Research Press Release
結腸がん幹細胞の調節にかかわる微小環境
Nature Cell Biology
2010年4月26日
がんを取り巻く微小環境は、がん幹細胞の細胞内シグナル伝達に影響を与えることがある。この知見は、がん幹細胞とその微小環境との相互作用が、結腸がん治療法の開発における標的となる可能性を示唆している。
腫瘍では、そのほとんどの細胞は分化して腫瘍形成能を失うと考えられているのに対し、がん幹細胞とよばれる一部の腫瘍細胞は腫瘍形成能を保持している。J P Medemaたちは、腫瘍形成を促進するこのような結腸がん幹細胞が高いWntシグナル伝達活性を維持するのを、幹細胞の周りを取り囲む細胞が助けていることを見いだした。Wntシグナル伝達は、幹細胞の自己複製の調節に重要である。分化したがん細胞は腫瘍形成能を失っているが、周囲の微小環境から分泌される肝細胞増殖因子(HGF)のような因子によって刺激されると腫瘍形成能を再獲得することがあるのもわかった。
H KorkayaとM WichaはNews and Viewsで、がん幹細胞の重要な性質は、自身の増殖が促進されるような微小環境を作り出して、それと相互作用する能力ではないかと論じており、こうした知見が結腸がん治療に及ぼすと考えられる影響に注目している。
doi:10.1038/ncb2048
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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