【生態】ウシ結核の感染源を突き止める
Scientific Reports
2015年8月6日
Ecology: Searching for sources of bovine tuberculosis transmission
ウシ結核を引き起こすウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)の保有宿主の候補を同定する上で、アナグマの糞便中のウシ型結核菌を観察することが役立つという考え方を示した論文が、今週掲載される。ただし、アナグマの糞便から見つかったウシ型結核菌がウシに感染する能力を有するかどうかは分かっていない。
アナグマ(Meles meles)は、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)の保有宿主として関与しているとされ、ウシ型結核菌に感染したアナグマの尿と糞便にさらされることがウシへの感染経路の1つとなっていると考える学説が提起されている。今回、Hayley Kingたちは、アナグマの糞便中のウシ型結核菌の存在量を測定することで感染のホットスポット候補を同定できるという考え方を示している。この研究で、1年をかけて12のアナグマの社会集団から集めたサンプルを解析したところ、全ての集団について、サンプル中にウシ型結核菌が存在していることを示す証拠が見つかった。アナグマからウシ型結核菌が排泄される量は夏が最も多いと考えられており、アナグマの糞便が季節変動する環境内保菌源であることが示唆されている。今回の研究ではウシ型結核菌の生存率が評価されておらず、Kingたちは、ウシ型結核菌が、環境内保菌源と考えられるアナグマの糞便の中で生存し、そこから伝播することを断定するためにさらなる研究が必要だと考えている。
ウシ結核の流行の拡大は畜牛産業にとって大きな経済的負担であり、特に英国では多額の経済的損失が生じている。環境汚染のパターンを理解することは、これまで以上に効果的にウシ結核と戦うための方法を設計する上で役立つ可能性がある。
doi: 10.1038/srep12318
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
人類学:長期的レジリエンスは苦難によって構築されるNature