遺伝学:ヨーロッパのワイン用ブドウの起源
Nature Communications
2021年12月22日
Genetics: Origin of European wine grapes
ヨーロッパ産のワイン用ブドウは、アジア西部で栽培化された生食用ブドウと地元の野生ブドウの交配に由来する可能性を示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、ヨーロッパのワイン用ブドウの歴史と遺伝的祖先を解明する上での手掛かりになる。
ブドウの栽培は、地中海東部で約4000年近く行われ、西ヨーロッパで2000年近く行われてきた。しかし、メルロ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールなどの品種を含むヨーロッパのワイン用ブドウの起源には論争がある。ヨーロッパのワイン用ブドウは、西アジアでの栽培化とは無関係に、ヨーロッパ独自の野生ブドウ種の栽培化から始まったことが以前の研究によって示唆されている。
今回、Michele Morgante、Gabriele Di Gasperoたちの研究チームは、ヨーロッパ産のワイン用ブドウの起源を調べるため、Vitis vinifera(ヴィニフェラ種ブドウ)のゲノム(204点)の解析を行った。Morganteたちは、このブドウが西アジア(南コーカサスである可能性が最も高い)での1回の栽培化に由来し、その後、ヨーロッパの野生ブドウ集団との複数回の交配を経たという見解を示している。また、Morganteたちは、現代のワイン造りに使われるブドウを決めた栽培化と育種選択を示す遺伝的特徴を特定し、野生ブドウ種と現代のワイン造りに使用されている品種には同程度の遺伝的多様性が見られることを明らかにした。さらに、今回の知見は、研究対象となった試料に含まれていたヨーロッパ諸国の栽培ブドウ種の中で遺伝的多様性が最も高いものがイタリアとフランスのブドウ種であることを示唆している。
doi: 10.1038/s41467-021-27487-y
注目の論文
-
5月29日
社会科学:研究テーマの変更は被引用数の減少につながるかもしれないNature
-
5月28日
古生物学:クジラの骨から作られた最古の道具の証拠Nature Communications
-
5月27日
生態学:世界的に過小評価されている外来種のコストNature Ecology & Evolution
-
5月22日
微生物学:効果的な新しい抗マラリア薬は寄生生物を標的とするNature
-
5月21日
医学:非接触型無線モニタリングによる心臓不整脈の検出Nature Communications
-
5月20日
人工知能:大規模な言語モデルは、オンライン討論において人間よりも説得力を持つことができるNature Human Behaviour