Research Press Release

健康:健康な高齢化における世界的な格差の要因の評価

Nature Medicine

2025年7月15日

世界における身体的、社会的、および社会政治的要因の違いにより、国によって健康な高齢化(healthy ageing)に顕著な格差が生じていることが、40カ国16万人以上の参加者を対象とした分析で明らかになったことを報告する論文が、Nature Medicine に掲載される。この研究結果は、特に低所得国において、健康格差に対処するための的を絞った介入や政策行動の必要性を明確にしている。

健康な高齢化は、生涯を通じて経験される多くの要因―総称してエクスポソーム(exposome)と呼ばれる―によって形成される複雑な生物学的プロセスである。これまでの研究から、エクスポソームが健康的な高齢化に与える影響は、年齢だけよりもはるかに大きいことが明らかになっている。しかし、このようなエクスポソーム因子が、異なる集団や多様な地域にわたって加齢にどのような影響を及ぼすのかを理解することは、依然として困難であった。

Agustin Ibanezら(トリニティカレッジ・ダブリン〔アイルランド〕)は、4大陸40カ国(ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジア、およびアフリカを含む)を代表するコホートを用いて、エクスポソーム因子が多様な集団の健康な高齢化および老化の加速にどのような影響を及ぼすかを調べた。その結果、生物学的推定年齢と年齢との差によって定義される老化の加速を経験した人々は、老化の遅延を経験した人々に比べて、日常的な作業能力(機能的能力)が低下する可能性が8倍高く、認知機能が低下する可能性が4倍高いことがわかった。老化の加速は、エジプトや南アフリカのような低所得国で最も顕著であり、アジアやラテンアメリカの国々がそれに続いたが、ドイツ、フランス、およびイタリアのようなヨーロッパ諸国では、健康な高齢化の割合が高かった。

エクスポソームの影響を分析した結果、著者らは国レベルで健康な高齢化を予測する主な要因をいくつか特定した。これらには、大気の質といった物理的要因、社会経済格差およびジェンダー平等といった社会的要因、さらには政治的代表、政党の自由、参政権および民主的な選挙といった社会政治的要因が含まれる。これらの知見は、環境的、社会的、および政治的背景の違いが、さまざまな国の集団における高齢化の結果を総合的に形成していることを明らかにしている。

著者らは、認知症の増加傾向や老化の加速に伴い、修正可能なリスクの低減、保護因子の強化、不平等への対処が、集団レベルでの世界的な公衆衛生にとって極めて重要であると論じている。しかし、著者らは、これらの知見は因果関係よりもむしろ関連性を示すものであり、本研究においては、特にアフリカを中心とする特定地域の集団が十分に代表されていないという限界が存在すると強調している。

  • Article
  • Published: 14 July 2025

Hernandez, H., Santamaria-Garcia, H., Moguilner, S. et al. The exposome of healthy and accelerated aging across 40 countries. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-025-03808-2
 

doi:10.1038/s41591-025-03808-2

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