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脳のタウ異常蓄積を脳脊髄液で検知し、原発性タウオパチーを鑑別
生前に確定診断できるタウオパチー(脳内にタウタンパク質が異常蓄積する疾患)は現在、遺伝性のものと、アミロイドβタンパク質の異常蓄積を特徴とするアルツハイマー病のみだ。ワシントン大学医学部の佐藤千尋氏と堀江勘太氏らは、この疾患のバイオマーカーを求め、 脳と脳脊髄液中のタウ種について、相関関係を詳細に解析。脳脊髄液中の特定のタウ種が、原発性タウオパチーの指標となり得ることを見いだした。
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胎児の造血幹細胞は血液をほとんど作らない!
血液細胞は、造血幹細胞が細胞分裂を繰り返すことで作られると考えられている。横溝智雅・熊本大学特任助教(現在、東京女子医科大学講師)らは、全ての血液細胞の源であるはずの造血幹細胞が、胎児でどのように発生し、造血が行われているかをマウスで詳しく調べて、驚いた。胎児の血液細胞の大部分は、造血幹細胞から作られていなかったのだ。
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ヒトリンパ節単一細胞アトラスで見えた悪性リンパ腫の細胞間相互作用
がん細胞は、周囲の非腫瘍細胞を変化させて、血管新生や免疫回避に利用している。血液がんの一種で、悪性リンパ腫では2番目に多いとされる「濾胞性リンパ腫」について、リンパ節内の非血液細胞を単一細胞レベルで解析した坂田麻実子・筑波大学教授らは、3種類に大別されていたそれらが、合計30のサブタイプに分けられることを突き止めた。サブタイプの中には、これまで全く知られていなかった特徴を持つものや、予後を推定するバイオマーカーとして使える可能性があるものが含まれていた。
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がん診断に応用可能な高性能DNAコンピューター
DNAを含んだ溶液の化学反応を通して計算を行うDNAコンピューター。奥村周氏(当時東京大学大学院博士課程に所属)らは、機械学習で用いられるニューラルネットワークをDNAコンピューターで構築し、塩基配列や酵素を調整した大量のマイクロ液滴中で計算を実行させることでその全体像を視覚的に捉える手法を開発した。このDNAコンピューターは、がんのmiRNAに基づく診断技術にも応用できるという。
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加齢で表皮幹細胞の機能が低下する訳
生体組織の幹細胞は、自己増殖しつつ、分化した細胞を作り出すが、その機能は加齢とともに衰えていき、表皮幹細胞も例外ではない。京都大学医生物学研究所の一條遼助教と豊島文子教授らは、表皮幹細胞の加齢変容を調べる中で、表皮下の真皮が加齢に伴い硬化することを発見。表皮幹細胞がどのように真皮の硬化を感知して加齢変容するかを明らかにしたばかりか、「真皮はなぜ硬化するのか」という問いから、傷の治癒を促す手掛かりをも突き止めた。
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奈良墨に着目した高大連携チーム、煤生成の通説を覆す発見
地域の特産品である「奈良墨」への興味から、煤(すす)の生成過程について調べ、煤生成の通説を覆す発見をした、奈良県立奈良高等学校の廉明徳さんと久米祥子さん。京都大学の学生たちとの「高大連携」プロジェクトではあるものの、研究テーマの決定から実験、論文執筆、査読付き国際誌上での発表までやり遂げた2人と、指導に当たった同校の仲野純章教諭に、研究成果と高大連携について聞いた。
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遺伝統計学でヒトゲノムデータと医療・創薬をつなぐ
近年、大規模なヒトゲノム研究から、医療や創薬にとって有用な情報が得られ始めている。このような研究を進めるには、大量のヒトゲノムデータを解析する必要があり、それを可能にしているのが、遺伝統計学である。遺伝統計学とは何か、遺伝情報からどんなことが分かるのか? 日本の遺伝統計学を牽引する、岡田随象・東京大学大学院教授に話を聞いた。
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100年以上謎に包まれていた4億年前の脊椎動物の正体
しっかりした背骨があるものの、歯がなく鰭(ひれ)もない、わずか5cmの魚。1世紀以上前から数千体の化石が発見されていたパレオスポンディルスは、奇妙な形態故に、どの脊椎動物の仲間か謎のままだった。その頭骨の化石を精密に解析した平沢達矢・東京大学大学院理学系研究科准教授らは、この魚が「魚類から陸上脊椎動物への移行段階」に位置する動物であると突き止めた。
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RNAの可逆的なリン酸化修飾を発見
遺伝子を基にタンパク質を合成する過程において、アミノ酸を運ぶ転移RNA(tRNA)。その機能を調節する「RNAの可逆的なリン酸化」という新たな種類の修飾が、鈴木 勉・東京大学教授が率いる研究グループにより発見された。tRNAがリン酸化修飾されると、タンパク質合成の耐熱性が大きく向上することから、RNAのリン酸化修飾は、RNA医薬などへの応用も期待される。
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腫瘍へ確実に送達可能な生菌カプセル化システムを構築
1世紀にわたり模索が続く、生菌を使ったがん治療。生菌製剤の免疫系回避と腫瘍部位への送達が課題である。コロンビア大学 博士課程6年に在籍する張本哲弘さんらは、このほど、菌体を包む莢膜多糖(CAP)を合成生物学の手法で自在にスイッチングする技術を開発。CAPの制御で、薬剤を兼ねる生菌をより多く腫瘍に送達できることを、生体で実証した。
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運転技術とマナーを兼ね備えたAI、『グランツーリスモSPORT』で勝利
PlayStation®4︎の自動車レースゲーム『グランツーリスモSPORT』。新たに開発された人工知能(AI)が、このゲームの世界チャンピオンに勝利した。レースで勝つには、リアルタイムに車両を制御していく能力に加え、対戦相手に敬意を払って運転するマナーを学ぶ必要もあった。このAIの研究開発メンバーの1人、河本献太氏(株式会社ソニーAI)に話を聞いた。
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ニューロン間の情報伝達は「押す力」でも引き起こされる!
ニューロンの樹状突起には「スパイン」と呼ばれる出っ張り構造が多数あり、スパイン頭部は長期記憶の形成に際して増大することが知られている。この現象を見いだし、スパインの可塑性と機能について研究を続けてきた河西春郎・東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構特任教授は、このほど、スパインの頭部増大で生じた圧力が軸索側のシナプス前部を押すことで、ニューロン間の情報伝達が行われることを突き止めた。
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百寿者の腸内細菌の特徴から見えた、長寿の秘訣
百歳以上の人たちの腸内細菌を調べる研究が行われ、長生きの秘密の1つが見つかった。百寿者の腸内細菌は、肝臓の分泌物である胆汁酸を代謝して、病原体に対し強い抗菌作用を示す物質を作り出していることが明らかになったのだ。宿主は腸内細菌により、感染症から守られていたわけだ。この研究を率いた本田賢也・慶應義塾大学教授に話を聞いた。
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小中学校の休校に感染抑止効果は確認できず
2020年春、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を食い止める目的で、全国の小中高校を一斉休校とするよう市区町村に要請を出した。休校は、子どもたちに学習不足や運動不足などの悪影響を及ぼしただけでなく、親が休職を余儀なくされた家庭では、経済状況にも影響が及んだ。福元健太郎・学習院大学法学部教授は、自身の子どもの休校体験から「多くの犠牲をもたらした休校に、感染拡大の抑制効果はあったのか」と疑問に思い、公的なデータを用いて「休校にした自治体」と「開校にした自治体」の新規感染者数を比べ、「休校による感染抑止効果は認められない」との結果を得た。
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スキルス胃がんの全ゲノム解析で見えた治療標的
スキルス胃がんは進行が早く、発見されたときには手遅れのことが多い。それ故、研究用の検体を得るのが難しく、治療法の開発も遅れていた。今回、患者の腹水に含まれる細胞を用いることで、スキルス胃がんの網羅的ゲノム解析が初めて行われ、治療標的を見つけることに成功した。研究を行った国立がん研究センター研究所の間野博行所長と佐々木博己研究員に話を聞いた。
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DOK7型先天性筋無力症の治療への道を開く抗体の開発に成功!
神経と筋肉のつなぎ目には多様なタンパク質が集積していて、神経筋シナプスの形成と維持に寄与している。これらのタンパク質をコードする遺伝子に変異があると、先天性筋無力症(CMS)という深刻な神経筋疾患が引き起こされる。小出昌平・ニューヨーク大学医学部教授らは、DOK7と、DOK7が結合することで安定化するタンパク質MUSKの構造と機能を詳細に解析し、DOK7変異によるCMSの発症機序を解明。さらに、得られた知見に基づき、機能異常を救済する抗体の作製にも成功した。
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眼の水晶体が透明になる仕組みを追い続けて
眼の中で、カメラのレンズのような働きをする水晶体。水晶体を構成する細胞は透明であり、核やミトコンドリアなどの、本来存在するはずの細胞小器官が全て消失している。細胞小器官の消失は、いったいどのような仕組みで起きているのか。この問いへの答えを探し求めてきた水島昇・東京大学教授は、ついにそれを解き明かした。
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神経回路の衰えた修復力を回復する因子を発見!
脳の神経回路には、自己修復する機構が備わっているが、この修復力は加齢や神経変性疾患で衰え、認知や記憶などの脳機能が低下する。国立精神・神経医療研究センター神経研究所の村松里衣子・神経薬理研究部長らの研究チームは今回、損傷した神経回路の修復を担うオリゴデンドロサイトを分化誘導するカギが、生理活性ペプチドであるアペリンと、その受容体APJを介したシグナル伝達系の増大にあることを見いだした。
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卵を産む哺乳類、カモノハシとハリモグラの高精度ゲノム解読に成功
卵を産むなど哺乳類らしからぬ振る舞いで知られる、カモノハシとハリモグラ。およそヒトなどとはかけ離れた特徴を持つ哺乳類である。今回、そのゲノム配列が、国際的プロジェクトにより高精度で解読された。哺乳類の進化の謎を解き明かす手掛かりとなるのはもちろん、生息数が減少しているこれらの動物の保護に役立てるなど、さまざまな研究の土台となる貴重なリソースとなるだろう。化学受容体遺伝子の専門家としてこの研究プロジェクトに参加した早川卓志・北海道大学助教と二階堂雅人・東京工業大学准教授に話を聞いた。
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アストロサイトに見つかった抑制性シナプス制御機能
ニューロンはシナプスを介して情報をやりとりし、複雑な神経回路を作り上げる。脳内に150億以上あるとされるシナプスの保護を担うのは、グリア細胞だ。ところが近年、この細胞がシナプスの保護のみならずシナプスの形成や再編成にも、従来考えられてきた以上に積極的に関与している、とする報告が相次いでいる。髙野哲也・慶應義塾大学医学部助教らは、この細胞が2つのニューロンを橋渡しする細胞接着構造(三者間シナプス)に着目し、機能分子の網羅的解析を行うことで、アストロサイトの役割の1つに抑制性シナプスを調節する機能があることを見いだした。