人工知能:大規模な言語モデルは、オンライン討論において人間よりも説得力を持つことができる
Nature Human Behaviour
2025年5月20日
GPT-4(Generative Pre-trained Transformer 4)のような大規模言語モデル(LLM:Large language models)は、オンライン討論において、討論相手に関するパーソナライズ(個人化)された情報に基づいて議論を適応させた場合、64%の確率で人間よりも説得力が高いことが明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Human Behaviour にオープンアクセスで掲載される。この研究結果は、GPT-4が相手に合わせた説得力のある主張を生成できる能力を持つことを示しており、説得におけるGPT-4の使用に伴うリスクを軽減するためのさらなる研究の必要性を示唆している。
人間とLLMの会話が一般的になるにつれ、LLMがより説得力を持つ(相手の信念や意見を変えることができる)ようになる可能性が研究で示唆されている。しかし、これらのモデルがパーソナライズされた情報に適応し、特定の討論相手に的を絞った議論ができるかどうかは明らかになっていない。
Francesco Salviら(スイス連邦工科大学ローザンヌ校〔スイス〕)は、アメリカで900人の人々を他の人間またはGPT-4とマッチングさせ、アメリカが化石燃料を禁止すべきかどうかなど、さまざまな社会政治問題について討論させた。いくつかのペアでは、相手(AI〔Artificial Intelligence;人工知能〕であれ人間であれ)には、参加者調査から抽出された性別、年齢、民族、教育レベル、雇用形態、および政治的支持など、討論相手に関する人口統計学的情報が与えられ、より的を射た議論が行われた。討論は、管理されたオンライン環境で行われ、参加者はこの研究のために特別にクラウドソーシング・プラットフォームを通じて募集された。参加者のパーソナライズされた情報を入手した場合、GPT-4は人間の対戦相手よりも64.4%説得力があった。しかし、パーソナライズされた情報にアクセスがない場合、GPT-4の説得力は人間のそれと区別がつかなかった。
著者らは、この研究の限界として、討論が構造化されたアプローチをとっていること(現実世界の討論はもっと自由形である可能性がある)、討論に時間制限があることを挙げている。この研究結果は、AIが人間の意見に影響を与える可能性を示すものであり、オンライン・プラットフォームの設計に影響を与えるかもしれないとしている。
- Article
- Open access
- Published: 19 May 2025
Salvi, F., Horta Ribeiro, M., Gallotti, R. et al. On the conversational persuasiveness of GPT-4. Nat Hum Behav (2025). https://doi.org/10.1038/s41562-025-02194-6
doi:10.1038/s41562-025-02194-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
人工知能:大規模な言語モデルは、オンライン討論において人間よりも説得力を持つことができるNature Human Behaviour
-
化石:琥珀の堆積物には、古代の津波の痕跡が残っているかもしれないScientific Reports
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature