Author interview

腫瘍性骨軟化症

福本 誠二氏

掲載

腫瘍性骨軟化症(TIO)は、腫瘍原性骨軟化症としても知られる、まれな腫瘍随伴性障害で、腫瘍組織から分泌される線維芽細胞増殖因子23(FGF23)が原因で発症すると考えられている。FGF23はリン排泄とビタミンD合成に役割を担うため、TIOでは、リンの腎尿細管再吸収の低下、低リン血症、活性型ビタミンD濃度の低下などの特徴が認められる。… 続き

―― 今回のPrimer「Tumor-induced osteomalacia (腫瘍性骨軟化症)」について、インパクトはどこにあるとお考えでしょうか?

腫瘍性骨軟化症は腫瘍随伴症候群の一つで、指定難病の「ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症」に含まれる疾患です。罹患患者の生活の質(QOL)を著しく障害するのですが、原因腫瘍を完全に取り除けば完治します。稀少疾患であることから、臨床医の間での認知度は必ずしも高くないものと考えられます。このような意味において、腫瘍性骨軟化症に関する最新の知見の集大成である本総説は、疾患の理解に大きく貢献するものと思います。

―― どのような新たな知見や視点が紹介されたのでしょうか?

腫瘍性骨軟化症について、疫学、病態、病因、症候、診断、治療などの、基礎および臨床的知見がまとめられています。診断や治療については、必ずしも現在の日本で使用可能でない手段についても言及されています。腫瘍性骨軟化症の原因液性因子として同定された線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)は、骨により産生され、リンやビタミンDの代謝を調節するホルモンであることが明らかにされました。このことは、骨が内分泌臓器としての機能ももつこと、一部の低リン血症性疾患が内分泌疾患としてとらえられることを示しています。こうした新しい知見も紹介されています。

―― 診断、治療、予防などにどのように生かせるとお考えでしょうか?

腫瘍性骨軟化症は稀少疾患であることから、一人の臨床医が複数の患者の診療に携わることは多くないと思います。そのため、患者の管理においては、自分の臨床経験ではなく、内外におけるこれまでの知見を参考にすべきだと思います。同じ意味で、本総説も臨床医にとって有用なものとなることを期待しています。

―― 残された謎、解明すべき病態等はございますか?

腫瘍性骨軟化症の主な原因は、中胚葉系の腫瘍(phosphaturic mesenchymal tumor,mixed connective tissue variant:PMTMCT)です。一方で、最近、結腸がんや卵巣がんなどの悪性腫瘍によるものも報告されています。いずれも原因腫瘍によるFGF23産生とその過剰作用によるものと考えられますが、原因腫瘍がFGF23を産生する機序は不明です。

―― 日々の臨床や研究への思い、若手臨床医へのアドバイスをお願いできますか?

内分泌・代謝疾患では、少数の、極端に言えば「一人の患者さん」の情報からでも、新たな知見が発見されることがあります。よって、日々の臨床においても、患者さんの情報の中に未解明の問題に対するヒントがないかと考えています。

現在、腫瘍性骨軟化症の新たな内科的治療法として、FGF23作用を阻害するヒト型モノクローナル抗体が検討されています。FGF23については、他の高リン血症性疾患や低リン血症性疾患の発症にも関与すること、慢性腎臓病患者で高値示すことなども報告されていますが、慢性腎臓病患者がFGF23高値を示す機序やFGF23活性調節機序など、未解明な点も多く残されています。今後、多くの先生が本分野に興味をもち、これらの課題を克服していかれることを願っています。

聞き手は、西村尚子(サイエンスライター)。

腫瘍性骨軟化症

Tumour-induced osteomalacia

Nature Reviews Disease Primers 3 Article number: 17044 (2017) doi:10.1038/nrdp.2017.44

Author Profile

福本 誠二

福本 誠二氏

東京大学医学部附属病院第四内科で、主に骨・ミネラル代謝異常症の病因に関する研究を開始。2001年に、腫瘍性骨軟化症の原因液性因子として線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)を同定。以後、FGF23作用の解明、FGF23測定系の確立、FGF23受容体の同定、FGF23作用異常による疾患の病因・病態解析等を行ってきた。現在、FGF23活性調節機構について、検討を進めている。

1982年 東京大学医学部医学科卒業
1990年 東京大学大学院医学系研究科修了
1990〜1991年 オーストラリアメルボルン大学 訪問研究員
1998年 東京大学講師(医学部附属病院分院検査部)
2001年 東京大学講師(医学部附属病院検査部)
2004年 東京大学講師(医学部附属病院腎臓・内分泌内科)
2014年 徳島大学特任教授(藤井節郎記念医科学センター)
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