【生物科学】生物が細菌に感染する過程をリアルタイムで観察する
Nature Communications
2013年10月16日
細菌感染症の治療に用いられる抗生物質バンコマイシンを蛍光標識し、それを利用して、動物の細菌感染とヒトの死体における生体材料が関連した細菌感染を検出できることが明らかになった。今回の研究では、生体材料の移植が原因と考えられる細菌感染を検出するための感度と特異性の高い非侵襲的方法が得られた。
この研究で、Marleen van Oosten、Gooitzen van Dam、Jan Maarten van Dijlたちの研究チームは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に感染したマウスに蛍光標識したバンコマイシンを1回分注射する実験を行った。その投与量は、治療応答を誘導するためにヒトに用いる量の数分の1だった。その翌日、研究チームは、非侵襲的なリアルタイム光画像化によって、マウスにおける細菌感染部位を正確に示すことができた。また、この研究チームは、細菌感染した生体材料をヒトの死体に移植して、この検出方法を検証した。その結果、蛍光標識した抗生物質の1回の投与が、表面に移植された医療機器上の細菌を特定するために十分なことが判明した。この研究チームは、この検出方法で、細菌感染を原因とする炎症と非細菌性炎症を区別できることも報告している。
生体材料関連感染症は、臨床現場にとって重大な負担となっているため、今回発表された検出方法は重要なものとなる可能性がある。現在のところ、患者にこうした感染があるかどうかを検出するために使用できる感度と特異性の高い非侵襲的方法は存在しない。
doi:10.1038/ncomms3584
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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