【ウイルス】高い伝播能力を失わない薬剤耐性H7N9インフルエンザウイルス
Nature Communications
2013年12月11日
新たに出現したA型インフルエンザウイルス(H7N9亜型)は、1個のアミノ酸の置換によって、このウイルスに唯一有効な薬剤に対する耐性を獲得するが、それによって動物の間を伝播する能力が影響を受けないことが明らかになった。また、薬剤耐性H7N9ウイルスは、季節性インフルエンザの場合と異なり、動物の体内での複製効率が、薬剤耐性のないものと同等であることも判明した。こうした研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
今回、Nicole Bouvierたちは、中国の患者から単離された変異型H7N9ウイルスについて、その薬剤耐性と感染性を解析した。その結果、変異型H7N9ウイルスが、抗ウイルス薬オセルタミビル(商品名:タミフル)に対して強い耐性を持つことが判明した。また、変異型H7N9ウイルスは、変異していないH7N9ウイルスと同じ効率で、培養されたヒト細胞に感染し、実験動物間で広がることも分かった。これは異例なことといえる。季節性インフルエンザウイルスが薬剤耐性を獲得すると、通常、宿主間での伝播能力と宿主内での増殖能力が低下するという代償を伴うのが通例だからだ。
H7N9インフルエンザは、2013年初頭に中国で出現し、これまでに130人以上が感染している。H7N9ウイルスに対するワクチンはできておらず、現状では、抗ウイルス薬がH7N9感染を管理する唯一の方法となっている。しかし、抗ウイルス薬による治療によってインフルエンザウイルスが薬剤耐性を獲得することが知られており、今回の研究で、H7N9インフルエンザ感染に対する抗ウイルス薬の使用には慎重を期す必要のあることがあらためて浮き彫りになった。
doi:10.1038/ncomms3854
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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