Research Press Release

気候変動:温暖化が熱帯地域の土壌からの二酸化炭素排出を増加させる

Nature Communications

2025年9月17日

野外実験の結果から、気候温暖化は熱帯林の土壌呼吸速度を増加させるかもしれないことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この研究は、将来の温暖化が従来予想されていた以上に熱帯土壌からの炭素損失を増加させ、地球規模の気候予測に影響を与える可能性を示唆している。

土壌呼吸(土壌から大気へ二酸化炭素が放出される過程)は、地球規模の炭素循環において重要な役割を果たす。熱帯林は、他の陸域地域よりも多くの二酸化炭素を大気と交換することが知られている。しかし、今後数年間で気温上昇が予想される中、特に熱帯地域においてこれが土壌呼吸にどのような影響を与えるかはまだ解明されていない。

Tana Woodら(国際熱帯林研究機関〔米国〕)は、プエルトリコの熱帯林土壌における炭素移動を追跡するため、現地温暖化実験を実施した。著者らは、斜面の下部、中部、および上部に位置する3つの12平方メートル区画(下層植生と土壌)を、周囲温度より4℃高く人工的に温暖化した。その後1年間にわたり、同様の位置にある対照区画と比較しながら30分間隔で土壌呼吸速度を追跡し、57,4500件の測定値を収集した。温暖化区画の土壌呼吸速度は、対照区画比で42~204%高く、陸域生態系で報告された最高レベルの土壌呼吸速度に匹敵した。温暖化区画から年間に追加放出される炭素量は、斜面位置により6.5~81.7 メガグラム/ヘクタール(Mg/ha)の範囲で変動し、上斜面区画が最も多くの炭素を放出した。著者らは、この増加は温暖化土壌における微生物群集の機能変化(炭素代謝能力の変化や微生物群集構成の変化など)に起因する可能性を示唆している。

本研究で報告された高い土壌呼吸率は、温暖化が進行した世界において熱帯林生態系から大量の炭素が失われる可能性を示している。気候変動の長期的な影響を評価するには、これらのプロセスを駆動するメカニズムの理解を深めることが極めて重要である。

Wood, T.E., Tucker, C., Alonso-Rodríguez, A.M. et al. Warming induces unexpectedly high soil respiration in a wet tropical forest. Nat Commun 16, 8222 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-62065-6
 

doi:10.1038/s41467-025-62065-6

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