遺伝学:古代のリスの糞から、豊かな先史時代の生態系が明らかに
Nature Communications
2026年6月10日
カナダの永久凍土に保存されていたリスの糞から、70万年前の古代DNAが検出されたことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この発見には、マンモス、馬、アメリカチーター、およびステップバイソンのDNAも含まれており、多様で活気に満ちた古代生態系の復元を可能にし、特定種の進化史に新たな知見をもたらしている。
化石化した糞(コプロライト〔coprolites;糞石〕)は、排泄した個体や周囲の環境由来の古代DNAを含め、古代の動物由来のさまざまな生体分子を保存することができる。しかし、糞石は骨や堆積物に比べ分解しやすいため、古代DNAの分析にはこれまであまり用いられてこなかった。北極圏では、リスの巣穴が数千年にわたり、凍結・密閉された状態を維持できるため、糞石中の遺伝物質が保存される。
Tyler Murchieら(ハカイ研究所〔カナダ〕)は、カナダ・ユーコン(Yukon)準州中部から採取した13点のホッキョクジリス(Arctic ground squirrel、Urocitellus parryii)の糞石サンプルを分析した。本研究は、調査が行われた伝統的領土の所有者であるトロンデック・フェッチン先住民族(Tr’ondëk Hwëch’in First Nation)の許可を得て実施された。著者らは、マンモス、馬、アメリカチーター、およびステップバイソンなどの大型動物をはじめ、200種以上の植物群を含む、幅広い植物、微生物、昆虫、および動物のDNAを同定した。著者らは、糞石サンプルから18のミトコンドリアゲノムを再構築することに成功した。これには、12匹のジリス(ground squirrel、Urocitellus)、1匹のノウサギ(Lepus)、2頭のバイソン(Bison)、および3頭の馬(Equus)が含まれる。Urocitellusから回収されたゲノムは、約70万年前にさかのぼる可能性のある新たな系統を含め、北極圏のジリスの多様性が豊かであることを示唆している。
著者らは、一部のDNAについては後世に糞石の表面から付着した可能性があり、また、不完全な参照データベースが種の同定に影響を与える可能性があるとしている。さらに、著者らは、これらの手法を洗練・拡大するためにはさらなる研究が必要であることを認めている。しかし、これらの結果は、永久凍土中の糞石が先史時代の環境を高解像度でとらえるための有効な手段となり得ること、また、堆積物や骨格由来の古代DNAから得られる知見を補完し得ることを示唆している。
- Article
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- Published: 09 June 2026
Murchie, T.J., Cocker, S.L., Baleka, S. et al. Ground squirrel coprolites preserve complex archives of ancient environmental DNA over 700,000 years. Nat Commun 17, 4868 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-72977-6
doi:10.1038/s41467-026-72977-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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