昭氏、西坂 崇之氏

    生命現象を支えるタンパク質のなかには、モーターのように回転する「分子モーター」がある。これまで、バクテリアのべん毛や真核生物の細胞内輸送に重要なキネシンなどで研究が進んできたが、アーキア(古細菌)が持つ分子モーターは未解明のままだった。今回、学習院大学大学院自然科学研究科生命科学専攻西坂研究室の大学院生、木下佳昭さんは、死海で見つかったアーキアを使ってべん毛が動くようすを詳細に観察し、分子モーターの仕組みの一端を解明した。

  • Nature

    混沌状態をすっきりさせるような研究が好き

    長田 重一氏

    長田重一大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授は、アポトーシス(プログラム細胞死)の分子メカニズムの解明など、すばらしい業績を残してきた。いくつもの論文が引用ランキングに並ぶ。その始まりは、1980年に成功したインターフェロンα遺伝子のクローニングだった。

  • Nature Communications

    2016年1月19日掲載

    スカーミオン・ホール効果を抑制する2層磁気スカーミオンの可能性

    江澤 雅彦氏

    磁石などの磁性体に見られる「磁気スカーミオン」が注目されている。スカーミオンは磁石の中に発生する、電子スピンの小さな渦構造のことで、スイッチのように電流駆動で作ったり、消したりすることができることから将来的にはメモリー、論理回路、計算機などのデバイスへの応用が期待されている。ただ、電流駆動では、マグナス力によって真っすぐ進めず、壁にぶつかり消えてしまうという欠点があった。東京大学大学院工学研究科物理工学専攻の江澤雅彦(もとひこ)講師、香港大学のXichao Zhang, Yan Zhouらの研究グループは、材料を2層系にすることで、スカーミオンが壁にぶつからず、安定的に駆動できることを理論計算で予言した。今回、江澤氏に研究内容、将来の発展性、若手研究者へのメッセージを聞いた。

  • Nature Reviews Materials

    2016年1月号掲載

    ボトムアップ法が拓くナノカーボン科学の新局面

    伊丹 健一郎氏(写真中)、瀬川 泰知氏(写真右)、伊藤 英人氏(写真左)

    1985年のフラーレン発見以来、ナノチューブやグラフェンなどのいわゆるナノカーボン類は社会に多大なインパクトをもたらしてきた。ナノカーボン類は現在、レーザー照射などでグラファイトを蒸発・凝結させるといった「トップダウン型」の手法で合成されることがほとんどだが、近年、ナノカーボン構造を有機合成の手法で構築する「ボトムアップ型合成」の研究が盛んになっており、この手法に関する総説がNature Reviews Materials 創刊号に掲載された。著者である名古屋大学の伊丹健一郎教授、瀬川泰知特任准教授、伊藤英人講師のお三方に、有機合成で作ることの意義と現状、今後の展望について伺った。

  • Nature Chemistry

    2015年3月号掲載

    「プログラム合成」で、究極の構造多様性を征服する

    伊丹 健一郎氏(写真左)、山口 潤一郎氏(写真右)

    ベンゼン環は、有機化学の象徴ともいうべき構造であり、天然・人工を問わず多くの化合物の基本単位だ。このベンゼン環に各種の置換基を導入することで、多様な性質を引き出すことができ、例えば液晶材料・有機EL・医薬品などの高付加価値化合物がここから生み出される。このため、ベンゼン環上の望みの位置に必要な置換基を導入する手法の開発は、化学の黎明期から変わらぬ重要なテーマだ。このほど名古屋大学の伊丹健一郎教授、山口潤一郎准教授らのグループは、ベンゼン環の6つの炭素に、全て異なる芳香環が導入された「ヘキサアリールベンゼン」の合成に成功した。その意義、研究の経緯などを、両博士に伺った。

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