【幹細胞】ストレスによってマウスの毛が白くなる機構
Nature
2020年1月23日
Stem cells: How stress turns mice grey
ストレスにさらされた齧歯類動物の毛が白くなるのは、毛包のメラノサイト幹細胞(色素をつくるメラニン細胞の前駆体)の枯渇が誘発されることによるものだとする研究結果を報告する論文が、今週掲載される。この効果は、交感神経系の活性化によって生じるのであり、これまでに発表された学説に示されている免疫攻撃やストレス関連ホルモンによるものではないとされる。
ストレスは、白毛化の加速に関連するとされてきたが、その根本的機構は解明されていない。毛の色素の喪失にメラノサイト幹細胞の枯渇が介在していることは、以前の研究によって明らかになっている。今回、Ya-Chieh Hsuたちの研究チームは、マウスの毛がストレスによって白くなる現象にこの経路が関係していることを実証した。マウスを物理的ストレスや心理的ストレスにさらす実験が行われ、ストレスにさらしてから数日以内にメラノサイト幹細胞が減少し、急激な白毛化が加速した。Hsuたちは、ストレスが交感神経系を活性化し、ノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質の放出を誘導することを見いだした。ノルアドレナリンは、メラノサイト幹細胞を増殖させ、特殊化した細胞に変化させ、最終的には移動させるため、毛の色素沈着の原因が失われる。そして、メラノサイト幹細胞の増殖を阻害することで、メラノサイト幹細胞の喪失と白毛化を防げることも明らかになった。
ストレスに関連した白毛化において、危険やストレスに対する自動反応に関与する交感神経系がこうした役割を果たすことは、身体の他の部位に対するストレスの影響を解明するうえで重要な意味を持つかもしれないという考えをHsuたちは示している。
doi: 10.1038/s41586-020-1935-3
注目の論文
-
11月14日
医学:豚からヒトへの腎臓移植の長期経過観察Nature
-
11月14日
生態学:鳥インフルエンザがサウスジョージア島の繁殖期のゾウアザラシ個体数を半減させるCommunications Biology
-
11月13日
気候変動:ムンバイにおける異常降雨に関連した不均衡な死亡率Nature
-
11月11日
加齢:多言語使用は老化の加速を防ぐかもしれないNature Aging
-
11月11日
バイオテクノロジー:超音波がマウスの脳卒中後の脳内残留物を除去するのに役立つNature Biotechnology
-
11月6日
神経科学:時間の経過とともに発達する脳の変化を解明するNature
