Nature

Cover Story: 奇妙な花:ゲノム解析がイヌバラの生殖の謎を解明

Nature 643, 8070 (2025年7月3日)

表紙はイヌバラ(Rosa canina)の花のクローズアップ写真である。イヌバラ類(バラ属カニーナ節〔Rosa sect. Caninae〕)の生殖には奇妙な点がある。真核生物の有性生殖の一般的な規則を無視し、染色体コピー数を奇数に保っているのだ。例えば、ヒトでは細胞分裂の際にそれぞれの親から1本ずつの染色体を受け継いで、子孫は23本の染色体の2コピーずつを持つ。これに対して、イヌバラ類は7本の染色体のそれぞれを5コピーずつ保持している。これは、細胞分裂過程も同様に不均等で、1コピーが雄性配偶子に、4コピーが雌性配偶子に由来するためである。しかし、こうした生殖様式の機構と進化的起源はいまだ解明されていない。今週号ではA Marquesたちが、イヌバラの35本の染色体の塩基配列を解読し、そのゲノムが実際には4つの祖先的「サブゲノム」によって構成されていることを明らかにしている。こうしたサブゲノムの1つは、両方の親から1コピーずつ受け継がれるが、残りの3コピーは雌親からのみ受け継がれる。研究チームはまた、雌親からのみ受け継がれた染色体のセントロメアは、両親から受け継がれた染色体のものと構造的特徴が異なることを発見した。これは、イヌバラ類の生殖系列における細胞分裂過程での不均等な伝達を支える構造的基盤が存在することを示唆している。

今週の目次とハイライト The Nature Top Ten バックナンバー

Nature注目のハイライト

その他のハイライト

Nature 創刊150周年記念特集

Nature ダイジェスト

Nature は次に何をすべきか

2020年4月号

Nature が150周年を迎えたのを機に、その価値観と、Nature を改善する方法について考えることにした私たちは、読者の意見をどうしても聞きたくて、アンケート調査を実施しました。

イベントレポート

日本の科学の未来
― 持続可能な開発目標の達成に向けたビジョン ―

1869年創刊のNature は今年150周年を迎える。これを記念するシンポジウムが東京大学安田講堂で開催され、日本の科学のトップランナーである大隅良典氏、柳沢正史氏や、Nature 編集長のMagdalena Skipperらが集った。日本の科学の未来を各氏はどう見ているか。自らの研究や体験をもとに語り、意見が交換された。

Nature 創刊150周年記念特集

著者インタビュー

柳沢 正史氏

「私」とNature  混沌状態をすっきりさせるような研究が好き

長田 重一氏

長田重一大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授は、アポトーシス(プログラム細胞死)の分子メカニズムの解明など、すばらしい業績を残してきた。いくつもの論文が引用ランキングに並ぶ。その始まりは、1980年に成功したインターフェロンα遺伝子のクローニングだった。

柳沢 正史氏

「私」とNature  “ねむけ”の謎を解明したい

柳沢 正史氏

筑波大学大学院時代に見つけた血管収縮物質が世界の研究者の注目を集め、米国テキサス大学にスカウトされて1991年に渡米。後を追って留学してきた後輩の櫻井武(現・筑波大学 国際統合睡眠医学科研究機構;IIIS)とともにオレキシンを発見する。この脳内の神経伝達物質が睡眠と覚醒に関係していることから、本格的に睡眠学の研究を開始。現在IIISを主宰して、「ねむけとは何か」の解明を目指している。

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ネイチャー・リサーチが主催するサイエンスカフェです。グローバルな視点から様々な分野のサイエンスについて、カジュアルな雰囲気の中、一緒に語り合います。

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