サモア人の肥満の一因となっている「倹約」遺伝子バリアント
Nature Genetics
2016年7月26日
A ‘thrifty’ variant contributes to obesity in Samoans
サモア人の肥満リスクを高めるCREBRF遺伝子のバリアントが見つかった。このバリアントは、エネルギー消費を減らしつつ、脂肪貯蔵を増やす、つまり倹約をもたらすと予測されており、過去の食料不足の時代にサモア人の役に立っていた可能性がある。 サモア人は、肥満の有病率が世界で最も高く、2010年にはサモア人男性の80%とサモア人女性の91%が過体重または肥満だった。その原因は、現代の食生活の変化と身体活動の減少である可能性が高い。また、サモアは、その3,000年の歴史を通じて比較的孤立していたという点が特徴的である。そのためにサモア人の遺伝的多様性の幅は、大部分の本土の集団と比べて小さい。これが、創始者効果という現象である。
今回、S McGarveyたちは、3,072人のサモア人を対象とした全ゲノム関連解析を行って、肥満と関係する形質との関連が認められる遺伝的バリアントを同定した。その結果、CREBRF遺伝子に存在するバリアントが、ボディマス指数(BMI)の増加、体脂肪率、空腹時血糖値、その他の肥満に関係する形質と関連していることを明らかにした。
このバリアントのBMIに対する効果量は、既知の高頻度リスクバリアントの中で最も大きかった。創始者効果の結果、このバリアントはサモア人に高頻度に見られ、このバリアントを1コピーまたは2コピー有するサモア人が全体の約45%を占めているのに対して、他の集団では極めて低頻度になっている。このCREBRF遺伝子のバリアントの機能について解明を進め、このバリアントの発見がサモア人以外の集団における肥満の理解を深める上で役立つかどうかを見極めるには、さらなる研究が必要だ。
doi: 10.1038/ng.3620
注目の論文
-
2月6日
遺伝学:古代のゲノムがヤムナ文化の起源の手がかりとなるNature
-
2月6日
古生物学:古代の水鳥の謎を解く頭蓋骨の発見Nature
-
2月6日
疫学:オミクロン以前と以後のSARS-CoV-2に対する免疫反応Nature
-
2月4日
生物学:人体の臓器におけるマイクロプラスチックの蓄積を調査するNature Medicine
-
2月4日
加齢:オメガ3は人間の生物学的加齢を遅らせるかもしれないNature Aging
-
1月30日
生物学:人工筋肉パッチが傷ついた心臓を修復するかもしれないNature