Author Interview

雄性ラット臓器miRNAアトラス OPEN

2014年5月27日掲載

南 圭一

―― 今回の研究の概要。

マイクロRNA(miRNA)は22塩基程度の短いRNAで、他の遺伝子の発現を負に調節する機能性RNAの一種です。主要なmiRNAは動物種を超えてその発現が保存されており、発生や免疫応答などのさまざまな生理機能との関与が報告されています。近年、このmiRNAが循環血や尿などの体液中に含まれることが明らかとなりました。さらに、組織障害やがんなどの疾患に応じて血漿中miRNA量が変動することから、疾患バイオマーカーとして期待されています。一方で、miRNAを組織障害のバイオマーカーとして使用する際に確実に障害組織を断定するためには、各組織におけるmiRNAの発現プロファイルを把握し、各組織に特異的な発現を示すものを選択する必要があります。今回の我々の研究では、ラットの全身臓器組織を可能な限り細分化して採取し、マイクロアレイを用いてmiRNAの網羅的発現解析を行いました(GSE52754)。さらに、得られたデータの品質確認を行い、バイオインフォマティクス技術を活用して、miRNAの組織発現の特異性を解析しました(Figure 2Figure 3)。その結果、特定の組織でのみ特異的に発現するmiRNAが複数得られ、それらの多くはヒトにおいても同様に発現していることが文献上で確認できました(Figure 4)。

今回の研究は、独立行政法人医薬基盤研究所、国立医薬品食品衛生研究所および製薬企業を中心とした13社が参画した官民共同プロジェクトとして、2007年度から2012年度までの5年間をかけて進められたTGP2(Toxicogenomics Informatics Project;トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト)の一環として実施したものです。また、同プロジェクトの前身であるTGP(Toxicogenomics Project;トキシコゲノミクスプロジェクト)では、医薬品などを中心とした150種以上の化合物をラット個体、およびラット肝細胞・ヒト肝細胞へ曝露した際の遺伝子発現データおよび毒性データを取得し、トキシコゲノミクスデータベース(Open TG-GATEs;Toxicogenomics Project-Genomics Assisted Toxicity Evaluation system)を構築してデータを公開しています。こうした成果は、所属組織の枠を超えて、プロジェクトの参加メンバー全員が協同して研究を推進したことにより得られたものです。

―― 今回の研究の意義。

このデータは、無処置ラットの全身臓器組織におけるmiRNAの発現分布を同時に評価したものとして世界に類を見ない網羅性を誇るものであり、創薬研究や生命科学基礎研究などにも広く活用できるものと考えています。また、今回のデータを解析して得られた臓器特異的発現miRNAは、その発現を血漿、尿や唾液などの体液中で測定することで、組織障害のバイオマーカーとして活用できる可能性があります。

―― Scientific Data に投稿した理由。

生命科学研究分野の幅広い読者を有する Nature Publishing Group から新たに創刊されるScientific Data に投稿することで、創薬研究、生命科学基礎研究などの幅広い研究分野でのデータの活用を期待したいと考えたためです。

―― Scientific Data に掲載されてよかったこと。

科学研究の基礎となる実験データを詳細に記述することに主眼を置いたScientific DataのData Descriptorは、従来の科学論文の記述スタイルとは異なるため、原稿の準備にはさまざまな苦労がありましたが、実験方法やデータに関する詳細な記述やデータの信頼性の確認など、原稿をまとめるにあたり、科学的研究において極めて重要な点を再認識する機会になりました。また、投稿から査読、掲載までの一連の過程を通じて、我々にはなかった視点からの助言や、実際にデータを利用する視点からの図表に対する改善案など、有益な助言をいただき、より良い形で成果を公表することができたと感じています。

―― おわりに。

データ公開にあたり、プロジェクトに参加した多数の研究員・技術員の皆様に感謝致します。最後に、本成果が、一人でも多くのmiRNA研究の役に立つことを願っています。

Scientific Data 掲載論文

雄性ラット臓器miRNAアトラス OPEN

miRNA expression atlas in male rat

Scientific Data 1 Article number: 140005 doi: 10.1038/sdata.2014.5

Author Profile

南 圭一

トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト

プロジェクトリーダー:大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
プロジェクトサブリーダー:漆谷 徹郎(同志社女子大学)、山田 弘(医薬基盤研究所)
責任著者:上原 健城(塩野義製薬株式会社)
筆頭著者:南 圭一(小野薬品工業株式会社)

関連成果物:トキシコゲノミクスデータベース(Open TG-GATEs)

筆頭著者:南 圭一(小野薬品工業株式会社)

「著者インタビュー」記事一覧に戻る

プライバシーマーク制度