血圧形質に関連する遺伝的多型
Nature Genetics
2011年9月12日
Genetic variants associated with blood pressure traits
ヨーロッパ系の人々において、血圧、脈圧と平均動脈圧に関連する遺伝的多型が新たに同定された。今回の新知見は、血圧形質の遺伝的性質に関する新たな手がかりとなり、診断と治療に関する研究に寄与することが期待される。詳細を報告する論文が、Nature(電子版)とNature Genetics(電子版)に掲載される。
A Chakravarti たちは、20万人を対象とした全ゲノム関連解析と追試を行い、血圧に関連する16の座位を新たに同定した。その中のいくつかの座位は、非ヨーロッパ系の人々においても血圧に関連していることが判明した。また、Chakravarti たちは、遺伝的リスクスコアを作成したが、ここでは、血圧に関連する臓器障害と臨床的心血管疾患と関連し、腎疾患とは関連しないことが示唆された。この研究成果は、Nature(電子版)で発表される。
一方、P Elliottたちは、12万人以上を対象とした全ゲノム関連解析と追試を行い、脈圧に関連する5つの座位と平均動脈圧に関連する3つの座位を新たに同定した。そのうちの1つは、この両方の形質に関連していたが、この座位は、最近、東アジア人において収縮期血圧に関連していることも明らかになっていた。また、Elliottたちは、血圧に関連する2つの形質(脈圧と平均動脈圧)に関連する24の座位も同定した。この新知見は、これらの血圧に関連する形質には、それぞれ異なる経路が関係している可能性があることを示唆している。さらに、Elliottたちは、遺伝的リスクスコアを作成したが、ここからは、高血圧症、脳卒中と冠動脈性心疾患との関連が示唆されている。以上の結果は、Nature Genetics(電子版)で報告される。
高血圧症は、心血管イベントの高いリスクと関連する疾患の1つで、全世界の患者数は10億人を超えている。今回、上述の血圧形質に関連する座位が新たに同定されたことは、高血圧症の治療にとって重要な意味をもつ可能性のある複数の経路の存在を示唆している。
doi: 10.1038/ng.922
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