Nature

Cover Story: 一定の力で結ぶ:「引き解け結び」が、外科手術の創傷を一定の力で閉じる簡便な方法をもたらす

Nature 647, 8091 (2025年11月27日)

外科手術における縫合・結紮では、力の正確な制御が求められる。閉じる力が弱過ぎると縫合創が開いて漏出が生じ、強過ぎると創傷部が膨れ上がって血流が妨げられてしまうからだ。ロボットはこの作業を支援できるが、ロボットの複雑なセンシングシステムは、低侵襲手術のように作業空間が限られた場面ではその性能を発揮しにくい。今週号でT Liたちは、単純な「引き解け結び」の力学を解析し、この結び目を使えば、電子機器に頼らなくても、力の機械的な伝達によって創を一定の力で閉じられることを明らかにしている。著者たちは、トポロジカルに設計された引き解け結びが、95.4%という高い一貫性で力を伝達できることを見いだした。彼らはこの原理を使って、通常の外科結紮に加えて同じ縫合糸に引き解け結びを追加する「sliputure(引き解け縫合)」と呼ぶやり方を設計した。外科医は創傷の上で通常通り外科結紮を作り、その後、引き解け結びがほどけるまで引き締める。そうすることで、外科結紮に適切な圧力がかかるような機械的な力が伝達される。今回の報告では、引き解け縫合方式によって、経験の浅い外科医の結紮の精度が121%向上し、術後の血流と組織治癒も改善されることが示された。

今週の目次とハイライト The Nature Top Ten バックナンバー

Nature注目のハイライト

その他のハイライト

Nature 創刊150周年記念特集

Nature ダイジェスト

Nature は次に何をすべきか

2020年4月号

Nature が150周年を迎えたのを機に、その価値観と、Nature を改善する方法について考えることにした私たちは、読者の意見をどうしても聞きたくて、アンケート調査を実施しました。

イベントレポート

日本の科学の未来
― 持続可能な開発目標の達成に向けたビジョン ―

1869年創刊のNature は今年150周年を迎える。これを記念するシンポジウムが東京大学安田講堂で開催され、日本の科学のトップランナーである大隅良典氏、柳沢正史氏や、Nature 編集長のMagdalena Skipperらが集った。日本の科学の未来を各氏はどう見ているか。自らの研究や体験をもとに語り、意見が交換された。

Nature 創刊150周年記念特集

著者インタビュー

柳沢 正史氏

「私」とNature  混沌状態をすっきりさせるような研究が好き

長田 重一氏

長田重一大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授は、アポトーシス(プログラム細胞死)の分子メカニズムの解明など、すばらしい業績を残してきた。いくつもの論文が引用ランキングに並ぶ。その始まりは、1980年に成功したインターフェロンα遺伝子のクローニングだった。

柳沢 正史氏

「私」とNature  “ねむけ”の謎を解明したい

柳沢 正史氏

筑波大学大学院時代に見つけた血管収縮物質が世界の研究者の注目を集め、米国テキサス大学にスカウトされて1991年に渡米。後を追って留学してきた後輩の櫻井武(現・筑波大学 国際統合睡眠医学科研究機構;IIIS)とともにオレキシンを発見する。この脳内の神経伝達物質が睡眠と覚醒に関係していることから、本格的に睡眠学の研究を開始。現在IIISを主宰して、「ねむけとは何か」の解明を目指している。

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ネイチャー・リサーチが主催するサイエンスカフェです。グローバルな視点から様々な分野のサイエンスについて、カジュアルな雰囲気の中、一緒に語り合います。

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