Research Press Release

ALSにおける神経的緩衝作用の欠如

Nature Neuroscience

2013年4月1日

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者やマウスモデルでは、脳のニューロン周囲で絶縁体を形成する細胞が、症状が発症する前でも死んでおり、それを置換する細胞もニューロンをうまく包み込めないとする研究が、今週のオンライン版に報告されている。この研究は、神経系の細胞を支える細胞を応援して運動ニューロンを退化から守るような、ALSに対する強力な治療手段を示唆している。

ALSは成人の神経変性疾患で、筋の弱体、麻痺、そして最後には死に至る特徴を示す。この病気の最終段階は、筋肉運動をつかさどる大脳皮質や脊髄の運動ニューロンの細胞死として現れる。これらのニューロンはオリゴデンドロサイト(乏突起膠細胞)という専門細胞のつくる特別な絶縁層に包まれており、オリゴデンドロサイトは通常、成人でもオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)によって補充されている。

DwightBergles、JeffreyRothsteinほかの研究者は、検死解剖で得たALS患者の脊髄と運動皮質を調べ、また、ALS様の変異をもたせた生マウスの脳でOPCを画像化した。その結果、脊髄と脳灰白質におけるオリゴデンドロサイトの進行性退化は、運動ニューロンの死と疾患発症に先立って起こるとBerglesらは報告している。絶縁形成細胞のこのような減少には、OPCの適切な成熟の失敗が伴っている。Berglesらは同じく、ALSのマウスモデルのOPCでALS原因遺伝子を特異的に欠失させると、行動面の低下の発症を遅らせ、生存を延長できることを示している。

doi:10.1038/nn.3357

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度