注目の論文
ゲノミクスでコアラを絶滅から守る
Nature Genetics
2018年7月3日
Saving koalas through genomics
コアラのゲノム塩基配列が報告された。これは、有袋類のゲノム塩基配列として、これまでに記録されたものの中で最も完全なデータである。コアラの独特な生物学的性質を解明する上での手掛かりとなり、コアラが発症する疾患の治療に役立つとともに、コアラの保全活動にとっても有益な情報となる可能性がある。
今回、Rebecca Johnsonたちの研究グループは、長鎖塩基配列決定技術と光学的マッピングを用いてコアラの高品質ゲノム塩基配列を組み立てた。その結果、コアラゲノムに解毒酵素に関連する遺伝子ファミリーの拡大が見られることが判明し、これによりコアラは、フェノールを豊富に含むユーカリの葉を食べて生きることが可能になったのだと分かった。次に、Johnsonたちは、栄養価が高く水分を多く含む葉を選び出すのに役立つコアラの嗅覚受容体と味覚受容体の遺伝子カタログを作成した。また、免疫遺伝子クラスターについて包括的な注釈付けを行い、コアラの集団に一般に見られるクラミジア感染症を研究する道を開いた。
コアラは現在、生息地の減少、集団の分断化、疾患感受性の問題により、脅威にさらされている。今回の研究によって得られた知見は、コアラの過去の個体数動態を再構築し、現在の集団内多様性を評価する研究を可能にするだろう。今回発表されたコアラのゲノムは、今後のコアラの保全活動を形作る際に利用できる内容豊富な情報源と言える。
doi: 10.1038/s41588-018-0153-5
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