動物行動学:イヌは同居のイヌが死ぬと悲嘆行動を示す
Scientific Reports
2022年2月25日
Animal behaviour: Dogs may show grieving behaviour after death of canine companion
イヌを飼っているイタリア人426人を対象とした調査の結果、同じ家族に飼われていた複数のイヌのうちの1匹が死んだ後に別のイヌが示した行動や情動の変化が、悲しみを示すものかもしれないという結論を示した論文が、Scientific Reports に掲載される。
悲嘆行動は鳥類やゾウ類などさまざまな動物で報告されているが、イエイヌ(Canis familiaris)が悲嘆に暮れるかどうかは明らかになっていない。
今回、Federica Pirroneたちは、2匹以上のイヌを飼っていて、そのうちの1匹が死んでしまったことのある成人を対象とした調査を行った。飼い主のうちの66%は、今回の研究より1年以上前に飼い犬のうちの1匹を亡くしており、そのイヌの死後に生き残ったイヌの行動に変化があったかを尋ねられた。加えて、飼い主たちは、生前のイヌとその他の飼い犬の関係と、イヌの死後の自身の悲嘆レベルに関する質問にも回答した。
飼い主の86%は、飼い犬の死後、生き残ったイヌの行動にマイナスの変化が見られたと回答した。このマイナスの変化に関して、32%は2~6か月間続いたと回答し、25%は6か月以上続いたと回答した。これらの行動の変化について尋ねると、飼い主の67%は、生き残ったイヌが飼い主にもっと構ってもらおうと行動したと回答し、57%は遊びが減ったと回答し、46%は活動が減ったと回答した。また、35%は生き残ったイヌの睡眠時間が長くなり、怯えることが多くなったと回答し、32%は食物摂取量が減ったと回答し、30%はくんくん鳴いたり、吠えたりすることが増えたと回答した。飼い犬のうちの1匹が死ぬまでは、複数の飼い犬が1年以上一緒に暮らしていたという回答は全体の93%で、飼い犬間に友好的関係があったという回答は69%だった。
Pirroneたちは、2匹のイヌが一緒に暮らしていた期間の長さは生き残ったイヌの行動に影響を与えなかったが、死んだイヌと友好的な関係にあり、飼い主が悲嘆行動を示した場合には、生き残ったイヌにマイナスの行動変化や恐怖心が起こりやすくなることを明らかにした。この結果は、生き残ったイヌに観察された行動と情動のマイナスの変化の原因が、同居していたイヌを失ったことに対する悲嘆様反応と飼い主の悲嘆に対する反応の両方に起因するかもしれないことを示唆している。Pirroneたちは、イヌ間の悲嘆様反応は、これまで見過ごされてきた愛玩動物の福祉に関する主要な問題となる可能性があると結論付けている。
doi: 10.1038/s41598-022-05669-y
注目の論文
-
10月3日
神経科学:ショウジョウバエの脳の完全な地図Nature
-
9月26日
ウイルス学:牛のH5N1型インフルエンザは搾乳によって広がる可能性があるNature
-
9月26日
進化:哺乳類の顎関節の起源を調査するNature
-
9月24日
生態学:タコと魚の狩猟グループにおける共同リーダーシップNature Ecology & Evolution
-
9月19日
気候変動:将来の干ばつは予想以上に長期化する可能性Nature
-
9月17日
神経科学:妊娠に伴う脳の変化を調査するNature Neuroscience