Research Press Release
気候変動による深層循環の衰退
Nature Climate Change
2014年3月3日
南大洋の外洋で表層から深層まで達する深い鉛直対流は気候変動によって衰退し、おそらくは停止するという予測を示した論文が、今週のオンライン版に掲載される。これが事実であれば、地球規模の鉛直循環だけでなく海洋における熱と炭素の貯蔵にも寄与している底層水の形成に、大きな影響を与えていることになる。
今回、Casimir de Lavergneたちは観察結果とモデルシミュレーションを分析し、南大洋での深い対流の変化を調べた。南大洋では、ウェッデル海とロス海の海流系が主な外洋対流域となっている。その結果、1950年代以降は海洋表層の淡水化によって塩分成層が拡大し、これが深部での混合を阻害していることが判明した。Lavergneたちは、産業革命以前の条件下で大規模な対流が起きていたことを示す25の気候モデルでは、高排出シナリオでは1900~2100年に対流の強さが低下することが明らかになったと指摘している。そのうち7つのモデルでは、深層循環が2030年までに完全に停止した。
この新知見は、過去においては深い対流がもっと活発だったが、気候変動によって衰退し、今後も衰退し続けることを示唆している。
doi:10.1038/nclimate2132
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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