麻痺ラットの回復運動
Nature Neuroscience
2009年9月21日
Regaining running in paralyzed rats
薬物療法、電気刺激、定期的な運動の併用複合療法によって、麻痺ラットが歩けるようになり、トレッドミル上で走れるようにまでなった。Nature Neuroscience(電子版)に報告されるこの研究結果は、対麻痺ラットが歩行を再度修得するのに、切断した神経繊維の再生は必要がないことを示唆している。この発見は今後、脊髄損傷後のリハビリテーションに対して影響を与えることになるだろう。
脊髄には、脳からの信号なしに脊髄のみで歩行に似たやり方で脚を動かす律動活動を生成できる回路が備わっている。多数の研究者が、この神経回路を脊髄損傷患者への治療に利用できないかと試みてきた。しかし、確かに脚部運動は誘発される一方で、荷重負荷での歩行はいまだ達成されていない。
G Courtineらは、ラットを後肢による自発的な運動ができないような完全な脊髄損傷状態にし、これらの麻痺ラットに対して、適切な薬剤を投与し、脊髄の損傷部に特定の電気信号を加えながら、トレッドミル上での運動を行わせた。これによって、脊髄の律動運動回路と、麻痺した後肢における歩行動作が誘起できた。数週間にわたりトレッドミル上で毎日トレーニングしたところ、完全荷重負荷状態における歩行が可能になり、さらに後方、側方への歩行、走行までもが回復した。
ラットの損傷は依然として、脳と脊髄の間の連絡と律動歩行回路を妨害したままである。つまり、ラットは自身の意思による歩行は不可能であった。しかし人間の患者では、原理的に人工神経装置を使用して脊髄損傷をある程度橋渡しできるので、この研究のように脊髄律動回路を回復させることは脊髄損傷後のリハビリテーションへの助けとなる可能性がある。
doi: 10.1038/nn.2401
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