動物行動学:狩りをするタカは群れを狙う
Nature Communications
2022年8月24日
Animal behaviour: Hunting hawks target the swarm
群れを形成するコウモリを狩るタカは、コウモリの個体を目標にするのではなく、群れの中の定点に向かって飛行することを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。この知見は、捕食者が何千もの潜在的被食者の中からどのように標的を選び出して追跡するのかを理解する上で役立つ。
大きな群れ(コウモリの群れ、鳥の群れ、魚の群れなど)の中にいることが捕食者から身を守ることだと一般に考えられている。身を守る手段の1つが、「混乱効果」だ。つまり、多数の潜在的な獲物が群れることで、捕食者を混乱させて、特定の個体に狙いを定めて捕獲する行為を困難にするのだ。もし捕食者が混乱すれば、獲物の捕獲成功率は潜在的獲物の数が増えるにつれて低下するはずである。しかし、混乱効果の経験的証拠の内容に一貫性がない。
今回、Caroline Brightonたちの研究チームは、アレチノスリ(Buteo swainsoni)とその他の猛禽類が、夜間に洞窟から出てくる約70万~90万匹のメキシコオヒキコウモリ(Tadarida brasiliensis)の群れを狙って狩りをしているところを観察した。Brightonたちは、数多くのカメラを用いて、猛禽類とコウモリの立体的飛行軌跡を再構築し、分析したところ、この猛禽類が混乱効果に対処している方法が分かった。つまり、猛禽類は、コウモリの個体を目標に定めるのではなく、群れの中の定点を目標に定めていると考えられるのだ。猛禽類から見て、相対方位角が変化しないコウモリが衝突針路上のコウモリであり、これに狙いを定めるとBrightonたちは考えている。
Brightonたちは、獲物の群れの中の定点に目標を定める戦略が、他の捕食者について未確認のより一般的な機構である可能性があるという考えを示しているが、獲物の群れが十分に密集している場合にのみ有効となる可能性も指摘している。
doi: 10.1038/s41467-022-32354-5
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