著者インタビュー

論文が掲載された日本人著者にインタビューし、学生時代からの経歴、投稿から掲載までの経緯や今後の方向性などについて、興味深い話をお届けします。

  • Nature Astronomy

    2017年7月号掲載

    大質量星の進化の一端をとらえる — 原始星円盤からアウトフローの噴出を観測

    廣田 朋也氏

    冬の夜空に燦然(さんぜん)と輝くオリオン座。その三つ星ベルトの下にぼんやりと見えるのがオリオン大星雲だ。地球から約1400光年にあり、「星の生まれる場所」として有名である。その中にある赤外線天体KL領域の電波源I(アイ)は、太陽の8.7倍程度の質量を持つ大質量原始星だ。このほど、国立天文台、九州大学、山口大学などの共同研究チームが、この原始星を取り囲む円盤から、ガスが回転しながら噴出していることを確認した。中小質量星では原始星からジェットが回転しながら噴出する現象はこれまでにも観測されていたが、今回、大質量星でアウトフローがはっきりと回転しながら噴出していることが観測されたことは、非常に意義深い。研究の中心となった国立天文台水沢VLBI観測所の廣田朋也さんにお話を伺った。

  • Nature Plants

    2017年7月号掲載

    日本とトルコのアブラナは、なぜ交配できない?
    ─自家不和合性遺伝子が作り出す生殖隔離

    渡辺 正夫氏、髙田 美信氏

    アブラナ科などの花では、雌しべに自分の花粉が付いても交配は起きない。「自家不和合性」という自己認識システムが働き、自分の花粉を拒絶するからだ。一方、他者の花粉ならば受け入れるはずである。ところが、日本系統のアブラナの雌しべはトルコ系統の花粉を拒絶するというのだ。なぜか? 今回、この発見者である東北大学の髙田美信さんと渡辺正夫さんは、拒絶の仕組みを解明し、重複した自家不和合性遺伝子が生殖隔離の仕組みに役割を果たしている可能性があることを、Nature Plants 7月号に発表した。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年7月6日掲載

    女性尿失禁

    青木 芳隆氏

    女性の尿失禁症状の罹患率は高い。本症は健康関連QOLに大きく影響するだけでなく、個人や社会の支出の増加にも関与している。尿失禁は次の2つに大別され、尿漏出に身体運動が関係する腹圧性尿失禁と、突然の強い尿意により尿が漏出する切迫性尿失禁が知られている。

  • Nature Ecology & Evolution

    2017年4月号掲載

    大規模な比較トランスクリプトーム解析で、ミトコンドリアの縮退機序を探る!

    橋本 哲男氏、神川 龍馬氏、稲垣 祐司氏

    生物の進化系統樹上には、一度獲得したミトコンドリアの機能を二次的に縮退させた真核微生物が散見される。残された構造体は「ミトコンドリア関連オルガネラ(MROs)」と総称されるが、その大きさ、失った機能、残された機能等は実に多様で、謎も多い。今回、筑波大学の橋本哲男さんらは5カ国からなる国際チームを組み、嫌気性の真核単細胞生物の一群、メタモナス類に属する18種を対象に大規模な比較トランスクリプトーム解析を行い、ミトコンドリアを縮退させた道筋の一端を明らかにした。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年7月13日掲載

    腫瘍性骨軟化症

    福本 誠二氏

    腫瘍性骨軟化症(TIO)は、腫瘍原性骨軟化症としても知られる、まれな腫瘍随伴性障害で、腫瘍組織から分泌される線維芽細胞増殖因子23(FGF23)が原因で発症すると考えられている。FGF23はリン排泄とビタミンD合成に役割を担うため、TIOでは、リンの腎尿細管再吸収の低下、低リン血症、活性型ビタミンD濃度の低下などの特徴が認められる。

  • Nature Human Behaviour

    2017年3月号掲載

    運動学習を2人で行うと上達が早いのは、なぜ?

    高木 敦士氏

    ヒトとヒトとの間では、感覚受容器を介し、さまざまな情報交換がなされている。交換される情報のうち力に着目し、それがヒトの動作や行動に及ぼす影響を研究しているのが、東京工業大学の高木敦士さんたちのグループだ。これまでの研究から、運動学習を行うときに、2人をゴムなどで連結して互いの力を情報交換しながら行わせると、1人で学ぶよりも学習効率が上がるという実験結果が得られている。なぜ学習効率が上がるのだろうか。今回、その仕組みを解析して、コンピューター・シミュレーションによる再現に成功し、Nature Human Behaviour 3月号に発表した。

  • Nature Energy

    2017年5月号掲載

    結晶シリコン太陽電池変換効率、世界最高値26.3%を達成

    吉河 訓太氏

    化学メーカーの株式会社カネカ(本社・大阪市)は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトの一環で、多方面で使われる結晶シリコン太陽電池のセル変換効率を世界最高の26.3%まで高めることに成功した。セルの大きさも180cm2と実用サイズで、太陽電池のコストを低下させ、再生エネルギーの普及に大きく寄与する成果として注目される。日本の技術の高さをアピールするもので,成果はNature Energy 5月号に発表された。中心となって開発を進めたカネカ太陽電池・薄膜研究所主任の吉河訓太さんに開発の経緯、苦労、今後の展開などについて聞いた。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年6月15日掲載

    胃腺がん

    松澤 佑次氏

    肥満における脂肪の過剰蓄積は多因子病因によるものであるが、一般的にはエネルギーの摂取と消費の不均衡の結果であると考えられている。肥満の蔓延防止に特化した公衆衛生政策や個別の治療努力が行われているにもかかわらず、世界では20億人以上の過体重者と肥満者が存在している。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年6月1日掲載

    胃腺がん

    佐野 武氏

    胃がんは世界の大きな健康負担の1つになっており、中でも胃腺がん(GAC)は組織学的に最も多い型である。早期発見を目的としたスクリーニング戦略が日本と韓国で成功しているが、ほとんどの国では取り組んでいないか、実施が難しく、大多数の患者で診断の遅れにつながっている。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年5月25日掲載

    う蝕

    田上 順次氏

  • Nature Biomedical Engineering

    2017年3月号掲載

    人工硝子体として長期埋め込み可能なゲル

    酒井 崇匡氏

    大量の水を含み弾力性に富んだハイドロゲルは生体軟組織と似ており、医療材料として注目されている。一方で、生体内で膨潤、白濁、炎症などを引き起こすといった問題も抱えており、広く実用化されているものはあまりない。このほど、酒井崇匡・東京大学大学院准教授らは、膨潤や白濁の問題をクリアし、液体からゲル化までの時間も制御できる、注入可能なハイドロゲルを開発。実際にこのハイドロゲルをウサギに導入し、長期の埋め込みが可能な人工硝子体としての安全性を確認した。

  • Nature Ecology & Evolution

    2017年3月号掲載

    食虫植物の進化がゲノム解読から明らかに

    長谷部 光泰氏、福島 健児氏

    植物なのに、虫を捕らえ、食べる食虫植物。この不思議な生き物は、いったいどのように進化してきたのだろうか。このほど、自然科学研究機構基礎生物学研究所の長谷部光泰さんと米国コロラド大学の福島健児さんらは、食虫植物フクロユキノシタのゲノム配列を明らかにし、さらに捕らえた虫を分解する消化酵素の進化について解明して、Nature Ecology & Evolution 3月号に発表した。食虫植物の進化の謎解きに挑むお二人に聞いた。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年5月18日掲載

    発作性夜間ヘモグロビン尿症

    木下 タロウ氏

    発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は慢性造血幹細胞(HSC)疾患であり、骨髄不全をはじめ、溶血性貧血、血栓症、平滑筋ジストニアなどを認めることがある。PNHは、ホスファチジルイノシトールN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼのサブユニットAの遺伝子であるPIGAの体細胞変異に起因するHSCの単クローン性または多クローン性疾患である。

  • Nature Astronomy

    2017年2月号掲載

    冥王星のクジラ模様は、衛星形成時のジャイアント・インパクトの痕跡だった

    玄田 英典氏、関根 康人氏

    かつては太陽系の第9惑星とされた準惑星「冥王星」。2015年、米国航空宇宙局(NASA)の探査機ニューホライズンズが冥王星に最接近した際に撮影した、表面の褐色のクジラ模様と白いハート模様の鮮明な画像は、世界の研究者を驚かせた。冥王星の表面に氷の火山や氷河だけでなく、多様な物質や地形の存在が確認されたからだ。この褐色のクジラ模様は、どうしてできたのか。東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻准教授、関根康人さんと、東京工業大学地球生命研究所特任准教授の玄田英典さんらは、巨大な天体が冥王星に衝突する「ジャイアント・インパクト」(巨大天体衝突)によって衛星「カロン」が形成された時の痕跡であることを突き止めた。ジャイアント・インパクトが改めて惑星、衛星の形成に重要な役割を示す成果で、Nature Astronomy 2月号に掲載された。2人に研究のきっかけ、苦労した点、成果の意義、今後の研究の方向性などについて聞いた。

  • Nature Ecology & Evolution

    2017年2月号掲載

    多種生物種ネットワークを基に生態学と進化学をつなぐ

    東樹 宏和氏

    「地下の生態系は、科学におけるブラックボックスです」と語る、京都大学生態学研究センター准教授の東樹宏和さん。植物とその根に共生する真菌類の相互作用に着目し、地下生態系の全体像把握に挑んでいる。東樹さんがその先に見ているものは、森林の再生や農業生態系の設計だ。今回、多数の生物種で構成されるネットワーク構造を解析し、多種系の生態・進化動態の解明を目指す論文が、Nature Ecology & Evolution の2月号に掲載された。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年4月6日掲載

    血栓性血小板減少性紫斑病

    宮田 敏行氏

    血栓性血小板減少性紫斑病(TTP、別名:Moschcowitz病)は、しばしば、重篤な血小板減少症や微小血管障害性溶血性貧血をはじめ、さまざまなレベルの虚血性臓器障害、とりわけ、脳、心臓、腎臓の障害が同時併発する特徴を有している。急性TTPは、患者のほとんどが死に至る疾患であったが、血漿療法が導入されてからは生存率が10%未満から80~90%にまで改善された。

  • Nature Ecology & Evolution

    2017年1月号掲載

    消費・生産活動が絶滅危惧種に及ぼす影響の視覚化に成功

    金本 圭一朗氏

    世界187カ国におけるサプライチェーンによって、どれくらいの生物種が絶滅の危機にさらされているかの度合いを地域別に地図上に表示することに、信州大学経法学部講師の金本圭一朗さんらが成功し、Nature Ecology & Evolution 創刊号に発表した。サプライチェーンとは、原材料や部品の調達から製品の製造、流通、消費に至るまでの一連の流れのことである。今回の成果は、特定国のサプライチェーンが生物多様性に及ぼす影響も視覚化でき、環境にやさしい経済活動、消費活動を考える上で役に立つ。研究を進めるきっかけ、研究成果、工夫や苦労、今後の方向などについて金本さんに聞いた。

  • Nature Astronomy

    2017年2月号掲載

    月に届く地球の風

    寺田 健太郎氏、横田 勝一郎氏

    地球に一番近く、空を見上げればそこにある月。このなじみ深い天体を日本の探査機「かぐや」が調査したことは、よく知られている。このほど、地球の高層大気圏から流失したO+イオンが月にまで届いていることが、大阪大学・名古屋大学・JAXA(宇宙航空研究開発機構)の共同研究により突き止められ、 2017年創刊のNature Astronomy 2月号に発表された。検出されたO+は高いエネルギーを持ち、月表面の数十nmまで貫入することができる。このことは、太古から現在に至るまで、月が常に地球由来の物質にさらされてきたことを明らかにした初めての成果である。研究の中心となった、大阪大学大学院理学研究科の寺田健太郎さんとJAXA宇宙科学研究所の横田勝一郎さんにお話を伺った。

  • Nature Human Behaviour

    2017年2月号掲載

    生後6か月でも、弱者を助ける正義の味方を肯定!

    鹿子木 康弘氏、開 一夫氏

    アンパンマンやスーパーマンなど、アニメーションや映画では多くのヒーローが登場し、現実社会においても正義の行為は賞賛の対象となる。しかしながら、発達のどのような時期から正義概念を肯定し始めるのかはわかっていなかった。このほど、京都大学大学院教育学研究科の鹿子木康弘特定助教(現、NTTコミュニケーション科学基礎研究所/日本学術振興会)らは、言語獲得前の6か月児に正義の行為を肯定する傾向がみられることを突き止め、Nature Human Behaviour 2月号に発表した。

  • Nature Energy

    2017年1月号掲載

    酸素発生能の寿命を50倍以上に伸ばす光触媒シート開発
    - 成功の秘訣は助触媒の自己再生機能 人工光合成実現に一歩先進

    况 永波氏、山田 太郎氏、堂免 一成氏

    太陽エネルギーを利用して水を分解し、長時間、効率よく酸素を発生させる光触媒シートの開発に、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)と東京大学、東京理科大学のグループが成功した。従来20時間程度にとどまっていたシートの酸素発生寿命を1100時間以上に飛躍的に伸ばし、将来の人工光合成の社会実現に道を開く成果だ。短寿命につながるシート表面の劣化を克服し、自己再生機能を持たせたのが特長で、Nature Energy 2017年1月号に発表された。中心となって研究を進めた東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻のポスドク、况永波さん、堂免一成教授、上席研究員の山田太郎さんに開発の経緯、意義などを聞いた。

  • Nature Human Behaviour

    2017年1月号掲載

    恐怖記憶を消去するニューロフィードバック技術を開発

    小泉 愛氏、天野 薫氏、川人 光男氏

    人間の脳が恐怖体験を記憶しやすいのは、危ないものに二度と近づかないようにする防御反応として意味があるからだといわれる。しかし、それがトラウマ(心的外傷)となって日常生活に支障をきたすこともあるのでやっかいだ。このほど、最新の情報学的技術を脳科学に応用して、恐怖記憶を消去する新しい技術が考案され、新創刊のNature Human Behaviour に報告された。従来の恐怖記憶の緩和治療に伴いがちなストレスを大きく低減できる、画期的な方法として期待されている。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2017年1月20日掲載

    先天性難聴

    宇佐美 真一氏

    先天性難聴(生まれつきの難聴)は、小児の慢性疾患の中で最も頻度が高い。そのため、多くの先進国が新生児の聴力スクリーニングプログラムを実施して早期発見に努めている。早期介入を行うことで、言語発達の遅延が未然に防がれ、社会的・情緒的発達やQOLへの有益性が長期に及ぶ。

  • Nature Plants

    2016年9月号掲載

    非自己を認識する自家不和合性の仕組みを、理論的にも検証!

    藤井 壮太氏

    2015年のNature Plants 創刊号で、ペチュニアが自己の花粉と非自己の花粉を識別し、他者の花粉だけを受け入れる「非自己認識の仕組み」について発表した、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科の高山誠司教授(現東京大学農学生命科学研究科)、久保健一研究員らのチーム。今回、新たに藤井壮太氏がこれまでに解明した仕組みを理論的に検証。3人のコラボレーションにより、非自己認識システムがより強固にそして確実に証明された。

  • Nature Microbiology

    2016年11月号掲載

    アーキアのべん毛を動かす運動モーターの仕組みに迫る!

    木下 佳昭氏、西坂 崇之氏

    生命現象を支えるタンパク質のなかには、モーターのように回転する「分子モーター」がある。これまで、バクテリアのべん毛や真核生物の細胞内輸送に重要なキネシンなどで研究が進んできたが、アーキア(古細菌)が持つ分子モーターは未解明のままだった。今回、学習院大学大学院自然科学研究科生命科学専攻西坂研究室の大学院生、木下佳昭さんは、死海で見つかったアーキアを使ってべん毛が動くようすを詳細に観察し、分子モーターの仕組みの一端を解明した。

  • Nature Reviews Disease Primers

    2016年11月10日掲載

    神経芽腫

    中川原 章氏

    神経芽腫は小児期に最もよく見られる頭蓋外固形腫瘍であり、臨床像は多様で、腫瘍の生物学にしたがった経過をたどる。この神経内分泌腫瘍の特異な性質として、若年期に発症すること、診断時で既に転移していることが多いこと、および乳児では腫瘍が自然寛解する傾向があることが知られている。

  • Nature Energy

    2016年10月号掲載

    有機溶媒電解液にかわる水系のリチウムイオン伝導性液体発見
    - 安価、安全、高性能なリチウムイオン電池実用化に道

    山田 淳夫氏、山田 裕貴氏

    不燃、無毒、安価な“水”をベースとした新たなリチウムイオン伝導性液体「常温溶融水和物(ハイドレートメルト;hydrate melt)」を、東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻の山田淳夫教授、山田裕貴助教らの研究グループが発見した。この伝導性液体は、リチウムイオンの輸送特性も高く、電気的安定性にも優れ、3V以上で実用化されているリチウムイオン電池の電解液である有機溶媒に置き換わりうる。火災、爆発の危険性を極限まで低下させ、低価格の次世代リチウムイオン電池の開発につながると期待される。成果はNature Energy 10月号(8月26日オンライン掲載)に発表された。開発に至る経緯、新たな伝導性液体の特徴、今後の研究の方向性などについて、山田教授、山田助教に聞いた。

  • Nature Microbiology

    2016年10月号掲載

    細胞の個性を探るイメージング装置開発
    — 誘導ラマン顕微鏡でミドリムシの代謝を調べる

    合田 圭介氏、小関 泰之氏、鈴木 祐太氏、脇坂 佳史氏

    生きている細胞を無染色のまま、高速に画像化する誘導ラマン顕微鏡。そのスペックを大きく向上させて素早く動き回るミドリムシを画像化し、さまざまな環境下での物質代謝がミドリムシ個体間でどう異なっているかを、東京大学の研究グループが明らかにした。今回の成果により、例えば生産性の高い微生物個体を見つけ出すことが可能になるなど、さまざまなバイオ産業への応用が期待される。

  • Nature Microbiology

    2016年10月号掲載

    D-アミノ酸による腸内細菌と宿主哺乳類の相互作用

    笹部 潤平氏

    タンパク質を構成するアミノ酸には、分子構造が鏡像関係にある2つの光学異性体が存在する。L-アミノ酸とD-アミノ酸だ。あらゆる生物界で広く利用されているL-アミノ酸に比べ、D-アミノ酸はマイナーな存在だが、L-アミノ酸とは異なる重要な役割を担っていることが解明され始めている。今回、慶應義塾大学医学部の笹部潤平専任講師は、腸内細菌の作るD-アミノ酸に着目し、それが、宿主である我々の体にとってどんな意味を持つのか、初めて明らかにした。

  • Nature Microbiology

    2016年9月号掲載

    腸粘膜が分泌する、悪玉菌を一括して抑えるIgA抗体を発見!

    新藏 礼子氏、岡井 晋作氏、臼井 文人氏

    ヒトの腸内には、最大で数千種類、1000兆個にも及ぶ腸内細菌が住み着いているという。菌の種類や数は食生活や健康状態によって大きく変わるとされ、腸内細菌叢がさまざまな疾患に関与していることもわかってきた。奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の新藏礼子教授らは、腸粘膜で分泌されるIgA抗体を1種ずつ分離し、その一つに腸内細菌に幅広く結合し、増殖を抑える機能があることを突き止めた。

  • Nature Microbiology

    2016年6月号、2016年8月号掲載

    東京大学医科学研究所教授 河岡義裕氏 ロングインタビュー 後編
    科学者は常に研究のプラス面とリスクを考え対処し、一般の人に信頼される努力が不可欠

    河岡 義裕氏

    インフルエンザウイルス研究で世界をリードする東京大学医科学研究所河岡義裕教授。前編では、Nature Microbiology に掲載された論文2報を中心にお話を伺った。後編では、これまでのインフルエンザウイルス研究、その研究の重要性・有用性と悪用の危険性、社会とのかかわり方について語ってもらった。

  • Nature Microbiology

    2016年6月号、2016年8月号掲載

    東京大学医科学研究所教授 河岡義裕氏 ロングインタビュー 前編
    ウイルスの変異を高精度で予測 −−より有効なワクチン開発に道

    河岡 義裕氏

    インフルエンザウイルスを人工的に合成するなど世界的に業績を知られる東京大学医科学研究所河岡義裕教授。このほど、インフルエンザウイルスの抗原変異を高い精度で予測する技術の開発と、宿主の核内におけるウイルスの動態に寄与するタンパク質の同定に関する2つの研究成果を、Nature Microbiology に発表した。ともにワクチン、治療薬の開発に道を開くもので、特に抗原変異の予測はより有効なワクチン製造を可能にする画期的な成果であり、すでに実用化に向け応用が始まりつつある。今回、これら2つの成果を踏まえ、パンデミックへの危機感と研究の重要性、デュアルユース(科学研究の両義性)、社会とのかかわり、今後の研究の方向性について河岡教授に聞いた。前編、後編に分けてお届けする。

  • Nature

    混沌状態をすっきりさせるような研究が好き

    長田 重一氏

    長田重一大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授は、アポトーシス(プログラム細胞死)の分子メカニズムの解明など、すばらしい業績を残してきた。いくつもの論文が引用ランキングに並ぶ。その始まりは、1980年に成功したインターフェロンα遺伝子のクローニングだった。

  • Nature Energy

    2016年4月号掲載

    次世代電池を牽引する、全固体電池開発

    菅野 了次氏、加藤 祐樹氏

    広く普及しているリチウムイオン電池の3倍以上の出力特性を持つ、全固体(型)セラミックス電池が開発された。開発に成功したのは、東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループで、リチウムイオンの伝導率がこれまでの2倍という過去最高の性能を誇る固体電解質の発見によって実現した。次世代の自動車開発、スマートグリッド拡大などにつながる有力な蓄電デバイスとして期待される。成果は今年1月に創刊したNature Energy の4月号に発表された。菅野教授、筆頭著者の加藤博士に研究の意義、今後の展望などについて伺った。

  • Nature Communications

    2016年1月19日掲載

    スカーミオン・ホール効果を抑制する2層磁気スカーミオンの可能性

    江澤 雅彦氏

    磁石などの磁性体に見られる「磁気スカーミオン」が注目されている。スカーミオンは磁石の中に発生する、電子スピンの小さな渦構造のことで、スイッチのように電流駆動で作ったり、消したりすることができることから将来的にはメモリー、論理回路、計算機などのデバイスへの応用が期待されている。ただ、電流駆動では、マグナス力によって真っすぐ進めず、壁にぶつかり消えてしまうという欠点があった。東京大学大学院工学研究科物理工学専攻の江澤雅彦(もとひこ)講師、香港大学のXichao Zhang, Yan Zhouらの研究グループは、材料を2層系にすることで、スカーミオンが壁にぶつからず、安定的に駆動できることを理論計算で予言した。今回、江澤氏に研究内容、将来の発展性、若手研究者へのメッセージを聞いた。

  • Nature Communications

    2016年1月18日掲載

    微小管βチューブリンタンパク質が神経疾患を引き起こすメカニズムが明らかに

    武藤 悦子氏(写真左)、箕浦 逸史氏(写真右)

    眼筋麻痺による斜視や眼瞼下垂を主な症状とする先天性外眼筋繊維症(CFEOM)。CFEOMは1型、2型、3型に分類され、3型(CFEOM3)は、微小管形成の阻害による脳神経の発生異常、特に神経軸索の形成不全が原因と考えられている。微小管を構成するタンパク質βチューブリンの遺伝子変異が微小管形成の異常を引き起こすメカニズムを明らかにした1、理化学研究所脳科学総合研究センター所属の武藤悦子チームリーダーと箕浦逸史研究員に、今回の研究成果や今後の展望について話を聞いた。

  • Nature Reviews Materials

    2016年1月号掲載

    ボトムアップ法が拓くナノカーボン科学の新局面

    伊丹 健一郎氏(写真中)、瀬川 泰知氏(写真右)、伊藤 英人氏(写真左)

    1985年のフラーレン発見以来、ナノチューブやグラフェンなどのいわゆるナノカーボン類は社会に多大なインパクトをもたらしてきた。ナノカーボン類は現在、レーザー照射などでグラファイトを蒸発・凝結させるといった「トップダウン型」の手法で合成されることがほとんどだが、近年、ナノカーボン構造を有機合成の手法で構築する「ボトムアップ型合成」の研究が盛んになっており、この手法に関する総説がNature Reviews Materials 創刊号に掲載された。著者である名古屋大学の伊丹健一郎教授、瀬川泰知特任准教授、伊藤英人講師のお三方に、有機合成で作ることの意義と現状、今後の展望について伺った。

  • Nature Chemistry

    2015年3月号掲載

    「プログラム合成」で、究極の構造多様性を征服する

    伊丹 健一郎氏(写真左)、山口 潤一郎氏(写真右)

    ベンゼン環は、有機化学の象徴ともいうべき構造であり、天然・人工を問わず多くの化合物の基本単位だ。このベンゼン環に各種の置換基を導入することで、多様な性質を引き出すことができ、例えば液晶材料・有機EL・医薬品などの高付加価値化合物がここから生み出される。このため、ベンゼン環上の望みの位置に必要な置換基を導入する手法の開発は、化学の黎明期から変わらぬ重要なテーマだ。このほど名古屋大学の伊丹健一郎教授、山口潤一郎准教授らのグループは、ベンゼン環の6つの炭素に、全て異なる芳香環が導入された「ヘキサアリールベンゼン」の合成に成功した。その意義、研究の経緯などを、両博士に伺った。

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