Research Press Release
【医学研究】ホログラフィーを利用した視力の回復
Nature Communications
2013年2月27日
このほど、マウスを用いた研究で、ホログラフィーによってパターン化された光遺伝学的刺激を網膜に加えることによる視力回復法が実証された。高い精度と分解能が得られなかった従来の方法を進歩させるものといえる。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
失明した人の視機能を補うために電気的な人工網膜が用いられているが、現行の人工網膜では、目標の網膜細胞の周囲へ電流が拡散するため、最終的な性能が制約を受けており、高い視力を達成できない。人工視覚装具において神経活動を人工的に制御するためのパターン化光刺激システムには、こうした制約がないと予想されているが、このシステムが検証されたことはなかった。
今回、S Shohamたちは、マウスの無傷の網膜に人工的に視覚障害を引き起こし、ホログラフィーによってパターン化された刺激を加えた。このマウスの網膜は、光感受性タンパク質のチャネルロドプシンを導入してあるため、この刺激に選択的に敏感になっている。この実験の結果、網膜細胞が、ミリ秒の時間精度と単一細胞レベルの分解能で応答することが判明した。
今回の研究は、マウスから摘出された網膜を用いて行われたが、Shohamたちは、将来的には、この方法が、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症などの変性疾患の臨床研究に適用されることを期待している。
doi:10.1038/ncomms2500
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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