Research Press Release

気候変動:主要な炭素排出源が熱波の強度と発生確率に影響を及ぼしている

Nature

2025年9月11日

2000年から2023年にかけて発生した熱波現象の4分の1は、人為的な気候変動がなければほぼ発生不可能だったことを示唆する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。同論文はまた、主要な炭素排出源がこれらの現象の強度増加の約50%に責任を負っていると指摘している。

極端な気象現象の頻度と強度は、人為的温暖化の影響を受けていると報告されている。特定の現象に対する気候変動の影響は調査されてきたが、一連の現象に及ぼした影響は不明確だった。さらに、排出源が気候変動に与える影響も十分に解明されていない。

Yann Quilcailleら(スイス連邦工科大学チューリッヒ校〔スイス〕)は、2000年から2023年までの213件の熱波に関する国際災害データベースのデータを用い、確立された事象ベースの枠組みを拡張し、人為的気候変動がこれらの事象に与えた影響を評価した。著者らは、気候変動がなければ、これらの熱波事象の4分の1はほぼ発生不可能だったと示唆している。中央値の推定値によれば、気候変動の影響で熱波発生確率は1850~1900年と比較し、2000~2009年には20倍、2010~2019年には200倍に増加した。また、気候変動の影響で熱波の強度が2000~2009年には1.4℃、2010~2019年には1.7℃、2020~2023年には2.2℃上昇したことも中央値データが示している。

最も大きなカーボンメジャーズ(特に排出量が多い企業)180社のデータを用いて、Quilcailleらはこれらの排出が熱波の頻度と強度増加に果たした役割を検証した。その結果、1850~1900年以降の熱波強度増加の50%は、カーボンメジャーズからの排出が寄与したと示唆している。著者らは、各カーボンメジャーからの排出量が、産業革命以前の気候ではほぼ発生不可能だった熱波16~53件の発生に寄与したかもしれないと示唆している。

著者らは、人為的気候変動が極端な事象の発生確率や頻度に与える影響を実証し、排出がこれらの発生に果たす役割を浮き彫りにしたと結論づけている。また、この枠組みは、他の災害にも応用可能であり、気候政策への示唆を与えると指摘している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。


Quilcaille, Y., Gudmundsson, L., Schumacher, D.L. et al. Systematic attribution of heatwaves to the emissions of carbon majors. Nature 645, 392–398 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09450-9

doi:10.1038/s41586-025-09450-9

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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