化学:地球上での生命の起源の化学反応を促進したのは隕石粒子や火山性粒子だったかもしれない
Scientific Reports
2023年5月26日
Chemistry: Meteoritic and volcanic particles may have promoted origin of life reactions
地球上で最初の生命が誕生するために必要だった分子の前駆体は、約44億年前には存在しており、地球に衝突した隕石あるいは地球上での火山噴火に由来する鉄を多く含む粒子によって促進された化学反応によって生成された可能性がある。このことを示した論文が、Scientific Reportsに掲載される。
これまでの研究から、有機分子(炭化水素類、アルデヒド類、アルコール類など)の前駆体は、小惑星や彗星によって地球に運ばれたか、初期地球の大気中や海洋中での化学反応によって生成されたことが示唆されている。こうした反応は、稲妻、火山活動、あるいは天体の衝突によるエネルギーによって促進された可能性がある。しかし、データが不足しているため、これらの前駆体の生成にいたる主要な機構は解明されていない。
今回、Oliver Trappらは、初期地球で大気中の二酸化炭素が有機分子の前駆体へ変換される過程が、隕石や火山島に堆積した灰粒子によって促進されたかどうかを調べた。これまでの研究で、初期地球に存在した可能性のある一連の条件が示唆されており、Trappらは、これらの条件をシミュレーションするために、内部の圧力を9~45バール、温度を150~300℃に設定した加圧・加熱システム(オートクレーブ)に二酸化炭素ガスを注入した。また、このシステムに水素ガスや水を注入して、湿潤気候条件や乾燥気候条件をシミュレーションした。Trappらは、隕石の堆積や火山島での灰粒子の堆積をシミュレーションするため、鉄隕石、石質隕石、火山灰の粉砕試料や、初期地球に存在していたかもしれない地球の地殻、隕石、小惑星のいずれかに含まれる鉱物のさまざまな組み合わせをこの加圧・加熱システムに投入した。
Trappらは、初期地球に存在していた可能性のある一連の大気条件と気候条件の下で、二酸化炭素の炭化水素、アルデヒド、アルコールへの変換が、隕石や火山灰に由来する粒子(鉄を多く含む粒子)によって促進されることを見いだした。また、炭化水素は300℃で生成するのに対し、アルデヒドとアルコールはより低い温度で生成するという観察結果が得られた。Trappらは、初期地球の大気が徐々に冷却されると、アルコールとアルデヒドの生成量が増えていった可能性があるという考えを示している。その後、これらの化合物がさらなる化学反応に関与した可能性があり、これが、炭水化物、脂質、糖、アミノ酸、DNA、RNAの生成につながったかもしれない。Trappらは、これらの実験で観察された各種反応の速度を算出し、これまでの研究による初期地球の条件に関するデータを用いて、上述の機構によって初期地球全体で年間最大60万トンの有機前駆体が合成されていたかもしれないと推論している。
Trappらは、この機構が、初期地球の大気と海洋における他の化学反応と相まって、地球上の生命の起源に寄与した可能性があるという考えを提案している。
doi: 10.1038/s41598-023-33741-8
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