Research Press Release

環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらす

Communications Earth & Environment

2025年9月12日

アマゾン熱帯雨林の森林被覆率が高い地域における先住民の領域(IT:Indigenous territories)の保護は、周辺地域におけるマラリアや呼吸器疾患を含む複数の疾病の発生件数削減に寄与するかもしれない。オープンアクセスジャーナルCommunications Earth & Environment に掲載される分析結果は、この重要性を示しており、アマゾンの先住民の領域に対する法的保護の必要性と、それらが人間の健康に果たす複雑な役割を浮き彫りにしている。

アマゾン地域には、推定270万人の先住民が居住しており、その大半は先住民の領域(IT)に居住している。ITは、アマゾン全域約700万平方キロメートルのうち約240万平方キロメートルを占める。ITが森林破壊や生物多様性の損失減少と関連していることを示す証拠が増えているが、ITと人間の健康との関連性については現時点で解明されていない。

Julia Barretoら(サン・パウロ大学〔ブラジル〕)は、アマゾン流域9カ国の行政区域データを用い、2000年から2019年にかけての動物由来感染症および火災関連疾患の症例数がITの存在によってどのように影響を受けたかを調査した。各地域について、21種類の疾患症例数、森林火災発生率、森林被覆率・分断率、およびIT被覆率を分析に統合した。著者らは、ITの存在が疾病発生率に及ぼす影響において、地域の森林状態が重要な要因であることを発見した。森林被覆率45%以上でITが存在する地域では、火災関連疾患(肺炎など)と人獣共通感染症(マラリアなど)の両方の症例数が減少した。しかし、森林被覆率が低い地域や森林分断が著しい地域では、この効果は弱まるか、むしろ逆転することさえあった。

著者らは、本研究がITの存在がIT内部だけでなく周辺地域の人間の健康も守り得ることを示唆しているが、それは高い森林被覆率が維持される場合に限られると主張する。この潜在的な保護効果は、樹木による汚染吸収量の増加、人間と動物の接触減少、IT内の生物多様性増加に関連づけられている。また、ITが法的に保護されている場合、その効果がより顕著であったことも指摘し、アマゾン森林の維持とアマゾンのITの法的地位保護の双方の重要性を強調している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 3(すべての人に健康と福祉を)およびSDG 15(陸の豊かさも守ろう)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

Barreto, J.R., Palmeirim, A.F., Sangermano, F. et al. Indigenous Territories can safeguard human health depending on the landscape structure and legal status. Commun Earth Environ 6, 719 (2025). https://doi.org/10.1038/s43247-025-02620-7
 

doi:10.1038/s43247-025-02620-7

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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