化石:琥珀の堆積物には、古代の津波の痕跡が残っているかもしれない
Scientific Reports
2025年5月16日
古代の深海堆積物から発見された琥珀(amber)の堆積物は、現在までに確認されている最も古い津波の記録の一つを示すかもしれないことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。この研究では、日本北部の北海道島で発見された大規模な琥珀の堆積物について説明し、これらが1億1,600万年から1億1,400万年前ごろに、1つまたは複数の津波によって森林から海へ流された可能性が高いと提案している。
古代の津波の痕跡は、波が海岸線を再形成したり、堆積物が暴風雨などの他の高エネルギー現象によるものと区別が難しかったりするため、特定が困難である。しかし、陸上で形成され、海洋に運ばれた琥珀(化石化した樹脂)は、津波の記録となり得る可能性があり、堆積物の構造の変化は、移動中に受けた物理的過程を示唆している。
久保田 彩ら(産業技術総合研究所)は、北海道北部にある下中川採石場から採取された、約1億1,500万年前の白亜紀初期に深海海底に堆積した琥珀を多く含むシリカ堆積物を分析した。蛍光イメージングにより、琥珀試料に「炎構造」と呼ばれる特徴的な変形が観察された。これは、琥珀が堆積時にまだ軟らかく、完全に硬化する前に形状を変える際に形成される。著者らは、この変形が、1つまたは複数の津波の逆流により、大量の琥珀が陸地から急速に外洋へ流され、空気にさらされる時間が限られていたことを示唆していると指摘している。琥珀はその後、海底に沈み、泥層に覆われて保存されたと考えられる。
著者らは、陸地で形成され開放水面に運ばれた他の堆積物も、津波のような大規模な古代の破壊的イベントを調査する上で有用な手がかりとなるかもしれないと示唆している。
- Article
- Open access
- Published: 15 May 2025
Kubota, A., Takeda, Y., Yi, K. et al. Amber in the Cretaceous deep sea deposits reveals large-scale tsunamis. Sci Rep 15, 14298 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-96498-2
doi:10.1038/s41598-025-96498-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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