環境:大西洋全域で高濃度のナノプラスチック粒子が検出される
Nature
2025年7月10日
北大西洋全域、特に水深10メートルと海岸線付近で高濃度のナノプラスチック粒子が検出されたことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この調査結果は、この汚染の範囲が過小評価されていた可能性があり、ナノプラスチックが魚などの生物に蓄積する性質から、海洋生物に重大な脅威となるかもしれないことを示している。
膨大な量のプラスチック汚染は、最終的に海に流れ込む。そこでは、波によるストレスや太陽からの紫外線によって、プラスチックが直径1マイクロメートル(100万分の1メートル)以下のナノプラスチック粒子に分解される。しかし、ナノプラスチックがどの程度世界中に広がっているのかは、これまであまり研究されてこなかった。
Dušan Materićら(ヘルムホルツ環境研究センター〔ドイツ〕)は、大西洋の12の観測地点でさまざまな水深の水サンプルを採取し、ナノプラスチック粒子の濃度を分析した。その結果、水深10メートルでのナノプラスチック濃度は平均して水1立方メートルあたり約18.1ミリグラムであったのに対し、海底付近で採取されたサンプルでは1立方メートルあたり5.5ミリグラムであった。ヨーロッパの海岸線付近で採取されたサンプルでは、ナノプラスチック濃度は水1立方メートルあたり25ミリグラムであった。Materićらは、北大西洋の水深10メートルの水中に存在するナノプラスチック汚染の総量は2,700万トンと推定している。これは、これまでの推定値で海洋全体に存在するナノプラスチック汚染の総量と一致している。
著者らは、これらの数値から、ナノプラスチックは海洋中のプラスチック量の最大割合を占める可能性が高いと指摘している。ナノプラスチックの大きさによって、この汚染は生物学的障壁を越えて移動し、生物に蓄積される。したがって、ナノプラスチックは海洋生物にとって最も問題となるプラスチックのサイズ区分であるかもしれない、と著者らは結論づけている。
シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 12(つくる責任、つかう責任)およびSDG 14(海の豊かさを守ろう)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。
- Article
- Open access
- Published: 09 July 2025
ten Hietbrink, S., Materić, D., Holzinger, R. et al. Nanoplastic concentrations across the North Atlantic. Nature 643, 412–416 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09218-1
doi:10.1038/s41586-025-09218-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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