Nature

Cover Story: 不正を誘発するコード:AIにタスクを委ねることで不誠実な行動が助長される可能性がある

Nature 646, 8083 (2025年10月2日)

人工知能(AI)システムに作業を委ねることで、時間を節約でき、生産性が向上し、意思決定の支援が得られるが、これには倫理的リスクが伴う。今週号ではN KöbisとZ Rahwanたちが、AIシステムへのタスクの委任は利益をもたらす一方で、不誠実な行動を助長する場合もあることを明らかにしている。研究者たちは、人間はタスクをAIに委ねる際に不誠実な行為を依頼しがちであることを見いだした。この傾向は、特にインターフェースがAIの振る舞いに曖昧さを許容する場合に顕著であった。例えば、ゲームの参加者が「利益を最大化する」といった目標を設定できる条件では、誠実に振る舞う人の割合は95%から最大12%まで低下した。研究チームはさらに、AIは明白に非倫理的な指示に対して人間よりも従いやすいため、AIシステム自体が問題を引き起こすこともあると指摘している。別の実験では、大規模言語モデル(LLM)は不正行為を行うよう要請されると58〜98%の割合で従ったのに対し、人間は、不正に従うことでインセンティブが得られる場合でも、不正を行ったのはわずか25〜40%であった。研究チームは、極めて具体的なユーザープロンプトを用いてAIの不正行為を制限することは可能だが、このやり方はスケーラブルでもなければ実践的もないと指摘している。これは、設計や政策の基本原則をさらに検討する必要性を浮き彫りにしている。

今週の目次とハイライト The Nature Top Ten バックナンバー

Nature注目のハイライト

その他のハイライト

Nature 創刊150周年記念特集

Nature ダイジェスト

Nature は次に何をすべきか

2020年4月号

Nature が150周年を迎えたのを機に、その価値観と、Nature を改善する方法について考えることにした私たちは、読者の意見をどうしても聞きたくて、アンケート調査を実施しました。

イベントレポート

日本の科学の未来
― 持続可能な開発目標の達成に向けたビジョン ―

1869年創刊のNature は今年150周年を迎える。これを記念するシンポジウムが東京大学安田講堂で開催され、日本の科学のトップランナーである大隅良典氏、柳沢正史氏や、Nature 編集長のMagdalena Skipperらが集った。日本の科学の未来を各氏はどう見ているか。自らの研究や体験をもとに語り、意見が交換された。

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著者インタビュー

柳沢 正史氏

「私」とNature  混沌状態をすっきりさせるような研究が好き

長田 重一氏

長田重一大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授は、アポトーシス(プログラム細胞死)の分子メカニズムの解明など、すばらしい業績を残してきた。いくつもの論文が引用ランキングに並ぶ。その始まりは、1980年に成功したインターフェロンα遺伝子のクローニングだった。

柳沢 正史氏

「私」とNature  “ねむけ”の謎を解明したい

柳沢 正史氏

筑波大学大学院時代に見つけた血管収縮物質が世界の研究者の注目を集め、米国テキサス大学にスカウトされて1991年に渡米。後を追って留学してきた後輩の櫻井武(現・筑波大学 国際統合睡眠医学科研究機構;IIIS)とともにオレキシンを発見する。この脳内の神経伝達物質が睡眠と覚醒に関係していることから、本格的に睡眠学の研究を開始。現在IIISを主宰して、「ねむけとは何か」の解明を目指している。

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