Research Press Release
脂質を選別する
Nature Chemical Biology
2013年12月23日
細胞内の脂質貯蔵に影響する分子の表現型スクリーニングで肥満症および糖尿病に対する防御効果を示す人工的な化合物が発見されたことを、今週のオンライン版の掲載論文が明らかにしている。この研究は、メタボリック症候群の潜在的な治療戦略を明らかにするとともに、医薬探索研究で表現型スクリーニングが復活しつつある理由の一例を示している。
脂質は極めて特殊な形で脂肪細胞中に貯蔵されるのが通常であり、適切な貯蔵の障害が2型糖尿病と関連付けられている。しかし、脂質の貯蔵を制御する仕組みは、完全に明らかにされているわけではない。
特定の生体分子標的が不明なままこの過程に影響を及ぼす化合物を発見するため、Enrique Saez、Benjamin Cravattたちは、脂肪細胞分化の表現型スクリーニングを実施した。利用した化合物群は、さまざまな生化学的過程に重要なセリン加水分解酵素という種類の酵素を阻害することが知られている物質である。研究チームは、カルボキシルエステラーゼ3というセリン加水分解酵素を標的とする2種類の化合物を、細胞培養物中に見いだした。その化合物を用いると、2種類のマウスモデルで糖尿病および肥満症の症状が遮断された。この研究成果は、脂質の分解でカルボキシルエステラーゼ3が担う役割を裏付ける初の化学的証拠を示しており、代謝障害の治療に有意義と考えられる。
doi:10.1038/nchembio.1429
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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