Research Press Release
林冠による炭素の取り込みを昆虫が妨げる
Nature Plants
2015年3月3日
大気中二酸化炭素濃度の上昇が北温帯林で植物食昆虫によるバイオマス消失を進行させている、とする研究論文が、今週のオンライン版に掲載される。その知見は、そうした森林が炭素シンクとして機能する能力を高CO2世界では草食性昆虫が制限する可能性を示唆している。
高レベルの大気中二酸化炭素は、一部の地域では森林の生産力を増強するため、森林による大気からの炭素取り込み量を増加させることが予想されている。しかし、炭素シンクとして作用する森林の能力は、対流圏のオゾンや栄養の制約など、数多くの要因によって損なわれる。
John Coutureたちは、米国ウィスコンシン州北部のAspen FACEの拠点で、高濃度の二酸化炭素およびオゾンに暴露されたアメリカヤマナラシ(アスペン)およびアメリカシラカンバ(バーチ)の林分の林冠損傷レベルをモニタリングした。昆虫による林冠損傷のレベルは、高CO2の林分では著明に高かったが、高オゾンの林分では穏やかに低下していた。モデルを利用することにより、研究チームは、草食性昆虫が誘発する森林生産力低下が、高CO2濃度下では2倍以上となったのに対し、高オゾン濃度下では縮小したものと推定している。
doi:10.1038/nplants.2015.16
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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