注目の論文

進化:出産の困難さはヒトに特有ではない

Nature Ecology & Evolution

2026年6月30日

Evolution: Childbirth challenges are not uniquely human

Nature Ecology & Evolution

産道と新生児の頭部との間の狭い適合は、ヒトに限ったことではなく、リスザル(squirrel monkeys)やショウガラゴ(bush babies)など、ほかの複数の霊長類でも、同程度またはより狭い適合が確認されている。Nature Ecology & Evolution にオープンアクセスで掲載されるこの研究結果は、出産に関連する制約が、霊長類の中で複数の形で進化してきたことを示唆している。

ヒトの出産は、二足歩行への適応と脳の大きさの増大との間にトレードオフがあるとする説もあることから、長い間、霊長類の中で特に困難なものと考えられてきた。しかし、いくつかの非ヒト霊長類における出産合併症、難産、および死産の報告は、非ヒト霊長類にとって出産が比較的容易であるという仮定に見直しを迫っている。重要な点として、これまでの研究ではヒトの骨盤や新生児のために開発された測定法が用いられてきたが、それらは非ヒト霊長類における出産に関連する制約を過小評価している。

Nicole Torres-Tamayoら(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン〔英国〕)は、骨盤入口および新生児の頭蓋の測定値から得られた種固有の3次元データを用いて、頭骨盤適合性、すなわち、新生児の頭部の大きさと母体の骨盤内で利用可能な空間との関係を分析した。これには、29種の霊長類に属する成体雌130個体の標本からの測定値が含まれていた。著者らは、非ヒト霊長類の骨盤入口が、従来のヒト特異的な測定値にもとづく推定値よりも平均で11%小さいことがわかった。ミツスジヨザル(three-striped night monkey)やフンボルトウーリーモンキー(common woolly monkey)などの一部の種では、18%を超える小ささが見られた。現生類人猿の中では、ヒトで頭骨盤適合が最も狭かった一方、ほかの類人猿(ゴリラやオランウータンなど)の新生児の頭部には、比較的余裕があった。頭骨盤の適合が最も狭いのは、ショウガラゴ、タマリン、およびリスザルといった小型の霊長類に見られた。これらの種では、新生児の頭部が母体の骨盤入口よりも大きかったことから、出産が、骨盤や軟組織のより高い柔軟性といった適応に依存している可能性がある。著者らは、これらの樹上生活を送る霊長類には、ヒトの出産の困難さの背景にある要因として提唱されている、相対的に大きな脳や直立二足歩行が見られないと指摘している。

この結果は、出産に関連する制約が、相対的に大きな子、比較的小さな骨盤入口、あるいはその両方のかたちで、霊長類全体で多様な形で進化してきたことを示唆している。著者らは、頭部と骨盤の狭い適合は、胎児の頭の位置、骨盤靭帯の弛緩、および新生児の頭部の柔軟性といった適応によって部分的に相殺される可能性があるとしている。

Torres-Tamayo, N., Schlager, S., Hirasaki, E. et al. Comparative primate analysis shows that humans are not unique in having a tight cephalopelvic fit at birth. Nat Ecol Evol (2026). https://doi.org/10.1038/s41559-026-03102-5


 

doi: 10.1038/s41559-026-03102-5

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

Nature Japanとつながろう:

advertisement
プライバシーマーク制度