Research Press Release

考古学:インドネシアで発見された最古の岩絵

Nature

2026年1月22日

インドネシアのスラウェシ(Sulawesi)島の洞窟で発見された手形ステンシル模様は、少なくとも6万7800年前のものと推定され、現存する最古の岩絵であるかもしれないことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この発見は、初期人類がスラウェシ島を経由する北ルートでサフル(Sahul;オーストラリアとニューギニアを繋いだ古代大陸)へ移住したという説を強く裏づけるものである。

岩絵は、古代人の創造性や移動経路に関する貴重な手がかりを提供する。インドネシアは、すでに世界最古級の洞窟芸術を有する地域として知られ、南西スラウェシや東ボルネオ(Borneo)では更新世(Pleistocene)の絵画が以前より確認されていた。しかし、1977年に岩絵の存在が初めて報告された南東スラウェシは、これまでほとんど調査されていなかった。

スラウェシ島の未調査地域をより深く理解するため、Maxime Aubertら(グリフィス大学〔オーストラリア〕)は、南東スラウェシ全域の洞窟を調査し、44の遺跡(うち14箇所は未発見)を記録し、これらの洞窟で見つかった岩絵のモチーフについて説明している。著者らは、岩絵の上層および下層に形成された微細な炭酸カルシウム堆積物を採取し、高解像度レーザーアブレーション法によるウラン系列年代測定を実施した。その結果、最古の年代は6万7,800年前にさかのぼることが判明し、これまでに知られていた最古の岩絵を約1,100年上回った。一部の洞窟では、約3万5,000年の間隔を置いて2つの異なる芸術創作期が確認され、後期更新世における長きにわたる芸術的伝統の存在を示唆している。モチーフには、7つの手のステンシルや、茶色の顔料で描かれた人物像(最低でも3,900年前のものと推定)が含まれており、この地域におけるオーストロネシア(Austronesian)文化表現の最古の証拠となる可能性がある。

これらの発見は、初期人類の岩絵の年代と歴史に関する理解を深めるとともに、オーストラリアとアジアが接するウォレシア(Wallacea)北部諸島を通じた初期の海上移動の可能性を裏づけるものである。著者らは、このルート沿いに同様の古代岩絵がまだ発見されるかもしれないことを示唆しており、オーストラリア北部における初期の岩絵群の起源と年代解明に重要な意味をもつと述べている。

Oktaviana, A.A., Joannes-Boyau, R., Hakim, B. et al. Rock art from at least 67,800 years ago in Sulawesi. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09968-y

Research Briefing: Hand stencils in Indonesian cave are world’s oldest known artworks
https://www.nature.com/articles/d41586-026-00018-9
 

doi:10.1038/s41586-025-09968-y

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