Research Press Release
抗精神病薬処置に伴う脳構造の急速な変化
Nature Neuroscience
2010年6月7日
ある脳領域の容積が抗精神病薬処置ののち数時間以内に一時的に減少するとの研究が、Nature Neuroscience(電子版)に報告されている。この研究は、ある種の抗精神病薬によくある副作用の1つ、運動障害の程度にこの急速な減少が関連していることを明らかにしている。
統合失調症の処置に用いられる多くの抗精神病薬は、神経伝達物質ドーパミンの受容体を遮断する。しかしこれらの薬剤は、副作用として錐体外路徴候(EPS)という動きの低速化を伴う運動障害を引き起こす。抗精神病薬の投与から数分以内にEPSが起こりうることから、H Tostらは、脳に対応する構造変化があるかどうかを調べた。若い健康男性に抗精神病薬haloperidolを投与したところ、1回の薬物投与の数時間以内に、脳の腹側被殻の灰白質に一時的減少がみられることをTostらは見いだした。この脳領域は、運動に重要なかかわりがある。脳容量は、24時間以内に正常範囲に回復した。
研究チームは、健康な被験者でEPSの重篤度が脳容量の減少程度と正の相関関係にあることを発見した。運動障害の経時変化は、脳の構造と接続性にみられる急速な変化に極めてよく似ていた。この研究は、短時間の脳の構造変化が、ヒトにおける抗精神病薬治療のある種の副作用に関与している可能性を示唆している。
doi:10.1038/nn.2572
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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