古生物学:孵化したばかりの翼竜も飛べたかもしれない
Scientific Reports
2021年7月23日
Palaeontology: Newly-hatched pterosaurs may have been able to fly
翼竜類は、孵化直後から飛ぶことができたが、その時点での飛行能力は、成体の翼竜とは異なるものだったと考えられることを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。
翼竜類は、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀(2億2800万~6600万年前)に生きていた空飛ぶ爬虫類の一種である。化石化した翼竜の卵と胚はほとんど見つかっておらず、孵化したばかりの個体と小さな成体を区別することも難しいため、孵化したばかりの翼竜が飛べたかどうかは分かっていない。
今回、Darren Naishたちは、2種の翼竜(Pterodaustro guinazuiとSinopterus dongi)の孵化直後の幼体の化石と胚の化石として確立されている合計4点の化石から以前に得られた翼の測定値を用いて、孵化直後の幼体の飛行能力をモデル化した。また、Naishたちは、この翼の測定値を同種の成体のものと比較するとともに、翼の一部を形成する上腕骨の強度を、孵化直後の幼体3頭と成体22頭とで比較した。
Naishたちは、孵化直後の幼体の上腕骨が多くの成体の上腕骨よりも強いことを発見した。これは、孵化直後の幼体の上腕骨が飛行に十分な強度を有していたことを示している。また、孵化直後の幼体の翼は、長くて幅が狭く、長距離飛行に適していたが、成体の翼と比べると、短くて幅が広く、孵化直後の幼体の翼面積は、その質量と体サイズの割に大きかった。孵化直後の幼体は、こうした翼の寸法のために、長距離の移動では成体よりも効率が悪かったかもしれないが、より機敏な空飛ぶ爬虫類として、方向や速度を突然変えることができた可能性がある。
Naishたちは、孵化したばかりの翼竜が、機敏な飛行スタイルによって捕食者から素早く逃れることができ、成体の翼竜よりも、敏捷性に優れた獲物を追いかけ、密集した植生の中を飛ぶことに適していたのではないかと推測している。Naishたちは、これは、孵化したばかりの翼竜が密集した生息地で生活し、成体の翼竜が開放された環境で生息していたことを示している可能性があると指摘している。
doi: 10.1038/s41598-021-92499-z
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