注目の論文
スイショウウオのゲノムから明らかになった低温への適応
Nature Ecology & Evolution
2019年2月26日
Antarctic blackfin icefish genome reveals cool adaptions
南極のスイショウウオの高品質なゲノムについて報告する論文が、今週掲載される。このゲノムから、氷点下の南極海でスイショウウオの生存を可能にしている遺伝的適応が明らかになった。
南極のコオリウオ類は、生息地である極地海洋の極端な環境に対して、独特の生理的適応を発達させた。コオリウオ類は、「血が白い」(つまり、機能性の赤血球やヘモグロビン遺伝子を持たない)という類例のない脊椎動物であり、これを補うために巨大な心臓と高度な血管系を進化させた。
Hyun Park、Manfred Schartlたちは今回、南極のスイショウウオ(Chaenocephalus aceratus)のゲノム塩基配列を解読した。その結果、スイショウウオは、トゲウオ類など他の硬骨魚類と比較して、不凍性糖タンパク質および卵外被タンパク質の遺伝子が多いことが分かった。卵外被タンパク質は、氷の融点を低下させて胚を包み、南極の冷水中での生存に役立つ。スイショウウオは、酸素を含む化学反応性分子が引き起こす細胞損傷の影響を受けやすく、ゲノム中に、活性酸素種の恒常性に関係する遺伝子ファミリーの増大も認められた。
著者たちは、このコオリウオ類のゲノムが明らかになったことで、南極の極端な環境への適応に関する理解が進む可能性があると結論付けている。
doi: 10.1038/s41559-019-0812-7
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