がん:病気による体重減少は、乳酸が引き起こしているらしい
Nature Metabolism
2024年3月19日
Cancer: Disease-induced weight loss may be driven by lactate
がんの発症後に起こる乳酸レベルの上昇が悪液質(病気に関連して起こる体重減少)の発生につながる可能性があることを、マウスとヒトのデータから明らかにした論文が、Nature Metabolismに掲載される。
悪液質は、体脂肪と筋肉量の減少を特徴とする代謝異常症候群であり、がん患者の50~80%に見られる。悪液質は、生活の質(QOL)を低下させ、がん治療に対する忍容性を下げる他、がんによる死亡原因の20%を占める。これまでの研究によって、がんが宿主の代謝と特定の代謝産物のレベルを著しく変化させることが明らかになっているが、悪液質が生じる仕組みや理由、そしてその治療方法は分かっていなかった。
Xinli Hu、Rui-Ping Xiaoらは、がん悪液質の見られる患者とマウスの血中の代謝産物レベルを調べ、乳酸レベルの上昇と体重減少の程度が相関していることを発見した。さらに詳しく調べるために、著者らはマウスにヒトがん細胞を移植し、乳酸レベルの上昇が引き金となって白色脂肪組織(体脂肪)の大幅な変化が起こる可能性があることを見いだした。こういった変化には、白色脂肪組織上の受容体GPR81を介した脂肪の褐色化や分解などがあった。著者らは、乳酸がこの受容体に結合して細胞内シグナルを活性化し、脂肪組織の代謝活性を高め、それが脂肪の消失と筋肉量の減少を引き起こし、最終的に体重が減少することを示した。また著者らは、GPR81を阻害するとマウスの腫瘍の成長が制限されることも明らかにした。
著者らは、これらの知見から、乳酸が悪液質の発生に関わっていることが示唆されると述べ、また乳酸受容体であるGPR81を標的として除去すればがん悪液質の治療法になる可能性があるが、それにはさらに研究が必要だと述べている。
doi: 10.1038/s42255-024-01011-0
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