Research Press Release
オキシトシンで感覚応答を促進
Nature Neuroscience
2014年1月27日
新生マウスの脳において一定期間の感覚遮断後にみられる感覚情報応答の変化のうち、あるものはホルモンであるオキシトシンの投与で打ち消される。今週報告されたこの研究結果は、自閉症スペクトラム障害(ASD)のようなある種の神経発達障害の治療に大きな影響をもたらすかもしれない。
オキシトシンは脳から普通に放出されているホルモンであり、性的興奮、社会的結合、情動行動などを促進する。Xiang Yuたちは、新生マウスでは脳の視床下部から放出されるオキシトシンの量が、その出生直後に視覚経験や触覚経験を絶たれると減少することを発見した。何らかの感覚情報を奪われたマウス幼生はまた、脳内の他の感覚皮質にも影響を受けており、感覚皮質どうしの興奮性シナプス伝達が減少していた。感覚遮断マウスの脳にオキシトシンを余分に注入すると、マウスはこうした欠陥に打ち勝ち、他の感覚入力に対する脳の応答が促進された。
これまでの研究で、ASD患者では血液中オキシトシン濃度が変化していると報告されており、現在オキシトシンはある種のASD症状に対する治療の選択肢とみなされている。ただしこの研究は、オキシトシンをASDの有力な治療法とする際には、脳の発達に対するオキシトシンの意図せぬ影響を考慮するためにさらなる研究が必要だと示唆している。
doi:10.1038/nn.3634
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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